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ライブラリアンの書評    2020年9月

毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?



最近、手書きで文字を書いたのはいつのことでしょう。
以前は毎日何かを書いていた気がしますが、今はPCやスマホで文字入力すれば事足ります。一日手書きで何かを書くことをしなかった日も結構あります。なので久しぶりに手書きで文字を書くと、思い通りに書けなかったりします。いつのまにか、手書きの速度ではなく、キーボード入力、あるいはフリックの速度で生きていることに気付きます。
 
久しぶりにペンで文字を書くと、そこには自分特有の文字が連なっていきます。ペンは思考が生み出され、言葉に変換される瞬間に立ち合う道具であることに気付きます。筆跡は書いた人自身であり、身体性を含んでおり、書いた人に似ます。ペンと紙、キーボードと画面。その違いは、身体そのものの使い方の違いもあり、思考の流れに大きな変化をもたらしているように思います。
 
 
PCやスマホと向き合うことが当たり前、むしろ大半を占め、テクノロジーの恩恵を受けて過ごす日々をやめることは今となっては困難ですが、問題は、その便利さがもたらす副作用にある、と本書は指摘します。便利さを手に入れたと同時に、何かを失っている。そのことにもっと自覚的になった方が良いだろう、と。
 
本書はカリグラファーである著者が「手で書く」ことを広く、深く考察します。そのきめの細やかさは手書きの速度。キーボード入力で得られるものではありません。思考は時に、手書きの方が滑らかになる。速度の代わりに、手書きの唯一さ、その人自身に流れる物語、時間性と共に連なっていきます。

文字を書く行為は、ダンスや音楽を奏でることに似ています。ペンを手に取り、なんでもいいから書いてみる。そこに気づきがあるかもしれません。
 

  (ライブラリアン:結縄 久俊)



美しい痕跡

フランチェスカ・ビアゼットン
みすず書房


 

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