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日本元気塾セミナー
小さな一歩が世界を変える!

「医療」「教育」で世界を変えるニッポン人

更新日 : 2016年07月06日 (水)

第10章 ワクワクする未来は新しい一歩から始まる


 
思いを実現する方法は無数にある

米倉誠一郎: 最後に、ジャパンハートの未来について教えてください。

吉岡秀人: 僕達の目的は、医療の届かないところに医療を届けること。ならば、ビジネスでお金を生み出し、たくさんの人が助かる方法があるのなら、非営利というルールに縛られる必要はない。したがって、今後はNPOという枠も取り払われていくと思います。

例えば現在、日本のある大学と一緒に、途上国向けの医療機器を開発するプロジェクトを進めています。日本で使われている医療機器は、途上国ではとても高価で、オーバースペックです。グローバルにモノを売っていく時代に、まったく合致していません。特に途上国では、豊富な機能や高い品質よりも、とにかく壊れないこと、電源がない場所でも使えることなどが重視される場合もあります。

あるいは、アジアでもスマートフォンが爆発的に広がっていますが、スマホを使って遠隔医療ができないかと考えています。例えば、地方の農村に暮らす人が、薬を服用した履歴や健康状態などを入力すると、そのデータが医者に送られ、健康指導や受診を促すことができるようになる。これも、日本のIT系企業を巻き込めば、できるかもしれない。NPOという枠にとらわれず、様々な人達とコラボレーションしながら、途上国に合わせた新しい価値をどんどん発信していきたいですね。

米倉誠一郎: まさに、途上国でのイノベーションが再び先進国に戻ってくるという、リバースイノベーションですね。さらに言えば、プロダクトだけでなく、日本の様々な仕組みや人材育成の手法もリバースできる。それがアジアで成功すれば、世界中に届けられると思います。何かワクワクしてきますね。e-Educationの未来はどうでしょうか?

三輪開人: 米倉先生にアドバイスをいただいたことで、現地に子会社を作るというプロジェクトを進めています。原丈人さんという方が、世界最大規模のNGOであるBRACと一緒に立ち上げた「bracNetプロジェクト」は、株式会社とNGOのハイブリッドです。日本ではあまりなじみのないものですが、バングラデシュでは一般的なスキームです。このようなモデルを参考にしながら、日本企業が海外に進出したい時に一緒にビジネスを作ることができれば、教育だけでなく、農業や医療にも広く貢献できる仕組みが作り出せるかもしれません。

米倉誠一郎: いまや、思いを実現する方法は無数にあります。ワクワクするような未来を創り出せる可能性がありながら、一歩を踏み出さないのは本当にもったいない。ぜひやりましょう! できることなら、吉岡先生が言われていたMade in Japanとして発信したいですね。

吉岡秀人: 日本にはたくさんの資源が眠っています。石油が見つかって石炭が駆逐されたように、眠っている資源を掘り起こした時に、時代は大きく変わるというのが僕の考えです。日本に眠る資源は2つあります。1つは女性の力。もう1つは、第一線を退いた人達、あるいはその直前にいる人達。どちらも、日本が復活するための大きなカギになるものですが、現状はうまく活用できていません。今後は、特に経験も技術もあるシニア世代の人をいかに巻き込むかが Made in Japanのクオリティを左右すると思います。

それに関連して最近思うのは、人間はマイノリティになるほど力を発揮する、ということです。言葉が通じない環境、自分達の常識が通じない環境に行くほど、人間は力を発揮します。なぜなら、本気で頑張らなければ、その環境では生きていけないからです。その意味で言えば、日本の若者をマイノリティの環境にそっと置いてあげることが、僕の役割だとも思っています。

米倉誠一郎: 先生は「そっと置く」と言いましたが、僕は「獅子の子落とし」のようなイメージでいきたいですね(笑)。たしかに、日本の若者のポテンシャルは高い。そして、日本にはまだまだ未活用の資源もたくさんある。21世紀のMade in Japanで世界に貢献するためにも、皆さん、ぜひ一歩を踏み出しましょう!(了)


気づきポイント

●21世紀のMade in Japanは、日本で生まれた仕組みや組織、「人」に与えられるようになる。
●自分も含め誰ひとり不幸にしないことであれば、絶対に取り組んだほうがいい。
●「変えたい」という想いをのせて踏み出した一歩には、明日の世界を変える力がある。

該当講座


小さな一歩が世界を変える! 
~「医療」×「教育」で世界に挑戦する日本人イノベーター~
小さな一歩が世界を変える! ~「医療」×「教育」で世界に挑戦する日本人イノベーター~

吉岡秀人(小児外科医・ジャパンハート)×三輪開人(e-eduication)米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
社会的変革で途上国を変えようとする日本人イノベーターがテーマ。吉岡氏と三輪氏はミャンマーで出会い「医療」×「教育」で新しいイノベーションを引き起こそうとしています。“入院中の子供たちに映像による教育を提供する”ことにより子供たちに将来、未来、夢をもたらすことです。今までの各々の活動、そして新しい出会いがもたらした新たな取組みの可能性、社会的インパクトについて多面的に考えます。