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シェアラウンジトーク 第10回 開催レポート
“Inclusive Innovation”

みんなが、「見える」で、しあわせに。
みんなに、「見える」で、しあわせを。

更新日 : 2018年07月17日 (火)

開催日:2018年6月27日 @アークヒルズライブラリー シェアラウンジ
スピーカー:鈴木 太郎(株式会社ユニバーサルビュー 代表取締役社長 CEO)
文:城所



未来を予感する新しい動きがコンタクトレンズの世界で起こっています。その胚胎に可能性を感じ、世界で「見える」にイノベーションを!と、奮起するベンチャー企業の実情を交え、コンタクトレンズの今をご紹介します。

ひとは情報の83%を視覚から得ているといわれています。その視覚の世界で、グーグルやサムスンを含めた世界のイノベーティブ企業が英知を集結し、開発に取り組んでいる「目からウロコ」のコンタクトレンズ技術をみなさんはご存じでしょうか?

今回は6月27日(水)にアークヒルズライブラリーで会員向けに行われたトークイベント「シェアラウンジトーク」での内容を交えながら、わたしたちの「見える」暮らしが大きく変わる、最新のコンタクトレンズ事情についてご紹介します。

スピーカーは、アークヒルズライブラリーメンバーで、株式会社ユニバーサルビュー 代表取締役社長の鈴木太郎さん。

大学卒業後、一流商社勤務を経て、医療分野に人生をかけ、独立したベンチャー企業の経営者である鈴木さん。商社新入社員時代に掲げた目標はズバリ「社長になること」。自身のサラリーマン人生を10年と決め、10年間は必死に学び、10年後に独立。公言どおり現在は社長として活躍をされています。その鈴木さんが手掛けているのが、最先端コンタクトレンズ。主力商品は以下の3種で、いずれもきわめて先鋭的です。

最先端コンタクトレンズとは?

① オルソケラトロジーレンズ
夜装着し、寝ている間に角膜を矯正するハードコンタクトレンズです。日中はレンズを外しスポーツを楽しむなど、裸眼生活が送れます。レンズ内に特殊なカーブを内蔵し角膜上皮を0.05㎜の範囲で平らに矯正することでズレているピントを正常化するというもので、同社の臨床試験では、視力0.06から0.4の患者のうち、9割が1.0程度に視力改善したそうです。医療機器のため、専門医による処方が必須で、現在 国内約350の眼科で取り扱われています。

② ピンホールコンタクトレンズ
従来の技術では矯正が困難であった老眼や複数の屈折異常(近視・遠視・乱視)に対応できる世界初のコンタクトレンズです。仕組みが至ってシンプルなため、医療機関での煩雑な検査は不要で、多くの人への提供が可能なため、災害時の備蓄としてのニーズも捉えることができるそうです。また、高い生産効率が望めることにより安価での提供も可能とのこと。2020年の発売予定です。

③ スマートコンタクトレンズ
データを取得するための基本技術を搭載したプラットフォームとしてのコンタクトレンズです。例えば、レンズ内側に埋め込まれた小型センサーで涙の成分を分析し血糖値を把握。血糖値は内蔵されたバッテリーからBluetoothなどを経由してスマートフォンやパソコンとの共有が可能で、それにより自身の微細な健康状態を適宜知る事が出来ます。またネット接続し、地図や映像をコンタクトレンズ内に表示するなど、さまざまなコンテンツを搭載できるため、その使用範囲は広く、多くの可能性と汎用性を秘めると考えられています。

上記のコンタクトレンズはいずれもユニバーサルビュー社で開発されているものですが、それ以外にもスマートコンタクトレンズ界では、グーグル(血糖値をモニターし、インスリンを自動投与)や、サムスン(超小型カメラを搭載し写真撮影が可能)など、新技術を搭載した商品開発が進められています。

「コンタクトレンズは、もはや医療分野にとどまっていません。ウェアラブルデバイスとして、またプラットフォームとして、次の飛躍の時を迎えています。」と鈴木さん。また、このような革新的技術の成就には、ベンチャー企業のアイディアや技術を、大企業の資金や資産が支援するというスタイルも今の潮流のようです。

「私たちはすべての事を自社で完結はできません。今までも、おそらくこの先も、我々の得意分野を、他社の得意分野と融合しながら、それぞれの相互協力でもって新しい世界を創り出してゆくことになると思います。そのためにも、ビジョンを共有する仲間の存在は非常に重要です。ネットワークを活用し、信頼に重きを置き、一度きりの人生で何か世の中のためになることをしたい。個人では成し得ない事でも、仲間と、信頼とで築きあげる事は可能だと思っています。」

世界中どこにいても「見える」生活、「見える」快適を



社会全体を幸せにするインクルーシブ・イノベーション。それはどんな環境、境遇下にある人にも幅広く、生活に必要な質の高い製品やサービスを提供するためのイノベーションです。鈴木さんが取り組むコンタクトレンズも、このインクルーシブ・イノベーションと無縁ではありません。

「2020年発売予定のピンホールコンタクトレンズは仕組みがシンプルで、かつ多機能です。ゆえに新興国でこそ、その真価を発揮できると感じています。例えばアフリカの奥地でも、高額な機器による複雑な検査なしに個人にあった製品を、時間をかけることなく提供する事が出来ます。難しいのはそれぞれの国で基準の異なる医療許可を、それぞれに得ることです。必死で開発された技術が、真に生きるためにも、きちんとした理解・承諾を得られるようにすること。それも私の仕事です。」

商社時代はアフリカでの医療機器事業に携わっていたという鈴木さん。現地の医療事情がよく分かるだけに、そこで暮らす人々にも、「見える」生活、「見える」快適さを提供できないかという思いが頭をよぎります。

参加者は興味深々。質問も相次ぎ多角的な議論へ。



今回のシェアラウンジトークでは、参加したアークヒルズライブラリー会員の皆様から、最新コンタクトレンズへの関心や驚き、そして、鈴木さんの考える働く意義についての考察に頷く場面が多く見られました。

また、トーク終了後には、小さいお子様をお持ちの方から近視のご相談、ゲーム開発関係者からVR端末としてのコンタクトレンズの未来について、資産運用関係のお仕事をされている方からは資金調達の際の苦労や今後の海外展開についてなどの質問が相次ぎ、多様な視点での多角的な議論に発展する結果となりました。

世界中のどこにいても、どんな状況にあっても、みんなが「見える」で幸せになる時代は、私達のすぐそばまできています。

世界に「見える」でイノベーションを。

鈴木さんの挑戦は続きます。

鈴木 太郎(すずき たろう)

1992年 慶應義塾大学法学部卒業
1992年 三菱商事株式会社に入社、2001年に同社退職後、医療機器輸入販売会社を設立
2005年 投資コンサルタント パートナー
2006年 株式会社ユニバーサルビュー 代表取締役社長 就任

メガネ・コンタクト・手術でもない新たな視力矯正法で就寝中の装着で裸眼視力を回復させる医療用コンタクトレンズ「オルソケラトロジーレンズ」の開発事業に参画、開発に必要な資金調達および事業インキュベーションを実行。
2012年に新規医療機器として薬事承認を取得、現在国内320の眼科施設で事業展開中。