六本木ヒルズライブラリー
ライブラリアンの書評 2017年2月
毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?
耳が欠けている猫?
普段よく通るお寺があり、広い境内を抜けてゆくのですが、時おり参道で猫に出合います。よく見かける猫もいますし、初めての猫もいます。どうやらそのお寺にはたくさんの猫がいるのです。
ある時、そんな猫たちのほとんどが「耳が欠けている」ことに気付きました。誰かに傷つけられたのだろうか? いや、あまりに多くの猫がそうだから、きっとこの寺で生まれ育った血縁で、同族の猫なのだろう。
などと、あまり猫についての知識を持たないので勝手にそう思っていました。
が、どうやらそうではなかったのです。
「さくらねこ」をご存知ですか?
どうやら耳が欠けている猫は、それ以上子供を産まないように手術を施された猫であり、さくらの花びらの形にカットされた耳がその「しるし」なのだそうです。
・不妊手術で麻酔をしている際に耳をカットするので、痛くないそうです。
・オス猫は右の耳、メス猫は左の耳をカットするそう。なので写真の猫はメスですね。
猫は多ければ1年に4回も出産することができ、そして1回の出産で、3~5匹の子猫を産むのだとか。そしてメスならば、生まれてから半年で出産できるため、たとえば1匹のメス猫が子猫を産みはじめたら、1年後には50~70匹になる可能性があるらしいのです。
日本では1年間に7万9千頭の猫が殺処分されており(平成26年環境省のデータより)、年々その数は減少してはいるそうですが、それでもまだ多くの命が失われている現実があります。
「猫の殺処分をゼロに」という大きなビジョン
今回紹介する『ネコリパブリック 楽しい猫助け』には、「2022年2月22日までに日本における猫の殺処分をゼロにする」という目標が掲げられており、そのための様々な活動が紹介されています。
そのためにはまず、子供を産まないための避妊去勢手術をすること。そして保健所に持ち込まれる猫「保護猫」の社会的認知を高め、広く受け入れるような社会にすること。罪なく失われていく命をゼロにする! という大きなビジョンに向けて奔走する著者の、熱い思いがビシビシと伝わってきます。
加えて新しいビジネスモデル「シェアエコノミー」の力が存分に発揮されています。「SNS時代だからこその共感拡大の速度」と本書にあるように、ネットを駆使し、クラウドファンディングを通して、周囲を「巻き込む力」にあふれているのです。
(大阪でのネコビル開業のためにクラウドファンディングで資金集めをする様子は、ワクワクしながら応援するように読んでしまいました。このプロジェクトは、結果1800万円!もの資金を集めたそうです)
社会問題としての猫事情を知るとともに、周囲がワクワクするような「共感」の力が実現されている本書。できることなら何か力になれればと、まずはこの文章を書くことで、すっかり共感の力に巻き込まれてしまった、不思議な魅力とパワーにあふれた一冊です。
(ライブラリアン:結縄 久俊)
ネコリパブリック式楽しい猫助け
河瀬麻花河出書房新社
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