六本木ヒルズライブラリー

【ライブラリーイベント】開催レポート
JSIE×アカデミーヒルズライブラリー First Movers Forum 第2回
新たな価値やコミュニティを生み出す

ライブラリーイベント

日時:2017年5月25日(木)19:15~20:45@スカイスタジオ

幅広い分野・地域で活躍する「行動する人」を応援し、地域やグローバル社会の抱える問題解決への実践的取り組みのヒントを広く共有することでグローバルな視点の醸成する目的でJSIEとアカデミーヒルズライブラリーがコラボレーションで開催しているFirst Movers Forum。
第2回は、『新たな価値やコミュニティを生み出す』というテーマで、若い社会起業家にお越しいただき、お話を伺いました。
 
今回のファシリテーターは、日米関係や新社会とNPOの役割について詳しい早稲田大学教授の中林美恵子さん。米国大学院留学後、アメリカ連邦議会・上院予算委員会補佐官を10年間務め、帰国後は衆議院議員として活躍するという異色の経歴の持ち主です。中林さんのファシリテートでそれぞれの起業に至るまでのバックグラウンドや思いについてお話いただきました。

株式会社WillLab 小安さんのストーリー:女性就労支援



女性の就労支援を行う、株式会社WillLabを立ち上げたばかりの小安 美和さんは、リクルート出身で、同社内で女性の就労マッチングのプロジェクトを任されていたそうです。しかし、営利企業の中で支援することの限界を感じ、自ら起業し、現在は自治体と連携しながら活動をしているのだとか。今でも地方では、女性が就労するためのベースがほとんど整っていないため、その地方に足を運び、現地の状況を把握したうえでそれぞれのケースに合った対策を行っているそうです。大企業で経営企画という部門で、利益のことを考えて仕事をされてきましたが、今は短期的には利益がでないかもしれないけれど、中長期的には、必ず日本に必要な事業だと信じて継続していると言います。
 
小安さんの場合は、リクルート時代の3年間ずっと秘書の方がいらっしゃり、さらにそれぞれの部署に専門的なスタッフがいて、何から何まで段取りをしてくれたのだそうです。自分では何もやらずにすんでしまう生活の中、これでは一人で何も出来なくたってしまうのではないかという恐怖があったと言います。そして、もう一回電車に乗るところから一人でやろうと思い、起業するときも仲間ではなく、一人で立ち上げたのだそうです。
 
とても安定した環境から、新たな環境によく飛び込めましたね?という中林さんに、飛び込んで、とても楽しくて仕方がないと小安さんは答えます。大企業で自分の立場が上がっていくにつれ、現場の手触り感が無くなり、仕事をしたいけれど結果的にできないでいる人達がどんなことに悩んでいて、何が必要なのかということが解らなくなり、十分なサービスを提供できていないのではないかと感じていたので、現場で調査をするという段階からもう一度取り組みたいと思ったそうです。
 
特に、被災地というとても厳しく、困難なところで、自分がどこまでできるのか?そこで出来たら、色んなことが解決出来るの出来るのではないかという思いがあったと言います。

Orinoco Peatix株式会社 藤田さんのストーリー:個人イベントの開催サポート


Orinoco Peatix株式会社取締役/営業統括の藤田 祐司さんは、大学卒業後、人材紹介インテリジェンスの営業を経て、同社の先輩に声をかけられアマゾンジャパンに転職。今から想像つかないほどの低迷期のアマゾンに6年在籍し、新規事業開発にも携わった後、同社で出会った仲間とORINOCO Peatixの前身であるORINOCOという会社を立ち上げました。Peatixは、興業系ではなく、草の根的なイベントをサポートするサービスで、現在5000件くらいのイベントを扱っています。
 
もともと、人の役に立ちたいという視点で起業したわけではなく、学生の頃に起業ブームだった影響もあり、漠然と起業したいと思い続けていたのだそうです。「あの」アマゾンをやめて後悔をしたことはないか?と今までご両親を含めて沢山の人にきかれるそうです。確かにアマゾンをやめたときから株価が14-15倍くらいになっていて、ストックオプション制度があったので、あれがあったら・・と思うとこともたまに無くはないけれど、基本的には全く後悔をしていないときっぱり。おかねが欲しくて始めたことであれば、多分今の時点で大失敗。しかし、今のチャレンジというのはこの瞬間でないとできないことで、それを今出来ているということがとてもハッピーだと言います。そして、楽天家と言うこともあるのかもしれないとも付け加えてくださいました。

起業するまえに失敗するということは考えなかった?という中林さんに対し、失敗は想定していなかったと藤田さんは仰います。楽観的なメンバーが二人いたので、失敗すると思って立ち上げてはいないけれど、苦労するだろうなという覚悟を持っていたそうです。とは言え、ここまで失敗するとは思っていなかったそう。
「個人のエンパワーメント」が起業のテーマだったので、個人の人たちの活動を最大化するという軸は持ち続け、サービスをいくつか立ち上げましたが、駄目で、また立ち上げて駄目で、また立ち上げて駄目で、そして4年かかってやっとpeatixにたどりついたのだそうです。
 
また、失敗したときでも継続するモチベーションは何だったか?の問いには、最初のサービスは、資金的には瀕死の状態だったため、他に選択支がなく半年くらいで終了したそうですが、最初の頃は、折角アマゾンをやめたのに、この失敗で諦めてしまったら勿体ないと思ったのと同時に、やめてしまったらこのメンバーではもう二度と一緒に事業をできないと思ったし、皆、借金までして始めたのだから、やれるところまでとにかくとことんやってみようと思ったと言います。

仲間がいたので、支えあうことが出来たのも大きかったそうです。ここまで3回の事業に失敗したけれど、その都度、少しずつ前に進んでいる感じはあり、一度目の失敗より二度目のほうが少し進歩し、二度目よりは三度目より進歩しているという具合だったので、もう一回くらいやればなんとかなると信じてやってきたのだそうです。

起業を志すグローバル人材を育てる環境とは

現在、早稲田大学で教鞭をとる中林さんは、大学で人材を育てることに係わっているわけですが、大学は、藤田さんや小安さんのようになる学生を育てようと色々手を尽くしているけれど、思うような成果が上がらず、苦労しているのだそう。リスクをとりながら海外にも出て行けるような人材を育てるのが大学を上げての大課題だそうで、その種がどこにあるのかと常に思っていらっしゃるそうです。
 
藤田さんの育ったご家庭は、とても堅い家庭で、どちらかと言えば堅い思想の教育を受けて育って来られたそうですが、それよりも周りの影響のほうが強かったのではないかと藤田さんは振り返ります。お父様はサラリーマンでかなり結果を出されている方だったそうで、同じ道に進むとお父様にコントロールされるのではという危機感があり、絶対にそれだけは避けようと決めていたと言います。日本のためと言うような大きなミッションを背負って始めたわけではなく、時代でもあり、仲間でもあり、親に対する思いでもあり、そういうことの相乗効果で起業という道を選んだのかもしれないと仰います。
 
いっぽう小安さんは、前職のリクルートで起業マインドが醸成されたのではないかと分析します。リクルートでは、入社した時から全員が一経営者だと教えられ、営業マンの1カ月の目標は経営目標と呼ぶのだそう。一人一人の目標がすべての経営につながっていると言われ、常に経営ということを意識させられていたそうです。さらに、37歳の時に中国での新規プロジェクトを任された事は、企業のなかで起業体験をさせてもらったようなものなので、いざ会社を自分で立ち上げようという事になってもそれほどハードルが高くなかった言います。
 
また、家庭環境で言えば、お父様は海外を飛び回るサラリーマンで、お母様は専業主婦。小安さんは、ものすごい箱入り娘だったそうです。昔からぼんやりと、父親と同じように仕事で飛びまわるのだろうなと思っていたようですが、その箱入り娘の反動が大学に入ってから出てしまったのかも知れないと言います。
 
そして中林さんは、埼玉の農業のうちに生まれて、自然とともに元気いっぱいに育ったそうです。両親からあれしろこれしろとは全く言われず、昔から好きなことをやっていたのだそう。しかし、農家は嫁が本当に大変だと思っていて、女性がであることは理不尽だと感じていたそうで、そのあたりが中林さんの異色の経歴の礎となっているのかもしれませんね。
 
このように家庭や育ってきた環境は人それぞれですが、計画した通りになった人は誰もいません。最初から大きな社会的課題を掲げていたわけでもありません。最初から起業するつもりだった人も、そんなつもりはなかった人も色々ですが、皆声をそろえて楽しいとい言います。自分がやりたいと思ったことが誰かの役に立つことだったというシンプルな構造が事業を継続するために必要なことなのかもしれません。
 
【スピーカー】中林 美恵子氏(早稲田大学教授)
       小安 美和氏(株式会社Will Lab代表取締役)
       藤田 祐司(Orinoco Peatix株式会社 取締役/営業統括)
       佐々木 文子(JSIE/Proactive NY)

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