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【ライブラリーイベント】開催レポート
【朝日新聞GLOBE × アカデミーヒルズライブラリー】Breakthrough「突破する力」第11回
人工知能(ロボット)は、心をもてるか — AIブーム、その先へ

ライブラリーイベント

日時:2017年3月7日(火)19:15~20:45@オーディトリアム

朝日新聞日曜版(第1日曜日発行)のGLOBEでおなじみの「突破する力」にご登場された方や、取り上げたトピックスに関連する方をゲストにお招きするコラボレーションイベント。
第11回は、GLOBEの189号(2017年1月8日発行)の特集「人工知能を愛せますか?」の執筆を担当した朝日新聞オピニオン編集部記者の田中郁也氏のモデレーターで、「人工知能と脳科学」の研究リーダー銅谷教授とディープラーニング技術で実業界を牽引する岡野原氏に最先端AI事情のお話を伺いました。

AIブーム



ここ数年のAIブームは第3次ブームと言われていて、「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉が人類史上初めて使われた1956年が第1次ブーム、1980年代の特定分野に特化した専門知識データベースを元にした「エキスパートシステム」が第2次ブーム、そして、現在の第3次ブームは、人の脳のメカニズムに習った人工知能、アーティフィシャルニューラルネットワークという考え方が主流となっています。

人工知能と脳科学


そんな「人工知能と脳科学」の研究分野の第一線で活動されている銅谷教授は、脳の仕組みを数学的なモデルで解き明かしていく脳型人工知能の開発プロジェクトリーダーで、未来の人工知能の舵取りをされている方です。最初に銅谷教授から、脳と人工知能をとりまく背景や現在進行中のプロジェクトなどについてご紹介いただきました。

哺乳類の脳は小脳、大脳基底核、大脳皮質が大きなボリュームを占めていて、小脳は、手本を見習う「教師あり学習」、大脳基底核は、報酬信号をもとにした「強化学習」、大脳皮質は、多層の神経回路を使った「状態表現の学習」にそれぞれ特化していると見られていているそうです。聞きなれない言葉ばかりですが、2015年に人間のプロ囲碁棋士をハンディキャップなしで破り話題となった、初のコンピュータ囲碁プログラムGoogleの「AlphaGO(アルファ碁)」は記憶に新しいと追いますが、これは、それぞれに特化した脳の機能をうまくつなぎ合わせ、非常に高度な知能が実現できると工学的に実現して示した例です。

それらの機能をどんな順番でどうやって組み合わせるとどういう結果につながるのかなど現在試行錯誤しながら研究が進行していて、脳科学から人工知能が学ぶ課題は、まだまだ沢山あると言います。脳のように必要な情報をAI自身が学びながら集めるという能動性をどうやって実現するのか、などが課題だそうです。

脳と人工知能は、現在ではまだまだ沢山の違いがありますが、例えば、脳の中の数百個の神経細胞の活動を同時に計測できる二光子顕微鏡など研究機器の進化などもあり、そのギャップは徐々に埋まり、より人間の脳に近い学習理解ができるようになって来ていると言います。

これらの研究の最前線にいらっしゃる銅谷教授曰く、機械が自分自身の目標を発見するとうことができるようになってくる可能性は十分あり、そうすると個性のようなものが芽生えてきて、いずれは心を持つことも不可能ではないのではないかとおっしゃいます。

AI技術の最前線



続いて、最先端のAIベンチャーで、世界のトップ企業のひとつでもあるプリファード・ネットワークス社(PFN)の共同創業者で副社長の岡野原さんより、AIの最新情報についてご紹介いただきました。

かつてからあった脳の構造を模した手法のディープラーニングは、近年の技術向上により、現在のAI開発の主流となっています。このディープラーニングを使って、トヨタ自動車とPFNが共同で実施している自動ブレーキ「ぶつからない車」のデモンストレーション映像では、交差点に乱入してくる複数の車が学習しながらぶつかることなく、整然と通行している様子を見せていただきました。これまで、天候にも左右される外の環境下で、人工知能が正確に人や車を認識することが難しかったのですが、ディープラーニング技術が飛躍的に性能向上したおかげで、ほとんどミスなく人や車を認識することが出来るようになったそうです。人間の意識は1か所にしかフォーカス出来ないので同時に沢山のことを処理することは難しいですが、人工知能は、人や車などの交通参加者が200~300程度をもれなく認識できるようになっていて、このことでは、すでに人間の能力を上回っていると言えます。


また、ライフサイエンスの分野でこの技術を応用する共同研究も国立がんセンターと行っていてるそうです。乳がん検査の今の標準はマンモグラフィーですが、この検査の精度は80%程度と言われています。これに血液を使った生検のリキッドバイオプシーとディープラーニング技術を組み合わせることによって、その精度を99%まで上げることが可能になるのだそうです。

さらに、クリエーションの分野でも使えるようになってきていて、画像や音声の自動生成が出来るようになり、会場ではAIが一から生成したイラストの数々をご紹介いただきました。そして、PFNが公開している「PaintsChainer」(ペインツチェイナー)は、線画をアップロードすると自動着色してくれる人工知能で、とても話題となっているそうです。わかりやすいことも手伝って、とても使われていて、多いときには1日に2、30万枚が世界中から集まってきているのだそうです。PaintsChainerで検索すると、世界中の人が色々な色塗りに挑戦しているのが見られるので、一度チェックしてみてくださいね。


課題としては、人工知能に学習させることに大変な時間とリソースがかかっていて、これをいかに早くするかが競争領域となっているのだそうです。PFNではChainerを出していますが、世界中の企業が独自のフレームワークをリリースしているのだそう。そして、すでに自動運転車から莫大なデータが集まってきていているうえ、現在の画像認識から動画へと進み、さらにライフサイエンスのゲノムデータを使うようになったり、ロボットが本格的に1家庭に1ロボットの時代が来ると、膨大な計算リソースが必要になる見込みとなっていて、エクサフロップス 以上の計算リソースをどのように達成するのかを各国、各企業間で競い合っている状況だということです。

2045年、シンギュラリティ

お二人からお話の後、会場からの2045年に訪れるというシンギュラリティについての質問に関連して、人と人工知能の関係についてお二人からご意見をうかがいました。

銅谷教授曰く「人工知能はコンピュータに直結出来ることがアドバンテージ。人間はキーボードやらウェブブラウザやら様々道具を介してコンピュータにアクセスする分、とても非効率。さらにAIはコピーして同じものをつくることができるが、逆にコピー出来てしまうことが弱みなるかもしれない。心というものの定義にもよるが、人の想いなど、とらえどころのないものをそれなりに理解して予測するということはある程度は出来るかもしれない。将来、人工知能が心のようなものを持つ可能性はある。しかし、コピーできるAIには人間に抱くような深い愛情を感じることは出来ないのかもしれない。」

いっぽう、岡野原さんは、「人間も同じだけれど、人工知能も完全ではないし、人間からするととんでもない間違いを起こすこともある。人間と機械とでは得意な部分が違っているので、人間に代わるものではなく、共存していくのではないか。例えば飛行機のように、飛ぶという機能はあるが鳥とは形も違うし、エネルギー効率も劣る。人間は飛行機の限界を知っていて上手く使いこなしている。AIも同じように、人間が上手く使いこなすことが出来るのではないか。」というご意見でした。

90分に渡るAIの最前線のお二人のお話は、内容が大変深く、時間の進み方が違う気がするほど濃いセミナーでした。
【スピーカー】 銅谷 賢治(沖縄科学技術大学院大学(OIST) 教授)
        岡野原 大輔(株式会社Preferred Networks取締役副社長)
【モデレーター】田中 郁也(朝日新聞オピニオン編集部記者)

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