六本木ヒルズライブラリー

巨大な相手に勝つための法則、そして「サムライ精神」とは?

古庄 宏臣さんの『巨大企業に勝つ5つの法則』

今回ご紹介するのは、ライブラリーメンバー古庄宏臣さんの著書『巨大企業に勝つ5つの法則』です。
「弱者必勝の方程式」とはいかなるものか。それは小さい規模の企業が巨大な企業に立ち向かうための「5つの法則」、そして「サムライ精神」である、と説かれています。
「誰もが脅威と考える変化を機会と捉え、既成概念にとらわれない新しい発想で、不可能と思えることを実現する。それがサムライである。小企業はサムライを筆頭に、奇抜なビジネスで市場を創出し、席巻し、どんな巨大企業であっても追いつけない領域に到達するべきである。」
スケールメリットを活かす巨大企業に対して、スモールメリットを武器に挑む小企業のあり方が、多彩な事例と緻密な分析で鮮やかに語られます。

巨大企業に勝つ5つの法則


巨大企業に勝つ5つの法則
 現代は、これまでの経験が通用しない先行き不透明なリスクの高い時代にあるといえます。このような時代、多くの企業が生き残りをかけ、スケールメリットの追求に躍起になっているように思えました。確かに企業規模が大きいほど財務面や人材面、効率面など競争を勝ち抜く上で有利な点が多いです。しかし、この変化の激しい時代において、スケールメリットを追求することだけが企業の進むべき唯一の道なのでしょうか。

 会社が大きくなれば、組織運営が複雑化するとともに社内外に数多くの利害関係が生じ、一つの意思決定で、多大な労力と時間を要します。
 また、巨大企業には、数多くの成功体験から来る能力を蓄積して今日に至っていますが、この成功体験までもが、新しいことに挑戦する際の意思決定において「前例の有無で判断」という負の遺産になりうるのです。この負の遺産は、知らぬ間に企業の中核人材である管理職層に蓄積され、若い世代の新しい挑戦を阻害します。新しい取り組みへの挑戦が求められている時代に、それができなくなるのです。

 また、巨大優良企業では、現在の主要な顧客の意見をくみ上げるメカニズムが発達しているがゆえに、既存顧客が求めていない新しい市場を切り開くイノベーションには興味を示さず、そのイノベーションは取るに足らないものとして無視してしまうことも間々あるのです。
 したがって、むしろ小回りのきく小さな企業のほうが、新しい取り組みに挑戦して社会を変革していくチャンスが大きいのではないでしょうか。本書でいう小さな企業とは、必ずしも中小企業を意味するものではなく、市場においてライバル企業よりも規模が小さい企業を意味します。

 本書では、実際に自社よりも大きな企業との競争を優位に進めている事例を分析し、単に各事例に共通する事項を抽出するのではなく、小さいからこそ実現できる「スモールメリット」を活かした経営として、重要な5つの法則を示しました。

古庄 宏臣さん(知財務株式会社 代表取締役)


1989年大阪工業大学工学部電子工学科卒。同年大阪ガス入社。事業計画、情報システム開発、知的財産管理業務を担当。2006年退社、知財務株式会社を設立。2008年関西学院大学大学院経営戦略研究科修了、経営管理修士(MBA)。
同社では、ケミカル素材や電子部品といった要素技術を多様な用途に展開し、その要素技術を有するメーカーと異業種の企業をマッチングさせることでイノベーションを起こしている。

関連書籍

巨大企業に勝つ5つの法則

古庄宏臣,玉田俊平太
日本経済新聞出版社