六本木ヒルズライブラリー

規模の経済性と企業の独立を両立させる戦略とは?!

古谷文太さんの『コカ・コーラに学ぶビッグ・ウォレット戦略』

企業競争が激しさを増している中、生き残りのためには合併買収か業務提携か、どちらも一長一短あり、リスクや効果が事前に測れるものではありません。それ以外の選択肢はないのでしょうか。
 合併買収ではなく、業務提携でもない「第三の道」—それが、新ビジネスモデル「ビッグ・ウォレット戦略」です。古谷文太さんは、コカ・コーラグループにおいてこの戦略を主導し、グループ中核会社であるコカ・コーラナショナルビバレッジでCFOを務められました。来る3月17日には、アカデミーヒルズの六本木スクールでご登壇、5月にはライブラリートークでお話を伺う予定です。こちらの頁では、古谷さんの2010年2月に発売された著書をご紹介いたします。


■規模の経済性と企業の独立を両立させる戦略とは■
 「ビッグ・ウォレット戦略」とは、企業や組織の「財布」(ウォレット)の外に 複数の企業や組織の財布を入れた「大きな財布」を作り、このビッグ・ウォレットにとってベストな「全体最適」を選ぶことによって、単独企業・組織では実現できない利益を得ようとする戦略です。
 
 規模の経済性を追求しつつ、自社の独自性も保持したい。二律背反する命題を自らに課して悩む経営者とその戦略スタッフが多いのではないでしょうか。
 この戦略は、それに対する一つの解を示すものです。
 
■資本の枠を超えて全体最適を実現する「割り勘モデル」■
 業務提携は、小さな財布同士のその場しのぎのやりとりにすぎません。合併買収では小さな財布は消えてしまい、企業の独立性は失われます。
 
 「ビッグ・ウォレット戦略」が示す第三の道は、複数の独立企業の一部機能をあたかも一つの会社のように動かして大きな全体最適を実現し、新たな利益を生み出します。その利益をすべての参加企業に分配し、最終的には小さな財布を豊かにすると共に、ウィン‐ウィンを実現して、協力関係を保持します。
 これを「割り勘モデル」と呼びます。
 
■コカ・コーラが採用し、1,000億円を超える戦略効果を上げた。■
 この戦略は、コカ・コーラグループが日本市場で初めて取り組み、1,000億円を超える戦略効果を上げた実践に基づきます。
 
 コカ・コーラは、独特の「製造フランチャイズ」モデルによって世界中に事業を拡大することに成功しました。しかし、時代の変化と共に、強みの裏返しが弱点として顕在化するようになりました。それを克服するべく実践したのが、この戦略だったのです。
 
 実践に基づいた具体的な方策を示すビッグ・ウォレット戦略は、さまざまな業界において活用できる可能性をもっています。

古谷 文太さん ( 財務コンサルタント/米国公認会計士/(株)百家堂 代表取締役社長 )


1965年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、ハザマ(総合建設業)に入社。海外における合弁プロジェクトや現地法人経営を経験後、コカ・コーラに転じ、2005年、コカ・コーラナショナルビバレッジ(株)財務担当バイスプレジデント。グループ中核会社のCFOとして「割り勘モデル」の構築、運用を主導し、1,000億円の戦略効果を実現。 2008年、百家堂を設立して代表取締役社長に就任。主に成長期・変革期にある企業の財務マネジメントの支援と人材教育に力を注いでいる。

関連書籍

コカ・コーラに学ぶビッグ・ウォレット戦略

古谷文太
東洋経済新報社