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伊勢谷友介とリバースプロジェクト その理念と実践に迫る

人類が地球に生き残るために、どうするべきか?

環境
更新日 : 2012年03月26日 (月)

第3章 お米じゃなくて田んぼを買って、生産者と消費者の関係を変える

伊勢谷友介氏

伊勢谷友介: 食の分野《HOUSE475(ハウス475)》のコンセプトを形にしたものに、「RICE475(ライス475)」というのがあります。新潟県の魚沼市のお米農家の方から送られてきた1通のメールをきっかけにはじめたプロジェクトで、無農薬と減農薬の2つの方法でコシヒカリをつくってプロデュースしています。

今スーパーで、例えば「コシヒカリ100%」として売られているお米って、実はその多くが混合米ってこと、知ってます? 農協はいろんな農家から集めたコシヒカリを混ぜて売っているので、おいしいお米も、そうでないお米も混ざっているんです。これって本当においしい、奇跡みたいなお米を精魂込めてつくっている農家にしてみれば、すごくつらい話ですよね。「RICE475」は、「お米を大事につくっても、それが大事に食べられる状況にない。何とかそこから脱したい」というところから始まったプロジェクトなんです。

片岡真実: つくったお米は、新しいブランド米として売っているんですね。

伊勢谷友介: そうです、「RICE475」という名前で売っています。でもそれだけじゃないんですよ。

僕ら消費者は、例えばAという生産者が不作で収穫がゼロだったら、ほかのBやCから買えばいい、しかも安く買えればいいわけでしょう。でもこれだと生産者Aは飢え死にしますよね。農協はそこをカバーしてくれるから、生産者はたとえ二束三文にしかならなくても今まで農協に売ってきたわけです。

この状況を変えるために、僕らは田んぼの状態から買うことにしたんです。例えば5アールの田んぼをみんなで出資して買って、「これから米をつくります。天候に左右されるから、最終的な収穫量はわかりません。でも収穫したら取れ高の1%分のお米を送ります」ってやったんです。

そうすることで、お米をつくる過程もみんなに追いかけてもらうようにしたんです。お米をつくる前の田んぼを買うわけですから、豊作になるか不作になるかわからない、台風が来て大変なことになるかもしれない。すると「台風が来たぞ!」って、生産者と一緒に消費者も慌てることになりますよね。あるいは「農家の人は、こうやって雑草を取りながら米を育てているんだ」というのもわかる。

生産者と消費者の距離を近くして、どんな人が、どんな想いで、どうやってつくって、それがどうやって自分たちの食卓に来るのかがわかるようにしたわけです。

片岡真実: お米の取れ高によって、出資者が得られるお米の量は変わってくるけれど、価格は田んぼを買う最初のところで決まるということですね。

伊勢谷友介: そうです。だから生産者からすれば、不作で大損もしない代わりに、大儲けもできないんです。今回(2011年)は実験的にやったのですが、結果はどうだったかというと、これがめちゃくちゃ豊作で、糖度っていうのかな、これがすごく高いんです。ぜひ食べてみてください、びっくりするぐらい美味いですから。

片岡真実: 一般の人も買えるんですね。どこで買えるんですか?

伊勢谷友介: 廣新米穀(ひろしんべいこく)さんがやっている「Wandering Village(ワンダリングビレッジ)」というサイトで売っています。リバースプロジェクトのサイトからも飛べますので、ぜひ。ちょっと高いですけれど。

片岡真実: でも、ちょっと高いけれどいいものを買うというのは、すごく大事なことですよね。今いろんな問題が起こっていますが、これって「質よりも価格、クオリティよりも経済」で来た結果だと思います。だから質に対してきちんと対価を払うという意識改革は、すごく必要ですよね。いいお米を頑張ってつくった人に対するリスペクトという意味も含めて。

伊勢谷友介: 本当に、その通りです。

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俳優、映画監督、美術家の伊勢谷友介氏は、「人類が地球に生き残るために何かできるのか」をテーマに、 主宰する「REBIRTH PROJECT」でさまざまなプロジェクトを展開してきました。特に、3.11東日本大震災以 降は精力的に活動を広げています。それは未来にとってどんな可能性を持っているのか、私たちは日常的 にどんな心構えが必要なのか?森美術館チーフ・キュレーターの片岡真実氏との対談で、アートもビジネス も社会問題も一体となって考える、広い視点から見た未来について語ります。