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東日本大震災で分かったソーシャルメディアのパワー!

既存メディアはどう変わる?~林信行×DJ TARO~

更新日 : 2011年10月03日 (月)

第4章 のんきなツイートは許されない?

DJ TARO氏(左)林信行氏(右)

林信行: 「大事なのは人」という話をしましたが、じゃあ機械は何が得意なのかというと、情報を簡単に複製できるし、地球の裏側にメッセージを発信することもできる。だから情報の伝播力が強いんです。それから整理やフィルタリングも得意で、検索でうまく条件付けをしてやれば、余計な情報を弾いて必要な情報だけを得ることができます。

可視化も得意です。例えば「Google Earth」では地震の前と後の土地の状況を比較して見ることができます。「Google Crisis Response」(http://goo.gl/saigai)の自動車通行実績情報マップでは、車がこの24時間以内に通った場所を可視化しています。青く色付けされているところが交通実績のあったところで、色が付いていないところは車が通っていない場所、つまり、何らかの理由で通れないのだろうということが分かります。車が通っていない場所の地図を航空写真に切り替えたら、船が道路に乗り上げている様子が写っていたこともありました。こうして情報を可視化できるのは、やっぱりITの強さだと思います。

では、ITを使ったソーシャルメディアはいいことばかりかというと、課題もあります。先週Googleの方と一緒にパネルディスカッションをしたとき、その方が言っていたのですが、Googleは、ほかの企業ともっと連携できたんじゃないかと言っていました。似たような情報を同じような方法で提供しているサイトがいくつかあったんですね。ただ、全部1カ所にまとまってしまうと、それはそれで危険なので、僕はある程度の重複はいいと思います。

それから、PDFの情報が多くて、Googleのサービスに落とし込むのが大変だったと言っていました。これは僕も実感したことですが、@NTTPR(NTT広報室の公式ツイッターアカウント)に被災地に設置した公衆電話情報があったのでリツイートしつつ、日本語が分からない人のためにGoogleマップに入れようとしたんです。けど、元の情報がどうも手書きらしく、その紙を写したものをツイートしていただけだったみたいで、小学校の名前が間違っているものもありました。今後、こうした情報は、PDFではない、もっと応用しやすいデーターになった方がいいかもしれません。

それから、環境の問題。これはいわゆる環境問題じゃなくて、震災以降、ツイッターでツイートしにくくなったということなのですが、TAROさんは、そんなことないですか?

DJ TARO: ありますね。

林信行: 不謹慎っていうのもそうだし。

DJ TARO: 震災直後でも、西日本ではいわゆる通常の一般生活の中でふっと流れるツイートも多かったんです。同じ日本でも揺れを感じた場所とそうでない場所で温度差があったんですけど、今は「いつ普通に戻っていいんだろう」っていう空気ですよね。

林信行: そうですね。あと、ツイッター人口が増えたからかもしれませんけど、例えば「原発はやめたほうがいい」ってちょっと言っただけで、原発推進派の人からワーッと言われていますよね。最近僕の周りではツイッターは恐いって言って、自粛する人が増えています。TAROさんの周りではそんなことはないですか?

DJ TARO: あります。最近ニュースになったので、ここでは敢えて名前は出しませんが、福島にいるお子さんを安全な場所に疎開させる運動をUSTREAMで報告しながらやっている仲間がいるんです。その言動は、どうしても原発にかかってきます。そうした活動をしていた仲間の一人が、最終的な理由は分からないのですが、テレビドラマを降板させられてしまったんです。日本でこういうことが起きてしまったのは、とても残念だと思います。

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