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内田和成の『論点思考』
~問題設定の技術~

東洋経済提携講座より

ビジネススキルキャリア・人
更新日 : 2010年10月28日 (木)

第8章 試験問題は最後が一番難しい

内田和成氏

内田和成: 言い方を少し変えて、企業で課題解決に取り組むときに陥りがちな罠についてお話します。それは、答えがない問題に取り組んでしまうことです。これは何かの入学試験を受けられた方は分かるかと思いますが、仮に数学の問題が5問あるとすると、最後の問題はすごく難しい可能性が高い。一番、二番は常識があれば解ける問題。そのときに五番から解く方っていますか? 普通は一番、二番、三番と解いていって、時間に余裕があるから、もしかしたら解けるかもしれない五番にチャレンジしてみようということになるかと思います。ところが、企業の場合はなぜか一番の難問から解き出してしまったりするのです。それで解ければいいのですが、難問ですから時間内に解けないとか、その人の能力では解けないとか、あるいは時間が経てば条件が変わって解けるが、今の条件では解けないということが起こります。  

では、解ける問題はどんなところかといいますと、例えばコンサルタントから見ると、経営者のマインドセットが低いところ。営業出身の社長さんというのは技術やR&D、製造にあまり興味や経験がない。そうすると、意外と簡単な問題や、少し努力すれば解ける問題でも放置されていることがあります。また、「これがどうも問題じゃないか」とちょっと簡単に自分の仮説をチェックしてみることも有効です。これはクイックテストと呼ばれています。そのほかコンサルタントとして一番有効なのは、現場を見ることです。経営者や経営企画の方と話すと、どうしても得られる情報は二次情報となります。それなりに分析し、加工されている情報です。ところが、問題というのは現場や一次情報に見つかることもあるので、自分で工場に行ってみたり、売り場に行ってみたりすることによって、本当の問題が浮かび上がってくることはよくあります。

このように、いろいろな方法で当たりを付けるのですが、簡単に言ってしまえば、釣り場を探すときに、湾の地図の方眼のマス目にAの1とかCの3と付けて、1番から100番まで30分ごとに釣り場を変えてみようなんて人はいませんよね。どうも潮の流れが激しい防波堤に魚がいるとか、あそこのテトラポッドがいい巣になっていそうだとか。そういう経験に基づいた行動が、まさに「当たりを付ける」ということなのだと思います。
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内田和成の『論点思考』

~BCG流 問題設定の技術~

内田和成の『論点思考』
内田和成 (早稲田大学 名誉教授)

内田 和成(早稲田大学ビジネススクール教授)
今回講師としてお越しいただく内田氏は、ボストンコンサルティンググループの前日本代表であり、「世界でもっとも有力なコンサルタントのトップ25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出されるなど、世界を舞台に活躍されています。
話題の近著『論点思考』を元に、内田氏から直接、実践的な「問題設定の技術」について学びます。


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