記事・レポート

THE FUTURE OF WORK ~働き方のポストニューノーマル~
落合陽一(メディアアーティスト)× 遠山正道(株式会社スマイルズ 代表取締役社長)

Creative for the future - クリエイティブで切り拓く未来への架け橋 vol.3

更新日 : 2021年03月16日 (火)

後編 見る人もクリエイターになれる時代に

人生100年時代だからこそ、「自分から仕掛ける」
遠山:今の世の中には3種類の人がいて、1番目はお声がかかる人。2番目は自ら仕掛ける人、3番目はそのどちらでもない人。今まではお声がかかる人で良かったけれども、60歳で定年になって100歳まで生きてしまう時代に、ずっとお声がかかり続ける事は中々難しいですよね。だから自分から仕掛ける事が必要になってくる。実際は、そのどちらでもない人が凄く多いと思っています。上司が仕事とか与えてくれると、なおさらです。社会人になると、自分の欲求みたいなものに忠実になって、自ら選択して動いていく機会がなくなってしまう。

落合:大人になってくると、自分が仕掛けている事で顧客が付いてないものばっかりやっている人がいたら、「お前働けよ」と言われてしまうじゃないですか。でも働くことの本質はそんな事ではないですよね。お声が掛かってやる仕事と、自分が攻めてやる仕事と、やっぱりそこは全然違います。

遠山:私は元々アートから始まっているので、自分達にコンテクストがあって世の中に提案するというビジネスのスタイルでやっています。だから「従来型のマーケティングがない」のですが、それが良いのは、誰かのせいにしないで済むということです。

落合:誰かのせいにしないというのは凄く重要ですね。自分の場合だと、当然作品は僕が責任を取らないといけないので、悪い作品が出来たら僕のせいです。そういう時に誰かのせいにしないで、そこを反省として受け止めるということがすごく大切だな、と思います。

今一度、社会的価値から距離を置いた「美しい」ものを考える
落合:自分の仕掛けと社会的な価値という点で言えば、僕は元々そんなに社会の欲求と自分の欲求が相反することがありませんでした。研究とアートをずっとやってきて、取り扱う領域が結構みんなが気になっている領域でもあった。たまにはそれなりに役に立つものを作ったりもするのですが、基本的には見ていて感じるもの美しいもの綺麗なものを作りたいと思っています。

遠山:そういう、ちゃんと綺麗なものが少なくなっていますよね。

落合:すごく少ないですね。僕はそれに対していつも思う所があって、「社会性だけを感じたらヤバイ」と。つまり社会批評性を表に出さないと成立しないようなアートは作らないと決めています。裏に社会批評性のあるものや、コンテクストはいっぱい持ってくるしストーリーは作るのですが、そこから先は絶対に語らないし喋らないぞ、と。現代ではある種人類が容易に社会活動に寄与することが出来るようになったわけですが、そういった時にソーシャル性を持つモノというのは本人の個人の心情であって、作品性とはある程度切り離されても良いのではないかな、と思うわけです。勿論 社会批評性のあるアートを見ているのは好きでファンなのですが、自分の中のルールでは作らないと決めています。

遠山:今アート業界で「美しい」みたいな言葉を発することは、かなり抵抗がありますし、勇気が要りますよね。それで本当に良いのか、と思う所はあります。ただ、落合君のやっているような自然の計算で成り立っている作品は、「美しい」と言っても、誰も咎めない。

落合:美しいものは世の中にいっぱいありますからね。

遠山:その辺から、「美しい」と堂々と言えるアートの世界を切り拓いていけると良いですね。
見る人もクリエイターになれる時代に
遠山:アートを見る側の人に関して言えば、自分でアートに対する壁を立ててしまっていますよね。アートスティッカーでも中々見る人の参加率が上がらない。その壁は実際簡単に超えられるのに、どこかで、分かっていないと語ってはいけない、みたいな感覚があるのかな。もちろん知っていた方が面白いという側面はあると思うのですが、その辺をもう少し解きほぐしていきたい。やっぱりアートは鑑賞者がいて100%になるのではないかという思いがあって、別に難しい言葉が無くても、鑑賞者の存在がある事だけでアーティストも救われるわけですし。両方の重要性を上手く設計できると良いな、と。

落合:僕の考える「テクノ民藝」といわれるようなものはそれが真髄だと思っていて、つまり元来の民藝という無名の作家が作った「何かをする為の道具」は、有名な作家が文脈を持って作った物ではないわけです。誰もがクリエイターになれる時代には、アートと民藝の距離が近づいて、それまで前提とされていた知識や文脈とは無関係に表現が生まれていく。

遠山:表現者と見に来る人に大きく分けて考えると、見に来る人もある種表現者的な態度で見に来るというか、そういう事も可能になっていますよね。

落合:そういう事ですよね。しかも「見方がおしゃれ」だと言われて、その人にもフォロワーが付く。楽しみ方を教えてくれる人の価値というのは、これだけコンテクストが乱立した時代にはとても重要だと思っています。DJ的な人であったり、簡単なレクチャーを楽しく5分でしてくれるような人であったりとか。

遠山:職業ではなくても、カルチャー度が高い人といいますか、「表現者と見る人をくっ付けられる人がイケている」という世の中になってくると良いかもしれませんね。

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