記事・レポート

THE FUTURE OF WORK ~働き方のポストニューノーマル~
落合陽一(メディアアーティスト)× 遠山正道(株式会社スマイルズ 代表取締役社長)

Creative for the future - クリエイティブで切り拓く未来への架け橋 vol.3

更新日 : 2021年03月16日 (火)

前編 アートコミュニティという新しい生き方



筑波大学で研究を行う傍ら、デジタルと自然の関係性をテーマに、国内外から高い評価を受けてきたメディアアーティスト落合陽一氏と、株式会社スマイルズの代表取締役社長としてSoup Stock Tokyoをはじめとした様々なビジネスを展開し、新しい生活価値の拡充を提言してきた遠山正道氏のお二人をお招きし、労働とアートの意外な繋がりから、芸術コミュニティを基盤にした新たな生き方のモデルに至るまで、ニューノーマルの世界における「働くこと」の価値、意味についてお話しいただきました。

◆デザイナート
落合陽一(メディアアーティスト)
遠山正道(株式会社スマイルズ 代表取締役社長)

開催日:2020/10/24(日)15:30~17:00
CONFERENCE BRIDGE 2020「Creative for the future ~クリエイティブで切り拓く未来への架け橋」
主催: DESIGNART TOKYO 実行委員会、アカデミーヒルズ
助成:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
写真:田山達之 / 文:新八角
コロナ禍から生まれる民藝的価値と「ビジネス×アート」の現状
落合:まず自己紹介ですが、1987年生まれで、2015年に博士号をとって5年ぐらい経ち、今はデジタルネイチャー開発研究センターのセンター長や准教授、国プロの研究代表をやっています。キーテーマはデジタルとフィジカル。その二つの世界の間に我々はどのような価値観を見出していくか、ということです。デジタルという質量性の無いものと、フィジカルというより味わい深いものの間を取り持っていく視点ですね。その上で、今働いて生きるということに関して僕なりに考えているのは、ある種の「テクノ民藝」的な世界です。テクノロジーの上にある民藝性を継承するものですね。民藝というものは、元来は個人ではなくて、見えない伝統や風景や自然によって作られるものであって、そこに宿る美は無心の美、自然の美、健康の美と言われています。今、自然が社会を脅かしていて、健康にこれほど意識的な時代もありませんが、これだけ人が移動できなくなると、ローカルに、無心に何かを作っていって、その中から出てくるものを愛でるような文化いうものが育まれているのではないかなと、考えています。

遠山:私自身は1985年に三菱商事に入って、サラリーマンをやっていました。33歳の時に絵の個展をやりまして、自分で発意して手を動かして手渡して、直接「いいね」と言われることに味を占めました。その経験からSoup Stock Tokyoは生まれています。つまり、私にとってSoup Stock Tokyoは作品なのです。スープの次にはネクタイ、リサイクルショップ、ホテルやのり弁など、色々やってきたのですが、私はアートが昔から好きなので、アートとビジネス、そこに何か切り口があるのではないかと考えまして、ザ・チェーンミュージアムを2年前に始めました。簡単に言うと、アーティストが世界と直に繋がることを目指しています。そこではアートスティッカーというアプリを作っておりまして、そこで出会った作品を鑑賞者が「いいね」と思ったら、ポチっとやるだけで120円や6千円のドネーションができます。そしてSNS的なコミュニケーションが生まれて、作家も直接お礼が言えたりする。要はこれプラットフォームなのですが、是非アーティストや芸術祭のグループといった、色んな人達が、色んな立場で大いに使って欲しいなと思っています。

アートコミュニティという新しい生き方
遠山:最近考えているのは、コミュニティアートについてなのですが、例えば「ファクトリーオチアイ」みたいなものを作って、参加費は1人1万円とします。100人が参加していれば毎月100万円入ってくる。その100人は物理学者だったり建築家だったり詩人だったりエンジニアだったり色んな人がいて、例えば筑波の近くに、家賃20万円くらいの大きな倉庫を借りて、その100人で延々とアートを作り続ける。そうすると今まで作品の売買か入場料しか換金の方法が無かったアートが、換金しなくても、とにかく作り続けていける運動体になる。毎月100万円の中で、材料費と家賃をやりくりして、これでアートを作り続けるだけで一生を終える人がいたら、素晴らしい働き方ではないでしょうか。そういう生き甲斐というか、生き方のモデルが出来たらいいな、と。陶芸や音楽の世界でも、そういったサブスクとかコミュニティと言われているような形態を上手く利用することが可能なんじゃないかな、と思います。

落合:なるほど、きっとそれが持続するポイントは場所ですね。自分の会社だと筑波の近くに4千平米の工場の跡地をラボラトリーとして持っているのですが、アートのアトリエを作る場合はどこがよいと思いますか?

遠山:多分、アートを一生続けていける「良さ」を感じられる場所でしょうか。景色が良いとか空気がいいとか、もうそこに住みたくなるような。コロナ禍で一つ私が感じた事は、今まで仕事があって、そこに生活がへばりついていたけれど、実際は生活があって、その中の一部に仕事があって、他にも家族だったり、複業だったり、コミュニティが色々あって、そこに幸せみたいなものがあるわけです。だとすれば、丸々自分の生活みたいな場がいいですよね。ファクトリーに行って、1万円だけ払っていれば人生の喜びすら一緒に味わえる場です。

落合:適切な課題設定と、それが鑑賞できて体験できる場所があるという事でしょうか。都心は分かりませんが、2040年を超えてくると、きっと日本中で土地が余ってきます。そうなった時に活力のある場所というのは、家賃よりも重要な価値を持つ。そのフレームワークは決済やコミュニティサービスが付いている電子上の集まりなのでしょうが、場所としてアーカイブ機能が付いていると価値は高くなると思います。

遠山:アートにかかわらず生き甲斐がうごめいている場みたいなものが成立したら、それだけで価値になるのではないかな、と。それを働き方という切り口で考えた時に、アーティストが世の中の資本主義社会の中で、1番先端的な働き方をしている、みたいな例が出来れば、従来のビジネスパーソンもある程度追随出来そうな気がします。

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