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「経済」について、今あらためて

生活と切り離せない「経済」を知る5冊

更新日 : 2022年06月14日 (火)





私たちの生活と密接な「経済」。生きていくうえで避けられないことは言うまでもありません。けれど、どう関わっているのか、仕組みはいかなるものなのか。それどころか、何から学んでいけばいいのか。少し難しそうで、突き詰めようとすれば頭を抱えてしまうこともある、このテーマ。

お金をめぐる今昔の話、今の自分自身の賃金について、そして連動する「民主主義」や「格差」から見る「経済」。今回はちょっとカタいものから分かりやすく紹介してくれるタイトルまでを5冊、ご紹介いたします。

「経済」を知ることで、きっと生き方の幅が広がることでしょう。



アダム・スミス──共感の経済学
ジェシー・ノーマン 著 / 村井章子 訳 / 早川書房 刊
近代経済学の道筋を現代まで引いた人物として知られる、アダム・スミス。教科書や授業での漠とした感覚だと「利己主義の擁護者」あるいは「自由放任の信奉者」等々の印象を持たれがちな「経済人」です。

しかし本書では、経済学に留まらないあらゆる学問領域に通じ、その上で「市場」を越えた先にある人間の繋がりを信じていた人文者でもあったことが書かれています。著者の想いと博識は、人物評伝に限らず、掲げた思想ともたらした影響の分野まで深く行き渡っており、重厚ながらスミスを丸ごと知るに適した一冊と言えるでしょう。

なお、本記事最後に挙げる『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』への言及も本書内にあります。比較しながら読むこともおすすめ。

アメリカの高校生が学んでいる経済の教室
デーヴィッド・A・メイヤー 著 / 桜田直美 訳 / SBクリエイティブ 刊
「人は誰でも、日々の生活で経済的な判断をしている。個人でも、社会でも同じことだ。」(16頁)

この判断や選択を研究する学問が経済学である、と文が続き幕を開ける本書。なぜ経済学を学ぶのかということや、取引、市場、お金の流れといった基本的なこと、インフレ、失業、そして環境と経済の関わりについてまで抑えています。

時折挟まれるユーモアやイラスト、あるいは翻訳の力も影響しているのかもしれませんが、文章が非常に明快かつ詳らか。経済とは何か? をまず知るのにはもってこいの一冊です。

なお巻末には「知っておきたい経済用語集&索引」も付録。気になった用語から本文へ戻り、再確認できます。

給料はあなたの価値なのか
ジェイク・ローゼンフェルド 著 / 川添節子 訳 / みすず書房 刊
思わずハッとしてしまう方も少なくないと思われる本タイトル。日々の生活はもとより、したいことや欲しいものに欠かせない給料には、もう一つの顔があります。それは、自分自身の仕事の「対価」。換言すると、市場での自分をはかる物差しとしてのお金というもの。けれども、本当に自分の価値を表すと「されている」その物差しは正しいものなのでしょうか?

本書では、その問いに「否」と応じ、給料を決定づける4つの要因──権力、慣性、模倣、公平性を仮定したうえで、現代社会の経済格差を緻密に再考していきます。

「私たちの自意識や価値観は、多くの場合、賃金や給与に包まれている。」(246頁)

この観念は、あくまで神話に過ぎないのです。

自分で始めた人たち
社会を変える新しい民主主義 宇野重規 著 / 大和書房 刊
民主主義思想を専門とする著者が、「民主主義を実践する」人たちとの対話を集めた本書。相手は、著者が審査委員を担う「チャレンジ!! オープンガバナンス」という、自治体と市民・学生が共に抱える地域の課題を解決するアイデアのコンテストで関わった人たちです。

民主主義と聞くと身構えがちですが、日々の中で具体的かつ実践的に行動している方々の言葉は、私たちの経済や自治、ひいては暮らしのあり方をより主体的かつ広範に考えるきっかけを与えてくれます。

「自分たちの社会の問題を、自分たちの力で解決していくのが民主主義です。」(6頁)

アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?
カトリーン・マルサル 著 / 高橋璃子 訳 / 河出書房新社 刊
名の知れた経済学者アダム・スミス。(本記事でも関連本を紹介)しかし、彼がとる食事は誰が作ったのかは、あまり知られておりません。果たして母だったそうですが、このタイトルは私たちが今後さらに考えるべき「女性の家庭内労働」と「従来の男性中心の経済学」の関わりに切り込むうえで、これ以上本書をあらわすものはないと分かります。

なぜ家庭内労働の負担や失業者数に差があるのか、そして引き継がれる経済理論にはなぜ(どのように)女性が除かれるのかを、経済学者ほか先人の言葉や生き方を引用しながら、分かりやすくかつウィットに富んだ文体で書かれた一冊です。

「フェミニズムは単なる『女性の権利』の問題ではありません。社会全体の問題です。」(「訳者あとがき」268頁より)

私たちにとって遠いものではない「経済」、そして密接に関わる労働の問題や社会参画、社会格差について再考をうながしてくれるタイトルをご紹介しました。

一見難しそうと思われる「経済」というテーマですが、決して入りにくいものではないと実感させてくれるこの5冊は、これからの暮らしにおける新たな気付きや働き方、ひいては生き方を考えるきっかけになることでしょう。

「生きること」とほぼ同義と言ってもよい「経済」への入り口へ──。



アダム・スミス共感の経済学

ジェシー・ノーマン
早川書房

アメリカの高校生が学んでいる経済の教室

デーヴィッド・A.メイヤー
SBクリエイティブ

給料はあなたの価値なのか

ジェイク・ローゼンフェルド
みすず書房

自分で始めた人たち

宇野重規
大和書房

アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?

カトリーン・マルサル
河出書房新社


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