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アーク都市塾活動レポート1 都市開発ビジネスコース(第36期)最優秀卒塾作品 東京都との意見交換とディスカッション

この度、アーク都市塾では卒塾生が制作したコース作品をもとに、
東京都の関連部門の方々とディスカッションを行いましたのでご報告いたします。

アーク都市塾では「経営マネジメント系」、「都市開発・不動産系」というカテゴリーで複数のコースを開設しておりますが、各コースそれぞれにテーマを設定し、グループワークを通して論文(卒塾作品)を作成するというアウトプット・カリキュラムを実践しています。

セミナー風景今回、2006年4月より同年9月に開講した36期におきまして、全16コースより輩出された卒塾作品の中で、社会的貢献度、発想の奇抜さ、立地選定、リアリティの高さが評価を受け、最優秀作品賞を受賞した「都市の河川上空の有効活用プログラム−公有水面を活用した都市・地域再生の試み−」を、東京都の関連部門の方々にご説明する機会に恵まれることとなり、全員でディスカッションをさせていただく運びとなりました。

この作品は、「都市開発ビジネスコース」(監修:伊藤 滋 早稲田大学特命教授、コース指導:三輪恭之 国際航業株式会社、コース指導:橘 昌邦 アフタヌーンソサエティ)を履修した伊藤栄史さん(物産不動産株式会社)、水上義之さん(三菱地所株式会社)、米山勝広さん(東京コカ・コーラボトリング株式会社)、宮内祐紀さん(興和不動産株式会社)の4名による共同制作で、以下の2点を柱に展開されたものです。

  • 河川上空部に人口地盤技術を用いて、防災拠点と商業施設を開発する
  • 河川の親水性の向上と街づくりにより、周辺の都市再生・地域の活性化を促す

今回の活動は6ヶ月間の受講期間を経て制作された上記卒塾作品について、実際の自治団体である東京都の関連部門の方々と、ご一緒に議論させていただきたいというアーク都市塾からの申入れを、東京都の方々が快く受け入れてくださったことにより実現にいたりました。

なお、東京都からは、都市整備局 市街地整備部より 管理課長・日浦氏、企画課長・臼田氏、防災都市づくり課長・永沢氏、防災都市づくり課 防災計画係長・山保氏、民間開発課民間区画整理係 主任 吉野氏、産業労働局 観光部より 副参事・田中氏、他2名の計8名の方々にご参加いただきました。

都市整備やまちづくりを担当されている職員の皆様からのアドバイスをもとに、全員でのディスカッションと意見交換の結果、プロジェクトの実現可能性にあたって導き出されたポイントは、「環境」「防災」「交通」の3点でした。

「環境」について 〜地球環境への配慮は〜

セミナー風景 河川上空に人口地盤を設置するプロジェクトに、今後ますます重要性を増す地球環境への配慮が十分なされているかということが大きな論点となりました。人工地盤のデッキの下を流れる河川、商業施設の上に広がる空、それらは自然景観としてきちんと保持されるのか等、地域住民の河川への親水性に加えて、環境問題への高い意識を問われました。人口地盤の防災施設部分を緑化するアイデアはプロジェクトに盛り込まれていましたが、それが本当に環境によいというコンセプトを打ち立てることができるのかといった、研究結果の検証の必要性も指摘として上がりました。

「防災」について 〜実際に機能できうるか〜

防災拠点の観点は、都市開発という面で議論の最大のネックとなりました。マグニチュード7.0以上の大規模地震が、今後東京湾周辺に発生する可能性は高く、住宅密集地が多く避難危険度が高いと思われる浅草〜押上・業平橋エリアでの避難場所の創出を、河川上空利用の大きなポイントとしている今回のプロジェクト。しかしそこが、災害発生時に一時的に逃げ込む「避難場所」なのか、食糧等を備蓄し人々が安全に避難生活ができる「避難所」になるのかという定義の捉え方が、大都市の防災拠点の問題点として上がりました。また、避難する人々をこの場所に誘導する導線の確立や、浅草側からの火災発生時には輻射熱が隅田川方面に流れるという想定に対し、前述の人工地盤の緑化のみでそれを防ぐことができるのかといった、非常に具体的な事例をもとに議論が交わされました。

「交通」について 〜周辺地域への貢献について〜

セミナー風景 押上・業平橋エリアの新東京タワー計画地と、隅田川をはさんだ浅草エリアに回遊性を生み出し人の流れを作る仕組みから周辺地域活性化に貢献する役割も、河川上空プロジェクトは担っています。浅草寺周辺を観光・文化拠点とし、商業施設を持つ河川上のデッキが架け橋となって新東京タワー(業平橋)方面を結ぶことで、隅田川に分断されずに賑わい軸を伸ばすという提案です。その中には、東武伊勢崎線浅草駅を河川デッキ上に移動する案も含まれています。しかし浅草〜押上・業平橋エリアへの鉄道・道路などの公共交通機関による導線の研究から、浅草寺と新東京タワーを結ぶ橋を利用する人の流れと量を導き出した上で、検討を重ねることの必要性が説かれました。デッキ上のもうひとつの目玉であり賑わい軸の中心となる商業施設に関しては、国内外からの観光客が行き交い古くからの文化を残す浅草という立地的観点を、物品販売等で商業施設の特性にしてはどうかという点で、プロジェクトが提案している浅草のDNAを残しながら近未来を並存させる提案と一致しました。

東京都との意見交換会を終えて〜参加メンバー4名の感想

伊藤栄史さん(物産不動産株式会社)

今回、都庁職員の方々に我々のプロジェクトをご紹介できたのことは、大変意義のあるものでした。自治体の目線からの意見はとても具体的であり、興味深く聞かせていただきました。私自身はビルの賃貸管理に長く携わってきており、今まで都市・地域再生という内容で国や地方公共団体と意見交換をするということはなかったので新鮮でした。官民共同事業ということでは、第3セクター、PFIなどがありますが、今回のよう意見交換会の場が増えれば、まちづくりに限らずより良い社会づくりに生かせるのではないかと思います。

水上義之さん(三菱地所株式会社)

テーマの設定から手探りで始めた卒塾作品が、今回アーク都市塾を飛び出して、東京都の方々と事業の実現性という視点でディスカッションができたことは、私達にとってはもちろん、アーク都市塾の学びを実践の現場に繋ぐという面で大きな意味があったのではないかと思います。意見交換を通して、私達の作品はまだまだ多くの課題があることが浮き彫りになりました。しかし「河川上空活用の大いなる可能性」は近い将来に具現化することは間違いないと思いますし、自分自身がそれに関われたら良いと思います。貴重な機会を設けていただきました東京都の皆様、アーク都市塾の皆様、そして3人の仲間に感謝します。

米山勝広さん(東京コカ・コーラボトリング株式会社)

私の場合は飲料会社勤務ですので『都市開発ビジネスコース』受講が刺激的で戸惑うことも多くありましたが、ゼロベースからのスタートでプログラムを完成させるにあたり、色々な視点から物事を観ることが出来ました。また、東京都の方々とのディスカッションという貴重な体験をさせていただき感謝しております。今回の意見交換で感じたことは、「防災拠点」など定義づけられている言葉への理解不足と、環境面への配慮不足でした。しかし、我がチームのプログラムはまだまだ荒削りではありますが、東京都の方々にも興味を持っていただけたことと実感しております。

宮内祐紀さん(興和不動産株式会社)

今回のディスカッションでは、治水を最優先課題とするであろう河川上空を他の目的として有効活用するという点で、治水面の課題だけに話題が集中してしまうのではないかという危惧がありました。しかし、実際には、我々の提案に対して大変興味をお持ちいただき、ディスカッションでは、幅広く実現に向けての課題を議論することができました。我々の提案を単なる提案として終わらせるのではなく、様々な立場・視点から議論し、課題をみいだせたことで、よりアーク都市塾への参加意義が高まったように思います。この度は、このような機会を設けていただき誠にありがとうございました。

アーク都市塾 事務局より

まずは、東京都の皆様に御礼申し上げます。ご多忙な中、貴重な機会を設定いただき、また、今回の作品が自治管理区域である河川の上空を利用するというセンシティブな面を前提としているにもかかわらず、忌憚ない議論をさせていただき誠にありがとうございました。このたびのディスカッションを通して、自治体の持つ視点と民間企業の持つ視点とを掛け合わせることの重要性と可能性を感じたとともに、塾生においては自分たちのプロジェクトを現実に落とし込む仮定のもとに、新たな視点や気付き、そして課題や問題点を拾うよい機会になったことと思います。 東京都の皆様には改めて御礼を申し上げるとともに、アーク都市塾ならびにそこに集う塾生諸君の、机を離れた新たな学びの一歩として、今後の礎となることを祈っております。