日本元気塾

藤巻塾の活動報告

日本元気塾
更新日 : 2010年03月03日 (水)

第8回 2009.12.8(火)

講義レポート

月刊『商店建築』編集長・笈川誠さんをお迎えし、第8回目の藤巻塾講義が行われました。

商店建築』編集長・笈川氏
『商店建築』編集長・笈川氏
藤巻幸夫氏
藤巻幸夫氏

元気なアジア都市

仕事柄アジアの都市には非常によく行く機会がある。アジアの国々はこれまで日本を目指し、日本をベンチマークとして日本を追いかけてきた。しかし今、日本が培ってきた技術をベースに創造力を使って新しいものを産み出す元気と活力があるのはアジアの都市だろう。例えば、最近参加した香港デザインセンターが主催している「ビジネス・オブ・デザインウィーク2009(BODW)」は、デザイン・ブランド・イノベーションをテーマに各国からデザイナーやビジネスリーダー、教育者を集め、香港で仕事をしてもらうきっかけを作っていくイベント。このイベントの実現に大きく貢献したのは個人です。華僑のビジネスマンで、彼のように権力とお金を持つ人が日本にはいないため、BODWのような発想を実現しようとする動きが生まれにくい。勢いがあり、新たな発想に対しても柔軟な華僑のビジネススタイルというものに注目している。

このアジア都市の元気を日本がもっていいはずで、どうやったら日本のクリエイターが活性化していくかずっと考えている。香港はグラフィック(平面)に強く、韓国はプロダクトデザイン(商品)に強い。そして日本は昔から「はかないもの」に価値をおくため圧倒的に3次元(空間)に強いと思っている。だから、日本の空間デザインを海外にもっていき、世界から日本を活性化させたい。


行政とまちづくり
行政の仕事は感性と客の視点に乏しいという。例えば、東京に流れる隅田川、護岸のため川べりはコンクリートで埋め固められていて美観的にはかなりひどい。でも優れた技術で土木事業としては世界一の水準を誇るものだ。民間は「ここにこれがあったら人が来るだろう」と思えるデザインをする。それを基に行政に働きかけてデザインを実現する。その積み重ねでまちの景観を揃えていくことができるのではないか。まちづくりをしていく中ですぐに「行政」「民間」と隔たりを作りたがるが、掘り下げていけば行政も民間も考えていることは同じ。みんなが幸せに暮らせるためのまちづくりを考えているのだ。一緒に仕事をするときにこの“掘り下げ”を怠らないことが大事。掘り下げていけば敵も強力な仲間になっていくこともある。そして立場に問わず、人を巻き込んでいかないと、物事は生まれない、具体化しない。だからお互いが歩みよるためには、話し方、見せ方といった「プレゼンテーション能力」が大事。


場力

商業施設でも街でも、「場に力があるかどうか」が大事なこと。場力のある場づくりには、根本的なところまで掘り下げて、必要なものを見極めながら整理して、必要なものだけを積み上げていく。この繰り返しが場の力を作り上げていく。さらに場を作り上げていくのはその場に集う人々。たとえば、ペニンシュラホテル。このホテルはグループ全体でみて離職率が低く、ホテルに働く人々がホテルに非常に愛情を持っている。この愛情が場の力を産み出すのだろう。



鍛えよ、エモーション!

歴史をみると、社会が変わる時には、いつの時代も異国を経験してきた人たちが新しい価値観を持ち帰ってきたことによって変革が起きていったと思う。外国から日本を見てみる、異文化に触れることで、自分が感じる違和感という感覚によって自分がナニモノかを知る、という経験を積極的にしてほしい。現地の友人を作ることも文化を知る上では大事なことで、新しい価値観をもたらしてくれる存在になる。また、どんな仕事もクリエイティブな仕事になりうる。現場力、人間力、想像力を使って「感じる」ことが大事。常に「エモーション」を鍛え続けよう!海外の新しい視点を持ってくるのは、20代、30代が中心になる。才能はある、スキルもあるが、これから日本に必要なのは、現存の価値観を転覆させること。同じことを思っている人は必ずいる。日本が持っている伝統と現代の視点をスパークさせることで最高のクリエーション、新しい価値を生み出していくことが重要だ。


感想 -講義を終えて-

レポートを担当したのは、久保田さん

正直に言うと、『商店建築』の編集長さんのお話ということで、建物の中のインテリアデザインについてのお話なのだろうと思っていた。が、笈川さんが話を始められた瞬間から、笈川さんの視点は建物を飛び出て、まちへ、地域へ、国へ、そしてアジアへ、とどんどん広がっていき、ものすごく大きな世界感の中で「商店建築」を見守り続ける視点が、どんどんクリエイティブな発想を商店建築の業界にもたらし続けているようだ。

笈川さんのお話の中で、整理→根本の見直し→積み上げがクリエイティブだ、という話が一番印象的だった。クリエイティブ=創造するというと、何もないところにゼロから創り出すということがクリエイティブだという印象を持ちやすい。ただ、出来上がっているものを整理し、まずはその存在の根本までを見直し、必要があれば、いらない部分を削りながら、積み上げなおしていく、こともクリエイティブだ、とおっしゃるではないか。

これはデザインに限った話ではない。編集の仕事でも、経理でも、お菓子屋さんであっても同じことだろう。 

デザインは建物、ファッション、景観だけの話なのではなく、「物事が機能する」ために一番効率的で、かつ美しい物事の位置の組み合わせはすべてデザインなのだ、と目から鱗な発見のあったお話だった。

講師コメント

講義を終えて藤巻さんは、どのように感じたのでしょうか?

笈川さんとは伊勢丹時代にBPQCの取材を通じて知り合いました。

建築、デザインに留まらず、色々な分野に精通しているので、今の時代の流れや、日本とアジアの関係など話してもらいたいと思いお呼びしました。

僕も、場の力はソフトだとずっと思っています。物だけでは売れない時代、イベントなどリアルな体験や、空間そのものが重要になってくる。また一時的な流行ではなく、サービス、メンテナンスがきちんとし、継続的に維持できる場をつくることもポイントだと思っています。

定点観測

アンケート集計

※数値はオンラインの出席者アンケートより

日本元気塾では、講義後に出席者へのアンケートを実施しています。出席率、元気度を毎回集計し、報告いたします。

参考図書

今回の藤巻塾にて紹介された図書です。

*書籍はアカデミーヒルズ施設内、日本元気塾のコーナーに展示してあります。是非ご覧ください。

創造するアジア都市

橋爪紳也
NTT出版

ジャパンクールと情報革命

奥野卓司
アスキー・メディアワークス

喪失の国、日本

モーハンダース・カラムチャンド・シャルマ【著】,山田和【訳】
文藝春秋

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