石倉洋子のグローバル・ゼミ

ゼミでの失敗を糧に、世界へ

グローバル•アジェンダ•ゼミナールのメインファシリテーター、石倉洋子さんに聞く

更新日 : 2009年11月04日 (水)

第4章 ダボス会議が進化しつづける秘訣



ダボス会議のイメージが変わりました。「世界の各界のリーダーが集まって真面目に議論をしている」という固いイメージだったので、いまのお話はとても新鮮です。

いま、お話したようなワークスペースや今年から始まったアイディア・ラボは最近使われはじめた新しいやり方です。クリエイティブなアイディアを出すために、ビジュアルも音楽も使おう、グラフィックでコンセプトや実行計画を示そうという試みです。

2000年頃は、大きなホールで行う全体会議やパネル・ディスカッションが中心でしたし、パネルではパワーポイントを使った人もいました。でも、今、パワーポイントは使えません。パネル・ディスカッションでも、最初に5分くらいずつパネリストが発言し、その後はフリートーク。聞いている人たちも巻き込んでどんどん議論します。その他ワークスペースなど新しい形が多数試されています。

ダボス会議の中でも、全体会議やパネル・ディスカッションは公開されていますし、誰でもどこからでもネットで観ることができます。私自身も最初は全体会議やパネルなどを聞いていましたが、最近は、せっかくダボスまで行くのだから、「現場でしか体験できない」ことに参加しようと思って、プロセスが公開されていない、こうしたブレーンストーミングを中心に参加しています。

ダボス会議自体も毎年進化しているのですね。

そうですね。普通は、同じようなメンバーが毎年来て同じ方式でやればマンネリ化しますが、ダボス会議は40年近い歴史の中で、常に進化しています。特にここ2-3年は新しいメンバーを加え、バーチャル・カンファレンスなど各種のメディアを駆使し、また活性化しています。その裏には主催組織の大変な努力がありますが、これだけ継続し、進化してきた結果、世界が直面している問題を話し合うための良いプラットフォームになっているのです。

WTOやG20は政府中心、NPOはNPO、ビジネスはビジネス同士で議論する場はほかに多数あります。しかし、ダボス会議はいろいろな立場の人が集まり、その場で「直に」議論できる場を提供しています。一対一で多くの人と個別に会合することも可能です。参加者同士が顔見知りになりますから、「この間の話は」、「実はね…」と対話が続きます。

ところで、ダボス会議のような国際舞台で失敗されたご経験はありますか。

もちろんあります。先日、大連で開かれたサマーダボス(9月にひらかれるAnnual Meeting of New Champions)でも冷や汗をかきました。私は、最終日3日目の朝9時に予定されたアイディア・ラボのモデレーターをしたのですが、最終日で朝早かったので、9時時点では参加者が少なく、人が集まるまで少し待つことにしました。しかし来る予定だったグループがなかなか来ないので、仕方なく見切り発車したのですが、今度は用意していたスライドが出ない。15枚のビジュアルのスライド(テキストではない)を各20秒ずつどんどん見せて、先端的なアイディアをプレゼンテーションし、そこから議論が始まるのがアイディア・ラボの「目玉」だったので、とても困りました。途中でスライドは見せられるようになったのですが、結局残りの時間が少なくなってしまって話を随分端折ってしまいました。

しかも、日本人が多かったせいか、最初のうちはあまり質問も出ません。困ったなと思っていたら、別のラボでモデレーターをいくつもしていたリチャード・パスカルさん(日本的経営の研究で有名な経営学者)が質問してくれて、やっとほかの方からも質問が出るようになったのです。

(文・構成 太田三津子/撮影 御厨慎一郎)

プロフィール

石倉洋子
石倉洋子

一橋大学名誉教授


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