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ローソン社長新浪剛史氏が描く、イノベーション・フロンティア

日本元気塾プレセミナー

更新日 : 2009年08月04日 (火)

第2章 社会のニーズとのギャップに気づくことがイノベーション

新浪剛史

新浪剛史: 「ナチュラルローソン」にしても、あとでお話しする「ローソンストア100」にしても、そこに至る過程で相当な投資をしますから、3年間では初期投資を回収できません。そういった意味で、儲かっているところは新しいことをやろうという勇気がなかなか起きないのです。

三菱商事株式会社に入社したとき、砂糖の相場を担当していましたが、やはり社会のニーズはどこにあるのか、マクロを見なければいけませんでした。自分の業界を超えて、社会で何が起こっているかビッグピクチャー(全体像)を見るのはすごく重要です。

病院の給食会社をやったことがあるのですが、これはまさに「ビッグピクチャーをとらえろ」という好例でした。フランスに行って病院給食を見る機会があったのですが、すばらしかった。選べるし、フランス料理が出るし、ワインまで飲めるんです。

一方、日本の病院で4時半頃に冷たい食事が出るのを見て「これでは患者さんはお客さまじゃないじゃないか。絶対何かを起こせる」と感じました。全体の環境からすると、「このままであり得るはずがない」と。これがギャップです。

つまり、「このままであり得るはずがない」という感覚が、ものを起こすとき非常に重要だと思うのです。世の中、まだまだおかしいことがいっぱいあります。規制のためにそうなっているのならその規制が本当に変わっていくかどうか、国民の声が強くなっていくかどうか、メディアがどう見ているかなど、いろいろと見るべき動きがありますが、「必ず何か起こるな、変わるな」と、アンテナを立てることが重要です。

私は、「病院給食は、このままであるはずがない」と思ったので、ノウハウは全く持っていませんでしたが始めました。問題は「どれだけ時間がかかるか」「どれだけ粘ったらいいのか」という読みです。同じことを考えている人間は何千人といるかもしれない。でも、やれる人間はほんの少ししかいませんから、本気でやればチャンスです。

社会が本当に求めているものと、現実とのギャップを埋めるのがイノベーションです。例えば「なぜ女性はコンビニを使わないのかな?」と思ったのが、「ナチュラルローソン」誕生のきっかけです。女性に聞いてみると「健康が気になる。コンビニを使うのは、ほかになくて仕方ないとき」と言うのです。だったらもっと女性に使ってもらえるようなコンビニにしたいと思って「ナチュラルローソン」を始めました。

ブルーのローソンに軸足を置くのは当然です。でも、それに対して2割や3割、別のところにもちゃんと比重を置いておくと、主軸で失敗しても潰れません。「SHOP99」や「ローソンストア100」をやっていないところで今の大変化が起きていたら、私は真っ青だったと思います。コンビニは生活防衛の逆で、もとの発想が「安く売ってはダメ」なので、価格の勝負には弱いのですが、そこの要素もやはり入れなければいけないのです。

そういう新しいことをやりながら、組織は成長していきます。ブルーのローソン中心でいれば安泰だと思っても、何が起こるかはわからないんです。本流でずっと安泰、なんてことは絶対ないんです。「超亜流の勧め」と言っているのですが、そこからイノベーションが始まるのです。

これから企業が必要とするのは、チャレンジする人間です。どれだけチャレンジをして自分自身を磨くかが重要だと思います。

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