記事・レポート

オバマ大統領と今後のアメリカ

ライブラリートーク 「日本の政治シリーズ 第1回」

更新日 : 2009年07月31日 (金)

第4章 ライバルをチームに加えるオバマ、「お友達内閣」をつくる日本

ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授
ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授

ジェラルド・カーティス: エイブラハム・リンカーンはオバマ大統領と同じイリノイ州から国政に立ちました。リンカーン大統領の誕生後に南北戦争が起こりましたが、この南北戦争が本当の意味で終わったのは、バラク・オバマという“黒人”が大統領になったときだと私は思います。

オバマ大統領はアフリカン・アメリカン、日本でいえば“ハーフ”です。黒人と白人の血を継ぎ、ハワイ育ちで、小学校のときはインドネシアに住んでいました。オバマ大統領はどちらかというと日本的というかアジア的なところがあり、できるだけみんなのコンセンサスを得る努力をします。芯は強いけれど穏やかで、multi-culture、multi-relation、multi-everythingというような人です。

彼はリンカーンに似ているし、実際に見習おうとしています。リンカーンは大統領選挙の予備選で争った人を自分の内閣に入れました。オバマ大統領もライバルのチームをつくっています。どこかの国の首相が「お友達内閣」をつくるのとは対照的です。才能さえあれば個性の強い、自分と違う意見を持っている人を側近にする。これがオバマ大統領の強さです。

ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授

彼は一番のライバルであったヒラリー・クリントンさんを国務長官にしましたが、これはよほど自分に自信がなければできないことです。また、ブッシュ政権の国防長官であったロバート・ゲイツを留任させていますし、ローレンス・サマーズという非常に個性の強い、クリントン政権時代の財務大臣を経済アドバイザーにしています。 バラク・オバマという人はものすごく自分に自信があるのです。でも威張らないのです。私が知っているアメリカ大統領の中で、カリスマ性においてオバマ大統領に一番似ていると思うのはケネディ大統領ですが、オバマ大統領はケネディを上回る何かを持っています。大統領就任後3週間で7,800億ドル、大体72兆円の景気刺激策を議会で通しましたが、これは本当にすごいことです。 日本では今度、民主党が政権をとる可能性がありますが、政権最初の3週間、3カ月、100日間で何をするのか、みんなが注目しています。ところが「政権をとってから考える」というのが今の民主党の大方の答えです。マーケットが「この政権は何をするのか」と注目しているのに、「政権をとってから考えましょう」というのです。この絶望感はマーケットにものすごい影響を与えると思います。 オバマ大統領はヒラリー・クリントンさんに勝つ前から、「大統領になったら最初の2カ月で何をするか、誰を内閣にするか」を考え、当選するまでに基本的なことを決めて、1月20日の就任日から動き出しました。これがオバマ大統領のやり方です。