記事・レポート
「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」
更新日 : 2009年04月02日
(木)
第14章 時速300kmで走るF1カーは、オフロードを走れない
竹内薫: ロバストネスに対立する概念というのは、ほかにありますか。
北野宏明: ある一定のものに対してロバストになると、どこかに脆弱性が出るという、この対立軸があります。
もう1個は、全体的にロバストネスを上げていくと、パフォーマンスが落ちるか、ものすごくリソースを要求するか、どちらかになりますね。リソースというのは、経営資源とかエネルギーという意味です。
分かりやすいのはロバストネスと脆弱性と、ロバストネスとパフォーマンスです。例えば、車のF1は時速300kmぐらいまで出ます。しかし、オフロードは当然ながら走れません。それは、路面の変化に対して脆弱だからです。オフロードが走れるのは戦車ですが、戦車が300kmで走るということはあり得ない。ロバストだけれどパフォーマンスはないのです。それと全く同じことだと思います。
企業経営も多分同じで、吉野家で今起きていることというのは、ロバストネスを若干上げなければいけないことになったので上げた。そのかわり、どうしてもパフォーマンスは落ちる。これは多分、分かったうえでやっていると思います。
いろいろ調べたら、マルチメニューはアウトソースして、吉野家本体で全部はやっていない。新しいリスクを引き込んでいるのです。これはクオリティコントロールです。自分で今は全部をクオリティコントロールできていない、だからアウトソーシング先でクオリティコントロールをしているのです。だから、そこが食品偽装とかおかしなことをやると、吉野家はやられてしまいます。そのリスクも多分、分かって対応しているとは思いますが、これは新しいリスクです。
だからロバストネスという観点からすると、牛肉の原材料のリスクに対するロバストネスは上がったんだけれど、今度は新しい脆弱性がクオリティコントロールの面で入っている。また、パフォーマンスも落ちているということです。
結局トレードオフをどこに持っていくかという勝負をせざるを得ないということです。これは生物もそうだし、工学システムもそうだし、企業も多分同じなんです。
(その15に続く、全23回)
北野宏明: ある一定のものに対してロバストになると、どこかに脆弱性が出るという、この対立軸があります。
もう1個は、全体的にロバストネスを上げていくと、パフォーマンスが落ちるか、ものすごくリソースを要求するか、どちらかになりますね。リソースというのは、経営資源とかエネルギーという意味です。
分かりやすいのはロバストネスと脆弱性と、ロバストネスとパフォーマンスです。例えば、車のF1は時速300kmぐらいまで出ます。しかし、オフロードは当然ながら走れません。それは、路面の変化に対して脆弱だからです。オフロードが走れるのは戦車ですが、戦車が300kmで走るということはあり得ない。ロバストだけれどパフォーマンスはないのです。それと全く同じことだと思います。
企業経営も多分同じで、吉野家で今起きていることというのは、ロバストネスを若干上げなければいけないことになったので上げた。そのかわり、どうしてもパフォーマンスは落ちる。これは多分、分かったうえでやっていると思います。
いろいろ調べたら、マルチメニューはアウトソースして、吉野家本体で全部はやっていない。新しいリスクを引き込んでいるのです。これはクオリティコントロールです。自分で今は全部をクオリティコントロールできていない、だからアウトソーシング先でクオリティコントロールをしているのです。だから、そこが食品偽装とかおかしなことをやると、吉野家はやられてしまいます。そのリスクも多分、分かって対応しているとは思いますが、これは新しいリスクです。
だからロバストネスという観点からすると、牛肉の原材料のリスクに対するロバストネスは上がったんだけれど、今度は新しい脆弱性がクオリティコントロールの面で入っている。また、パフォーマンスも落ちているということです。
結局トレードオフをどこに持っていくかという勝負をせざるを得ないということです。これは生物もそうだし、工学システムもそうだし、企業も多分同じなんです。
(その15に続く、全23回)
※この原稿は、2008年7月3日に開催したRoppongi BIZセミナー「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」を元に作成したものです。
※本セミナーで取り上げている病気や疾患などの説明および対処方法は、「ロバストネス」の観点からの仮説です。実際の治療効果は一切検証されていません。講師およびアカデミーヒルズは、いかなる治療法も推奨しておりませんし、本セミナーの内容および解釈に基づき生じる不都合や損害に対して、一切責任を負いません。病気や疾患などの治療については、信頼できる医師の診断と指示を必ず仰いでください。
関連書籍
したたかな生命
北野 宏明, 竹内 薫オーム社
「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」 インデックス
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第1章ニューヨークの大停電で、機能不全に陥ったホテルと平常通りだったホテル
2008年10月08日 (水)
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第2章「ロバストネス」の定義とは?
2008年10月16日 (木)
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第3章なぜボーイング777は、同じ機能のコンピューターを3つ搭載しているのか
2008年10月28日 (火)
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第4章 相手と連絡を取りたいとき、ロバストなコミュニケーションしてますか?
2008年11月06日 (木)
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第5章 安定して強くなるタイプと、不安定になって強くなるタイプ
2008年11月18日 (火)
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第6章 A社とB社、どちらがロバストか?
2008年12月01日 (月)
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第7章 全部に対してロバストというのはあり得ない
2008年12月15日 (月)
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第8章 我々が病気になるのは進化の必然
2009年01月26日 (月)
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第9章 低体重で生まれた子どもは、大人になると糖尿病になるかもしれない?
2009年02月13日 (金)
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第10章 「がん」を殺そうとすればするほど、「がん」は進化する
2009年03月03日 (火)
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第11章 病気を治すというのは多様性との戦いである
2009年03月10日 (火)
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第12章 糖尿病の仕組みは、ボーナスに置き換えるとよく分かる
2009年03月17日 (火)
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第13章 会社組織のロバストネスとは?
2009年03月25日 (水)
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第14章 時速300kmで走るF1カーは、オフロードを走れない
2009年04月02日 (木)
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第15章 アルバイトの個人差が味に影響しないようにする
2009年04月20日 (月)
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第16章 人間が単細胞生物だったら、生き延びられない
2009年05月11日 (月)
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第17章 地球温暖化から考える、環境変化に対するロバストネス
2009年05月28日 (木)
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第18章 今世紀の温度変化は、過去の大絶滅のときと同じくらいのレベル
2009年06月16日 (火)
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第19章 二酸化炭素も怖いが、メタンの方が影響は大きい
2009年07月03日 (金)
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第20章 地球は気候変動に対してロバスト。問題は、人間がロバストじゃないこと
2009年07月22日 (水)
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第21章 食料を原料にしたエタノールは、環境に優しくない
2009年07月23日 (木)
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第22章 エセのエコに騙されるな
2009年07月24日 (金)
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第23章 サンゴ礁が絶滅すると、海洋資源の過半数がなくなる
2009年07月27日 (月)
該当講座
大腸菌、癌細胞、ジャンボジェット機、吉野家、ルイ・ヴィトン、一見するとばらばらなこれらのものには共通点があります。それが「ロバストネス」。「頑健性」と訳されることの多い言葉ですが、その意味するところはもっとしなやかでダイナミックなものです。システム生物学から生まれたこの基本原理は取り巻く環境の幅広い....
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