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「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」

更新日 : 2009年05月28日 (木)

第17章 地球温暖化から考える、環境変化に対するロバストネス

北野宏明さん(左)、竹内薫さん(右)

北野宏明: そろそろ環境のロバストネスの話にいきましょうか。

北野宏明: これまで生物のロバストネスの話をずっとしてきましたが、環境にも同じような話が出てきています。

1カ月ほど前になりますが(2008年6月15日に)G8の科学技術大臣会合というのがありました。それのサテライトのシンポジウムで環境問題をやりまして、その後、G8参加大臣にサマリーのプレゼンテーションをしたときのネタです。

50億年くらい前から現在までの大気中の酸素濃度を見てみると、50億年前は大体0.001ぐらいだったのがだんだん増えて、今は大体20%ぐらいになっています。昔、酸素はほとんどなかったのです。27億年ぐらい前から酸素が爆発的に増えて、今の安定状態になってきました。

酸素は基本的には生物学的につくられています。シアノバクテリアというのがつくっています。オーストラリアのパースから飛行機で2時間ぐらいのところにシャークベイという場所があるのですが、そこのハメリンプールという場所に行くとストロマトライトが見られます。ストロマトライトというのは、シアノバクテリアの残骸などがベタベタくっついている岩石みたいなものです。

このシアノバクテリアが、原始の地球では酸素をつくる元になっていたようです。これが爆発的に増えて、どんどん酸素をつくることによって地球環境が激変したのです。酸素というのは、基本的には毒なんです。酸素がないとだめなのですが、「体が酸化する」とか言うでしょう。デトックスは「酸化防止」などと言うのですが、要するに酸素があるからいけないわけです。

シアノバクテリアがものすごく増えて、これが光合成をして酸素をつくった、それで大気中の酸素濃度が上がったわけです。そのころの生物は基本的には硫化硫黄であるとか、そういうものを食べて生きていたようで、酸素は重要ではなかったのです。

ところがどんどん酸素が増えて、今は(大気中の酸素濃度が)約20%です。地球環境の問題で出てきているのは、この気温ですね。平均気温が100年で見たときに確かに上がっているわけです。その原因は何かというのはいろいろあって、人為的なCO2の排出だとか言われています。

私は去年(2007年)グリーンランドに行ってきたのですが、確かに氷河が溶けていました。夏でしたからある程度は溶けるのですが、場所によっては、もう氷河というよりは、水の中に氷山が浮いているような状況になってしまっていたのです。

現地のイヌイットは、夏も氷河のところでアザラシ漁をするのですが、今は氷河が不安定なのでアザラシ漁ができない。だから彼らはビタミン類が摂れなくて、病気が多発しているのです。それは今、イヌイットで非常に大きな問題になっています。

では、我々の地球環境の安定性はどうか、どのぐらい変動にロバストだったか。現在の大気中の酸素濃度は大体20%で、確かに酸素濃度は変化しています。かつて30%までいったときもあります。CO2は、今は非常に低いのです。50億年というタイムスケールではすごく変わっているんです。

たまに、環境問題で「環境問題なんてウソだ。昔の方がCO2が高かった」という人がいますが、確かに高かったけれど50億年前に人類なんかいないんですよ。人類が出てきたのは、最近の話ですからね。それより前の話と比較されても困る。
(その18に続く、全23回)

※この原稿は、2008年7月3日に開催したRoppongi BIZセミナー「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」を元に作成したものです。

※本セミナーで取り上げている病気や疾患などの説明および対処方法は、「ロバストネス」の観点からの仮説です。実際の治療効果は一切検証されていません。講師およびアカデミーヒルズは、いかなる治療法も推奨しておりませんし、本セミナーの内容および解釈に基づき生じる不都合や損害に対して、一切責任を負いません。病気や疾患などの治療については、信頼できる医師の診断と指示を必ず仰いでください。

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北野 宏明, 竹内 薫
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進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か
北野宏明 (ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長  )
竹内薫 (作家・サイエンスライター・理学博士)

大腸菌、癌細胞、ジャンボジェット機、吉野家、ルイ・ヴィトン、一見するとばらばらなこれらのものには共通点があります。それが「ロバストネス」。「頑健性」と訳されることの多い言葉ですが、その意味するところはもっとしなやかでダイナミックなものです。システム生物学から生まれたこの基本原理は取り巻く環境の幅広い....


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