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「世界のアンドー」の発想力と実行力はどこから生まれたのか

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更新日 : 2008年02月13日 (水)

第4章 日本も変わるべきとき。新しいことに挑戦せよ

米倉誠一郎_安藤忠雄

安藤はこれまでの建築の常識を破ってきた。彼の軌跡は、まさに挑戦の歴史である。
1988 年、淡路島・本福寺の檀家総代から「世界に類のない寺をつくってくれ、世界から人が見に来るような寺にしてくれ」という依頼を受けた。安藤は、直径40 メートルもの蓮池の下に本堂をつくるプランを提案。当初、檀家衆は全員反対だったという。通常は賛成3割、反対3割、残りは保留といった感じだが、このときばかりは全員揃って見事に反対。ところが、大徳寺の高僧が「蓮という仏教の原点のなかに入るなんて夢のようだ」といった途端に全員賛成に転じたという。いかにも日本らしいエピソードである。

日本の寺では屋根が権威の象徴だが、本福寺は蓮池の下。当然、屋根はない。京都から見学に来た僧侶の集団が「屋根がない、砂利と蓮しかない」と憮然としていたらしい。このエピソードを紹介した安藤は「そろそろ日本も変わらなければいけない。新しいことに挑戦してほしい」と語る。

人間は、新しい挑戦をするときには自分の可能性をかけて取り組むもの。安藤も新しいことに挑戦するときは、非常に神経を使って設計するという。この場合は、蓮池の下に本堂を置くので、何があっても水が漏れないよう、細かく気を配ったという。この寺は1992年に完成し、1995年の阪神淡路大震災に遭った。震源地に極めて近かったが、蓮池が壊れることも水が漏れることもなかった。

誰もやらなかったことに挑戦する緊張感こそ、自らの可能性を最大限に高めるバネになる。

(文・フリーライター 太田三津子)