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ハーバード大教授が見た松坂メジャー革命:日米文化とビジネス戦略

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更新日 : 2008年04月17日 (木)

第4章 獲得選手は、松坂じゃなくてもよかった

アンドリュー・ゴードン

アンドリュー・ゴードン: 私が一番おもしろいと思ったのは、レッドソックスのビジネス組織体としての、松坂や岡島との関係です。モデレーターの米倉先生は、岡島は結果的にお買い得感があったから納得できる、でも松坂はどうして獲ろうと思ったのかと疑問をお持ちのようです。

松坂を獲ったのは、1つは勝つためです。今、レッドソックスの試合は毎回満員御礼ですが、これは当然のことではありません。私が青年だったころは、3万5000人入る球状に、1万とか1万2000人程度しか観客が入っていませんでした。満員御礼になったのは3、4年前からですが、松坂を獲得する前のシーズン(2006年)の終わりごろ、8、9月ごろからチームが崩れて悪くなりました。結局プレーオフ進出も果たせず、ファンが飽きてしまいました。

米倉誠一郎
だから、松坂獲得に乗り出した秋頃には「何か大きなことをやらないと、満席が続かなくなる」という危機感があったのです。例えば、毎回2、3千席が売れ残るとすれば、損失額が想定できます。それを賄うために、大きくみんなの注目を集めることが必要だったのです。強いチームでなければ満席になりませんから。

従って、獲得する選手は、松坂ではなく他の有名なアメリカ人の選手でもよかったのです。必要なのは、みんながすばらしいと思う選手を獲ることでした。だから比較するなら、「松坂に何億円使ったか」という金額の多寡ではなく、「松坂に100億円使ったか、他の選手に100億円使ったか」ということを考えなくてはなりません。