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ハーバード大教授が見た松坂メジャー革命:日米文化とビジネス戦略

更新日 : 2008年04月02日 (水)

第1章 松坂獲得のために作られた極秘ビデオ

アンドリュー・ゴードン

アンドリュー・ゴードン: まじめな歴史学者とみなされている人間が、なぜ松坂本を書いたのか——それを先ずお話しなければならないでしょう。レッドソックスファンの私が松坂の入団を喜んだのは当然ですが、本は偶然の重なりの産物でした。

きっかけは、ボストン日本人協会の理事長、ピーター・グリーリが私に声を掛けてくれたことでした。グリーリは、レッドソックスの松坂交渉の顧問役をしていて、松坂獲得のために、ある極秘ビデオを作っていました。私はそのビデオへの出演依頼をされたのです。

それは、レッドソックス球団が松坂を勧誘するため作っていたもので、ボストン市民がいかに松坂の入団を希望しているかをアピールするためのリクルートビデオでした。ビデオにハーバード大学の教授が出て証言すれば効果があるのではないか、ということだったのでしょう。ボストン生まれでレッドソックスファンの私は快諾しました。

松坂のレッドソックス入団が決まったとき、長年の友人である石川雅彦氏に、「松坂がレッドソックスを選んだのは、僕がラブコール・スピーチしたからだよ。何があったか、後で(情報が解禁になったら)教えてあげる」と言いました。すると石川氏は「学者とファンの立場両方を取り入れて本を書いたらどうですか」と提案を持ちかけてきました。しかも、「本を書くならプレスパスを取ってあげますよ」と。

プレスパスがあれば試合を全部見られる、これは嬉しい! という思いが初めに起こりました。けれど本を書くのであれば、普通の新聞記者が書かない角度から書かなくてはなりません。そこで歴史学者の私は、松坂の周りの背景に光を当てて、歴史的、文化的、経済的に何があったのかを明らかにすることを目的に、本を書くことにしました。


そうしてできたのが、拙著『日本人が知らない松坂メジャー革命』(朝日新書)です。

このセミナーでは、3つのことを私なりに解説したいと思います。1つは、レッドソックスが松坂を総額1億ドルで獲得した損得勘定とその背景を、2つ目は、松坂を例にしながら日米における野球の文化交流の姿を、そして3つ目は、私がおもしろいと感じた点とはまったく違う点に日本人の読者は反応したということをお話します。

関連書籍

日本人が知らない松坂メジャー革命

アンドリュー・ゴードン
朝日新聞社


該当講座

『ハーバード大教授が見た松坂メジャー革命:日米文化とビジネス戦略』
Andrew Gordon (ハーバード大学教授)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

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