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楽天イーグルス島田亨社長が語る「経営の本質」

BIZセミナー経営戦略
更新日 : 2008年06月17日 (火)

第5章 場の創造(継続的なリテンション)

島田亨

島田亨: エンターテインメントのビジネスというのは、世界観だと思います。プロ野球の時間が平均で3時間半より短くなるということはないとすれば、丸1日楽しんでもらうようにしちゃおうよ、という逆転の発想ができます。また、プロ野球はスポーツ興行という考え方だと、ファンは一部の男性ファンに限られるかもしれませんが、興行じゃなくてエンターテインメントだという概念に変えていこうと。プロ野球を見に行くんですが、大きな場としてボールパーク自体を楽しみに行くと。そうするとターゲットはファミリーになります。

企業が提供している場で、世界観というものを伝えることの重要さに、多分世界中でいち早く気がついたのがウォルト・ディズニーだと思います。アニメーション・キャラクターも必要だったけれども、フロリダやカリフォルアというところに場をつくっていくことによって、夢やファンタジーの世界を体感させるわけです。世界観を五感で感じられるよう、ディティールにこだわってお金を掛けているのがあの遊園地でしょう。

まことしやかな都市伝説があるのですが——

あのキャラクターは生きものであって世界に一人しかいないから、浦安のショーに出ているときには、アメリカでは絶対に出ていない。それをグループ全体で一元管理をしていると。そんな噂が立つぐらい、世界観を大事にしている企業だと思います。「かぶり物じゃない」と、働く従業員の人たちが信じ込んで接 客する。インターナルな従業員に対して徹底していくということはすごく大事だと思います。

県立宮城球場に30億円掛けて手を入れて、2005年のファーストシーズンを迎えました。さらに40億円かけて、2年目には自慢の球場をつくりました。

人は非日常の世界を潜在的に求めているんですね。必要なのは、「結界」なんです。多くの球場は球場の外に柵があります。遊園地もいきなり乗り物があるんじゃなくて柵があります。ここを乗り越えて、さらに次のゲートをくぐって、という楽しみがあるのです。

球場にだんだん歩いて近づいていくと、一番最初に何がおこるかというと、いろんな色が見え始めるんですね。ちょっとワクワクしはじめる。もうちょっと歩いて行くと、次はドンドン、ピャラピャラと聞こえはじめる。練習していればカキーンとか聞こえるんで、もっとワクワクしてくる。さらに近づいて行って 結界の近くまで行くと、においがするんですね。アメリカだとポップコーンのにおいが、キャラメルだったり。日本だとたこ焼きのにおいかもしれないです。

アメリカのビジネスでは、五感を通じていかにワクワクさせるかという仕掛けがなされていますが、これは日本の球場ではこれまで全く考えられてこなかったことです。

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