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「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」

更新日 : 2008年06月09日 (月)

第11章 オバマに可能性が出てきた!アメリカ社会の変化の兆し

ジェラルド・カーティス: ただ、びっくりすることにアイオワという、黒人を見たことがないと思うくらい白人の多い州、黒人人口は多分2、3%という州の党員集会で、オバマが勝ったんです。その次のニューハンプシャーの予備選挙ではヒラリーが勝ったのですが、接線でオバマが結構いいところまでいきました。「ひょっとしたら、白人社会が顔の黒い人を支持する可能性があるんだ」という黒人社会のこのときの興奮状態は、大変なものでした。

次にサウスカロライナとジョージアでの予備選挙が、1月の末と2月にありましたが、驚いたことにジョージアでは——『風と共に去りぬ』の舞台になった所ですね、ここでは黒人の80%、白人男性の45%がオバマを支持しました。これは、黒人だけじゃなくて、今までのアメリカの選挙を見てきた人たちにも信じられないことでした。

オバマは白人社会からも支持を得られるんだということで、ジョン・ルイスがヒラリーからオバマに転向を表明して、黒人のオバマ支持が爆発的なものになっていったのです。

オバマは黒人が非常に少ない州、例えばワイオミング、モンタナ、アイオワ、そういうところで強い。しかし黒人が多いニューヨーク、ニュージャージー、カリフォルニア、あるいはペンシルベニアではあまり強くありません。南部では結構いいところまでいっています。

これについて、ある人がどこかの雑誌に書いて、なるほどなと思ったのですが、黒人がいない州では、「犯罪を起こすから黒人は怖い」という経験をした人がいないのです。そういう所に住んでいる人は、オバマは立派な人だ、顔が黒いなんて関係ないと思える。偏見が多いのは、ニューヨーク、ニュージャージー、カリフォルニアなどの大都市に住んでいる白人。彼らは近くに住む貧しい黒人たちが犯罪を起こすのを目にしているから恐いんです。犯罪を起こしている のは黒人だからではなく、貧しいからですが、『黒人は怖い』というイメージはあります。

ですから、「黒人だから嫌だ」というような単純なことではなく、アメリカの社会の複雑さがここにも現れているのです。

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