記事・レポート

業魂を繋ぐ~日本の老舗、名店

「商は信なり」を体現する老舗

更新日 : 2018年06月13日 (水)

第1章 日本は世界一の「老舗大国」

老舗とは、先祖代々にわたって伝統的に事業を行う小売店や会社などのこと。時代と共に変遷する経済・政治・社会文化・技術の恩恵を最適化し、持続的な価値創造を通じて顧客から信頼・信用を得、同時に、事業効率と生産性の向上も切れ目なく実現する。この一連の務めを、世代を越えて連綿と受け継いできた老舗には、現代のビジネスに役立つ極意が数多く隠されています。今回のブックトークでは、そんな“業魂”を繋いできた日本の老舗を考察した本を集めてみました。

<講師>
澁川雅俊(ライブラリー・フェロー)
※本文は、六本木ライブラリーのメンバーイベント『アペリティフ・ブックトーク 第44回 業魂を繋ぐ~日本の老舗、名店』(2018年3月23日開催)のスピーチ原稿をもとに再構成しています。


世界最古の老舗は?

澁川雅俊: 顧客第一主義を遵守し、多くの危機にも怯むことなく進み続け、持続的な価値創造により事業経営を継続し、その傍ら、後継者の育成にも努める。事業の承継者もまた、先達から手渡された哲学や理念、有形無形の資産を大切にしながら、大胆に手段を変えて時代の荒波を乗り切り、次代にバトンを渡していく。こうした老舗の姿は、まさに「温故知新」「不易流行」といった警句を体現していると言えるでしょう。

日本には300年以上にわたり、事業を継続しているお店や企業が2,000以上あります。ちなみに、第2位のドイツは600店(社)ですから、これは世界でもダントツの数です。ならば、世界で最も古い老舗はどこか?

それは、寺社・城郭建設や文化財建造物の復元・修復を行う金剛組(現・高松コンストラクショングループ)です。創業はなんと578年。これは、大化の改新(646年)や古事記の成立(712年)より前のこと。金剛組は、大阪の四天王寺建立のため、聖徳太子によって百済より招かれた3人の宮大工のうちのひとり、金剛重光によって創業されました。以降、幾多の危機を乗り越え、1400年以上にわたり事業を継承してきた軌跡については、『創業一四〇〇年~世界最古の会社に受け継がれる一六の教え』〔金剛利隆/ダイヤモンド社〕が詳しく伝えています。


 
800年以上の歴史を持つ老舗

澁川雅俊: 金剛組以降、平安時代後期の12世紀まで、つまり今から800年以上前に創業した老舗は20あります。業種は様々ありますが、下表を見ると旅館業(温泉宿)が最も多く、創業1,300年を超える温泉旅館が2、3、4位を占めています。

老舗大国である日本は、世界有数の‘温泉大国’でもありますが、その効果も古くから認知されていたようです。古事記や日本書紀、万葉集にもしばしば温泉に関する記述が登場するなど、湯治文化が浸透していたことがわかります。そう考えれば、この大自然の恩恵の周辺に事業が生まれていったのは必然だったのでしょう。


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該当講座


【アペリティフ・ブックトーク 第44回】
業魂を繋ぐ~日本の老舗、名店 (19:15~20:45)
【アペリティフ・ブックトーク 第44回】 業魂を繋ぐ~日本の老舗、名店 (19:15~20:45)

ライブラリーフェロー・澁川雅俊が、さまざまな本を取り上げ、世界を読み解く「アペリティフ・ブックトーク」。
44回目となる今回は、様々な業種における“老舗”をテーマに、古くより続く事業を今に継ぐ仕組み・その展開を、関連書籍と共に紐解きます。


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