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撮って、残して、味わって。

写真家・川島小鳥が語る「写真を撮る理由」

更新日 : 2016年04月27日 (水)

第7章 写真の過去・現在・未来


 
こだわりの原点

古川誠: 小鳥さんは、常に1枚の写真、1冊の写真集にかける熱量が圧倒的です。そのパワーはどこから来るのでしょう?

川島小鳥: 高校生の頃、学校の図書館で南の島や高い山脈などが載った写真集を見ましたが、そこに映っていた世界が自分には関係ないものだと感じて、面白くなかった。それが、同じ図書館にあった荒木経惟さんなどの写真集を見ると、そこにはごく普通の日常があり、写真に対するイメージがガラリと変わりました。そこから写真に惹かれていったのと同時に、1つの世界がつくり出せる写真集というものに魅力を感じるようになった。だから、誰かをガッカリさせるような写真集はつくりたくないです。

古川誠: それが情熱の原点になっているわけですね。原点と言えば、最初の写真集『BABY BABY』など過去の写真は、今の小鳥さんの目にはどう映るのでしょう? 

川島小鳥: 純粋に「いい写真だなあ」と思います。今はもう絶対に撮れないものだから。

古川誠: あの時の、あの女の子はもう撮れないから?

川島小鳥: もちろん、それもありますし、あの時の自分もいないから。

古川誠: たしかに、写真のいいところは、被写体となる人だけでなく、あの頃の自分を残せることだと思います。写真は言葉がないからこそ、撮った時の様子や感情が自分の中に深く刻み込まれます。時間軸で見れば、あの頃の自分と今の自分はつながっているわけですが、写真にすることで、時間の流れが一瞬だけ明確にきりとられる。その感覚がとてもいいですよね。
 
写真の「残り方」

古川誠: それならば、未来はどうでしょう? 例えば、『明星』は10年後、どのような残り方をしているのでしょう?

川島小鳥: 古本屋などで、200円ぐらいで売られていてほしい。僕も古い映画の本や写真集などを、そのような形で手にしていたから。その本を手にすることで、『明星』がつくられた時代に思いを馳せてほしいですね。

古川誠: 10年後、小鳥さんが地方の古本屋さんに行き、自分の写真集が200円で売られているのを見つけたら、嬉しい?

川島小鳥: とても嬉しいです。

古川誠: 雑誌の場合は、捨てられてしまうことが多い。僕としては、捨てられないように一生懸命つくっているのですが……。

川島小鳥: 桜の美学ですか?

古川誠: 桜の美学?

川島小鳥: 必ず散る運命。けれども、ある時が来たら、再び美しく咲く。

古川誠: たしかに!(会場笑)月刊誌は1カ月ごとに発売されますが、しかし、1カ月だけ“咲く”ような情報を載せているつもりは毛頭ありません。10年後、誰かに「2014年のオズマガジンを持っています」と言われたら、とても嬉しい。そのような残り方をしてほしいですね。

川島小鳥: しますよ、必ず。

古川誠: 小鳥さんの話を聞いているうちに、僕も同じだなと思いました。


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撮って、残して、味わって。すると何が見えますか?
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写真集「未来ちゃん」後、待望の最新写真集を発売する川島さんと、オズマガジン編集長が、写真を「残すこと、味わうこと」について語ります。


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