記事・レポート

日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ
~ケロッグ経営大学院 モーニングセッションより

地球規模で「消費の未来」を見通す

更新日 : 2015年10月07日 (水)

第3章 「木・金・土」でつくられた第1号店


 
無個性だから個性が生まれる

鈴木啓: 1980年、無印良品は家庭用品9品目、食品31品目の計40品目でスタートし、その後、衣料品など少しずつ品目を増やしていきました。とはいえ、当初は西友や西武百貨店などの各コーナーに商品がバラバラに置かれていたそうです。

ある日、それらを一堂に集めてみたらどうなるか、という話が立ち上がりました。実際に集めてみると、一つひとつは非常にシンプルで地味ながらも、無個性の商品が集まることで不思議な個性が生まれました。そこで専門店をつくることになり、1983年6月、西友の一事業部のまま、東京・青山に第1号店をオープンしました。ちなみに同所は現在、「Found MUJI」という新しいコンセプトのフラッグシップストアに生まれ変わっています。

第1号店の設計は現在も協力いただいているデザイナー、杉本貴志さんにお願いしました。無印良品が掲げるコンセプトを店舗でも実現しようと、素材は「木・金・土」にこだわりました。木とは、地方の古民家で使われていた古い木材。金とは、錆びかかった古い鉄板。土とは、欠けて使い物にならなくなった古いレンガ。こうした時間の流れを感じさせる素材を、そのままの形で活用しました。商品を並べる什器も、味噌や醤油を作る際に使われていた古い樽などを揃え、にぎやかな市場のようなイメージでまとめました。

オープン当初から大きな話題となり、日本人のお客様はもちろん、海外のクリエイターやバイヤーの方々も日本を訪れた際、必ず立ち寄る場所となりました。当時は、米軍のラジオ放送FEN(Far East Network、現在のAmerican Forces Network/AFN)でCMを流していたそうで、そのおかげもあったのかもしれません。いずれにしろ、当社にとってはこの第1号店が大きな転機となり、後の海外進出のきっかけになったと言われています。



小さな文具から大きな家まで

鈴木啓: 現在、無印良品では、衣服、生活雑貨、食品、家具など7,500アイテム以上を販売しています。その中には、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のパーマネントコレクションに選ばれた壁掛式CDプレーヤー、2013年末にTV番組の「レトルトカレー選手権」でトップ5のうち4つを占めた各種のレトルトカレーもあります。

ユニークな商品の1つが、2008年に発売した「その次があるバスタオル」。バスタオルとして使えなくなったら、バスマットや雑巾として使うことができます。普通のタオルはハサミを入れると端がポロポロとほつれてしまいますが、このバスタオルは縦横に「あぜ道」を入れているため、そうなりません。現在はあぜ道も細くなり、さらに色々な使い方ができる形へと進化しています。

1995年からは、キャンプ場の運営も始めています。エコやアウトドアといった言葉が一般的ではなかった頃に、「そのままの自然を、そのまま楽しむ」というコンセプトを掲げ、自然との共生、地域社会との共生を進めてきました。実はこの事業は開始当初から赤字が続いていましたが、我々にとってはコンセプトを表現する大切な事業であるため、地道に続けてきました。最近になり、ようやく黒字転換できるところまできています。

「最良の生活者」に貢献するという想いを追求し、小さな文具、食品、衣類、家具、自転車、キャンプ場と手掛けるものが広がっていく中で、最後にたどり着いたのは、生活の大きな器となる「家」でした。2003年に住宅事業をスタートし、現在までの累計契約棟数は約12,000棟を超えています。

こちらも無印良品らしく、安全で、自由かつシンプルに、末永く自分らしく暮らせるよう、当社ならではのこだわりを詰め込んでいます。省エネ性が高いこと、ライフステージに合わせて間取りが自由に変えられることはもちろん、強度の高い集成材を使い、かつ高層建築と同様の構造であるため、国土交通省の超長期住宅先導的モデル事業、いわゆる「200年住宅」にも認定されています。さらに、直近ではUR都市機構と一緒に「団地リノベーションプロジェクト」も始めています。


該当講座


NO PHOTO
日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ ~MUJIのグローバル展開に学ぶ~

鈴木 啓(株式会社 良品計画 取締役・執行役員/生活雑貨部長)8年半にわたる海外事業の第一線でのご経験を交えながら、良品計画のグローバル展開についてご紹介いただきます。


日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ
~ケロッグ経営大学院 モーニングセッションより
 インデックス