記事・レポート

テクノロジーとアートの融合が拓くクリエーションの未来

真鍋大度×徳井直生が語るメディアアートとスタートアップ

更新日 : 2014年09月17日 (水)

第8章 人間の体とテクノロジー、音楽、映像などをリンクさせる


 
Perfumeとの出会い

徳井直生: 大度君が2004年にICCで発表した「riot please」は、本当に衝撃的でした。聴覚で認識する「音波」と、触覚で認識する「振動波」を分離して体感させる作品でした。人間の耳には聞こえないほどの超低周波を隔離された部屋で体験するもので、「怖がりの人や、心臓の弱い人は遠慮してほしい」と言われ、非常呼び出しのブザーまで渡されました(笑)。

真鍋大度: その頃から、人間の体とテクノロジー、音楽、映像などをリンクさせるような作品をつくることに興味がありました。同時に、より多くの人に作品を届けたいという意識が強くなり、そうしたときにYouTubeが登場した。さらに、エンターテインメント系の方向にも可能性を感じ、Perfumeさんに行き着いたわけです。紹介を経て、数年前からプロジェクトに参加しています。

たとえば、普通の男性がギーク(geek)なことをやるよりも、かわいい女性がギークなことをやったほうが断然楽しい。彼女たちは、他のアーティストとは一線を画すライブを行っていましたし、その内容も僕の活動と親和性がありました。

徳井直生: 最初はどのようにアプローチしましたか?

真鍋大度: 「顔に電気を流したい」と言い、即NGが出ました(笑)。仕切り直そうとした2008年頃にAR(拡張現実)などが流行しはじめ、パソコンにウェブカムがつきはじめた。そこで、「PerfumeのCDジャケットをウェブカムに向けると、画面に3人の映像が流れる」といったソフトのプロトタイプをつくってみましたが、結局うまくいきませんでした。

いま思えば、アイデアは結構良かったけれど、不特定多数の人に届けるための環境が整っていなかった。提案する時期が早すぎたのかもしれません。その後、デバイスの進化と歩調を合わせるように、少しずつ思い描いたアイデアが実現できるようになりました。

ギリギリまで粘る

徳井直生: 大度君のすごい点は、プロジェクトを行うたびに優秀な人を集めてチームを編成し、全体をまとめながら斬新な作品をつくり出していること。僕は全部1人でつくりたいタイプで、チーム活動が苦手です。

真鍋大度: 実は最近、映像も音楽もすべて1人でプログラミングしたプロジェクトがありますが、やはり少し違和感がありました。仲間と一緒に責任感をもって取り組み、化学反応を起こしていくほうが断然楽しいと思いましたね。

徳井直生: 大度君は2013年11月に放送されたTBS系「情熱大陸」で取り上げられていましたが、ナレーションにあった「ギリギリまで粘る」は、僕も実感として知っています。以前、作品発表の前日、急に電話がかかってきて、「徳井君、明日12時までによろしく」といったこともありました(笑)。

真鍋大度: 自主的なプロジェクトは、自分たちで目標を設定し、思いついたことは全部やろうとするため、ゴールは見えづらいものの、時間にはあまり制限はありません。反対に、コミッションの場合は、最初からある程度ゴールが設定されているため、限られた時間や範囲のなかでいかに面白いことを突き詰めるかが勝負になる。粘り方にも少し違いがあると思います。いずれにしても、いつもギリギリまで粘ります。

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SWITCH presents メディアアートとスタートアップ

音楽、アート、映像といったエンタテインメントの世界を、さまざまな分野のテクノロジーを導入して変化させるディレクションで注目されるRhizomatiks真鍋大度とメディアアートを軸に米シリコンバレーにあるシードアクセラレーター500 Startupsでアプリの開発を行うなどスタートアップ業界にも進出するQosmo徳井直生。
2人の対話から、近未来へのネクストステップが見えてくるはず。