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テクノロジーとアートの融合が拓くクリエーションの未来

真鍋大度×徳井直生が語るメディアアートとスタートアップ

更新日 : 2014年09月11日 (木)

第6章 動画コミュニケーションの新しい形


 
シリコンバレーでスタートアップ

徳井直生: 2013年春に「unda」(ウンダ/http://www.unda.me/)という、モバイル向けの新しいビデオメッセージアプリを制作しました。テキストや写真を使ったメールよりも少ないアクションで、10秒ほどの動画を撮影・送信・視聴することができます。電話を利用していると、話している間はお互いの時間が拘束されますが、undaはメールと同じようにいつでも好きなときに見ることができ、テキストや写真よりも感情が伝わりやすい。そのような新しいコミュニケーションの形を提案するものとして開発しました。

undaは、Qosmoとしての仕事ではなく、シリアルアントレプレナーであるメキシコ人のオスカー・ヤッセル・ノリエガ氏と、もう1人のデザイナーと一緒に開発しました。実は、オスカーと出会うきっかけをくれたのは大度君でした。

真鍋大度: 以前、任天堂のWiiリモコンを使ってDJやVJを行うツールの映像をYouTubeにアップしたところ、それを見たオスカーからメールが届きました。その後、僕を介してオスカーとQosmoの澤井君が出会い、徳井君につながったわけです。

徳井直生: 2012年10月にオスカーからundaのアイデアを聞き、プロトタイプをつくり、2013年5月にシリコンバレーのシードアクセラレーター(※編注)である〈500 Startups〉から出資を受け、渡米して会社とサービスを立ち上げました。現在は日本で開発チームをつくり、活動しています。

真鍋大度: 会場には、アプリなどを開発してシリコンバレーで出資を受けたいと考えている人もいると思いますので、出資を受けるまでに何が起こったのかをもう少し詳しく。

徳井直生: 2012年末から、メキシコと日本を行き来しながら制作し、どうにか形が固まったのが2013年3月頃です。そこからたくさんの投資家にメールを送り、紹介などを経て様々な人に会ううちに、500 Startupsのスタッフと知り合いました。同じタイミングで500 Startupsのトップがメキシコに来ていることを知り、運良くランチをとることができました。

オスカーと一緒にundaについて説明したところ、「面白い。来週、シリコンバレーに来い」と言われました。慌てて準備を整え、すぐにシリコンバレーに飛び、出資を受けるために急いでオスカーと会社を設立し、サービスを開始しました。通常、500 Startupsへ参加するためには、きちんとした書類審査やプレゼンを行いますが、なぜか一切なかった。そうした幸運もありながら、本当にすべてが急展開で進みました。

真鍋大度: 幸運だとしても、色々な人にアプローチしていたからこそ実現できたわけですし、アイデアも素晴らしかったからだと思います。

徳井直生: 近年は先進国以外でも通信環境が向上していますし、twitterのショートビデオ共有アプリ「Vine」のような動画コミュニケーションツールも増えてきています。人の縁も大切でしたが、環境的な追い風もあったように思いますね。

※編注
シードアクセラレーター
将来性のあるビジネスのシード(種)をもつスタートアップに対して、小規模の投資を行うだけでなく、実績のあるメンターによる助言や、有力な投資家へのプレゼンテーション機会の提供など、スタートアップの成長促進を支援する。通常、支援は数カ月程度の短期間で行われ、法人化後の株式取得により利益を得る仕組みとなっている。

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SWITCH presents メディアアートとスタートアップ

音楽、アート、映像といったエンタテインメントの世界を、さまざまな分野のテクノロジーを導入して変化させるディレクションで注目されるRhizomatiks真鍋大度とメディアアートを軸に米シリコンバレーにあるシードアクセラレーター500 Startupsでアプリの開発を行うなどスタートアップ業界にも進出するQosmo徳井直生。
2人の対話から、近未来へのネクストステップが見えてくるはず。