記事・レポート

「まちの保育園」が実践する、コミュニティデザイン

地域ぐるみで子どもを育てる

建築・デザインマーケティング・PRキャリア・人
更新日 : 2014年02月03日 (月)

第4章 保育園と地域を結びつける「ベーカリーカフェ」


 
まちぐるみの保育を実現する

松本理寿輝: 従来の保育園はセキュリティが重視されていたため、地域の方々からも、高い垣根の向こう側にある場所、といったイメージをもたれがちです。最初に「まちぐるみの保育」というコンセプトを決めたとき、そうした気持ちの垣根を下げるための空間が必要になると考えました。そこで、気軽に訪れやすく、ゆったりと滞在しやすい空間として、カフェがあるとステキだなと考えました。

計画を進めるうえで、地元で評判の高いベーカリー「パーラー江古田」のことを知り、伺ったところ、地域の人たちがごく自然に、リラックスした雰囲気の中でつながり合っているようなお店のあり方に魅了され、また、店主の原田さんの思想にも大きな刺激を受けました。原田さんに「一緒にやりませんか」と相談したところ、「パーラー江古田の2店舗目ではなく、保育園とともにある新しい店であればつくれる」とあり、「まちのパーラー」を、保育園と同じ敷地内にオープンすることになりました。

入口では、こだわりのおいしいパンを販売しており、その奥にカフェスペースがあります。決して広いスペースではありませんが、毎日本当にたくさんの人が訪れ、日夜、カフェでの時間を楽しんでおられます。パンを買いに気軽に立ち寄る方も大勢います。原田さんやスタッフのそうした店づくりは、さすがだなと思います。

カフェが交流の場となる

松本理寿輝: 「まちのパーラー」は、朝7時半に開店します。登園前の母親と園児が立ち寄り、朝食を食べてから登園することもあります。午前中は、地域の様々な方が来られますが、幼稚園児や小学生をもつ母親たちがブランチを楽しむ、ママサロン的な雰囲気ともなります。午後から夕方にかけては、祖父母世代のお客様も増えはじめ、お迎えにきた母親なども交え、幅広い世代のための場となっています。夜になると、子どもを迎えに行き、帰りに家族で食事をとる家庭もあります。

18時以降はバールのようなかたちになり、おいしい食事と自然派ワインを提供しており、男性客が増えます。時にお父様どうしの交流の場ともなっています。「保育園に飲みに行く」と説明すると、奥様にも理解していただきやすいそうです(笑)。

オープンから2年が経ったいま、「まちのパーラー」は多くの人にとって憩いの場となり、保育園と地域との接点をつくってくれています。提供しているパンや料理は本当においしいので、お近くに来られた際はぜひお立ち寄りください。


該当講座

シリーズ「街・人を変えるソーシャルデザイン」
“地域ぐるみで子どもを育てる”
松本理寿輝 (まちの保育園・こども園 代表 / まちの研究所株式会社 代表取締役 )
古田秘馬 (プロジェクトデザイナー/株式会社umari代表)

松本理寿輝(ナチュラルスマイルジャパン代表取締役)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
2011年に小竹向原に開園した「まちの保育園」は、地域の人が利用できるベーカリーやカフェ、ギャラリーが併設され、従来の保育園のイメージとは異なる開放的な雰囲気。世代を超えた対話の中で、地域ぐるみで子どもを育てることを目指しています。今こそ、どのような幼児教育が必要なのか本質的に考え、街・地域の中で人々が対話し、大人も子どもも学びあえる社会のあり方を考えます。


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