記事・レポート
みうらじゅんの物集め紀行
それでも、やっぱり、これが好き♡
更新日 : 2013年11月19日
(火)
第6章 ゴムヘビハンターの戦い
ヘビの呼ぶ声が聞こえた
みうらじゅん: 僕が小学生だった昭和30年代後半から40年代にかけて、ゴムヘビの大ブームが起こりました。以来、二度とブームは来ていませんが。いまから数年前でしょうか、僕は江ノ島の参道を歩いていました。みやげ物屋がたくさんあるので、それまで何度となく歩いていましたが、気がつかなかった。しかし、貝細工オンリーのお店の奥まった壁のところに、いたのです。
そのみやげ物屋では、他のモノは買っていましたが、僕には聞こえなかった。いままでは、心を開いてなかったからなのかな。数年前、店の前を通った時に、「シャー、シャー」という声が聞こえました。声がする方向をふっと見たら、とぐろを巻いた蛇が「最後ですよ! あなただけですよ!」と言っていた。デッドストックだったのです。
針金でつけられた値札に、2,500円と書いてありました。冗談にも程があると思いました。子どもには高すぎる、大人にも高すぎる、誰が安すぎるのだと。「オレだな」と、その時も強く思いました。
一応、気持ちとしては蛇ですから、頭の後ろをそっと手でつまみながら、何も考えずにレジの前に出します。こうした場面で、うっかり「領収書お願いします」と言ってしまう時があります。「2,500円、ゴムヘビ代として」と書かれるので、経費として落ちないケースがたくさんあります。
ゴムヘビはワールドワイド
みうらじゅん: 大概、ゴムヘビはお寺の参道などに生息しています。ゴムヘビハンターとしては、そうしたところに行っては、声を聞き分ける。見つけ次第、値段には目もくれず、スピーディーに捕獲します。これまでにずいぶん集まりましたが、先日数えてみたら、100匹ほど集まっていました。
世界中の蛇が掲載されている、分厚い蛇の図鑑も買いました。それで自分のゴムヘビたちの正式名を判別しました。1週間ほどかけて行った大事業でしたが、適当に縞模様などが塗ってあるわけではなく、きちんとした元ネタがあると分かり、「ゴムヘビはワールドワイドなんだ!」という驚きがありました。
そのように思っていかないと、果てしなくむなしい戦いだったのです。同じ蛇を何匹も買ってしまうという間違いも、何度となく繰り返していますから。
みうらじゅんの物集め紀行 インデックス
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第1章 欲しいモノは見た瞬間にゲット!!
2013年11月11日 (月)
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第2章 「スーベニール・ゴッド」のルール
2013年11月12日 (火)
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第3章 誰にとっても嬉しくない「いやげ物」
2013年11月14日 (木)
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第4章 レジに運ぶ、葛藤を乗り越えて
2013年11月15日 (金)
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第5章 人生とは自問自答の繰り返し
2013年11月18日 (月)
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第6章 ゴムヘビハンターの戦い
2013年11月19日 (火)
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第7章 深遠なる「カスハガ」の世界
2013年11月21日 (木)
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第8章 何の得にもならないことが、少しは人の役に立つ
2013年11月22日 (金)
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