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自分らしく輝く

白木夏子、安藤美冬 ーー 多様性の先に見えた新しい起業のカタチ

更新日 : 2013年07月10日 (水)

第7章 周りから応援される人になろう!

安藤美冬(株式会社スプリー代表)

 
スモールビジネスから始まった

安藤美冬: 『世界と、いっしょに輝く』の中では、資金がショートする寸前になった話をはじめ、様々な困難が描かれていますね。

白木夏子: 実はオーダーメイドジュエリーの制作販売は、会社に所属していたときからすでに始めていました。最初はコンフリクトフリー・ダイヤモンド(※編注)を使った婚約指輪と結婚指輪を作り、その後は友人の紹介や口コミを通じて制作依頼が入るようになりました。最初は本当にスモールビジネスから始まったのです。

けれども起業した当初は、口コミ以外の販路がウェブショップのみでほとんど注文が入らず、すぐに資金が底をつきました。スタッフは私ひとりで、素材の調達からデザイン、営業、販売まですべてをこなしていました。経営や営業は未経験、大きな取引先もないため、代表取締役の肩書きはあっても社会的信用はゼロです。当時はリーマンショックの直後でしたから、資金を出してくれる銀行は皆無でした。何もない所から始まり、周囲の人たちに出資していただき、何とかスタートできたというのが実情です。

安藤美冬: それでも、夏子さんのように高い志を持っている人が自分の周りにいたら、何だか無性に応援したくなります。“応援される人”になることも、起業において大切な要素かもしれませんね。

起業家たるもの、大ホラ吹きであれ

安藤美冬: 私がまだ会社に所属していたとき、フリーランスのカメラマンから「30歳ぐらいになると、自分の夢と現在の給料とを天秤にかけて、夢を諦めてしまう人が多い」という話を聞きました。そのひと言が私の反骨心を刺激し、「ならば私が先陣を切ろう」と、独立を決意したのです。自分が旗振り役になれば、多くの人に希望を与えることができると。盛大な勘違いをしていたわけです。

白木夏子: けれども、起業する上ではとても大切なことですよね。以前、何かの記事に「起業家たるもの、大ホラ吹きであれ」と書いてありました。大ホラを吹いて、実際にそれを実現していくのが真の起業家だと記されていて、妙に納得してしまいました。

安藤美冬: エシカルジュエリーは、同業者から「絶対にうまくいかない」と言われていた、リスクの高い領域ですよね。その道にあえて進もうと思った情熱は、どこからやってきたのでしょうか。

白木夏子: 新しいことを始めるときは、成功するかどうかなどまったく分かりません。ましてや、未知の領域に踏み出すとなれば、参考となる前例さえなく、どれほどのリスクがあるのかも分かりません。だから、盛大な勘違いと揺るぎない自信が必要になります。正々堂々と胸を張って道を進んでいけば、その姿が多くの人にとって希望となり、自然と応援されるようになる。当時は無意識ながらも、そうした思いがあったのかもしれませんね。

私がエシカルジュエリーの会社を立ち上げたとき、業界の方々は「絶対に失敗する」と言いましたが、私は「必ず成功する」と言い続けました。最初は私も大ホラ吹きだったのです。しかし、まだ道半ばではありますが、現時点では事業として小さな成功を収めることができていると感じています。大ホラ吹きと高い志を持つことは、表裏一体だと思うのです。

※編注 コンフリクトフリー・ダイヤモンド(conflict-free diamond)
紛争や児童労働、環境破壊などに関与しないダイヤモンド。公的機関において、採掘から購入者に届くまでの経路が明確であると認証されたものを指す。