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これからの時代に求められる学びのスタイル:茂木健一郎×波頭亮

私塾がコモディティ化しない人材をつくる

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更新日 : 2012年11月09日 (金)

第1章 「私塾」は人材の陳腐化に対する自衛手段

今、日本で「人材の陳腐化」が進んでいます。高度成長期に機能した教育システムが、現代に適さなくなっているのです。このままでは人材も商品のようにコモディティ化し、価格競争に巻き込まれてしまいます。生き残るためには、「突き抜ける人材」になるしかありません。どうすればなれるのかを、茂木氏と波頭氏に伺います。

講師:茂木健一郎(脳科学者)、波頭亮(経営コンサルタント)

茂木健一郎(脳科学者)
茂木健一郎(脳科学者)

茂木健一郎: 日本の問題は構造的なもので、一人ひとりの努力だけではどうすることもできないと思います。

その1つが、教育上の構造問題です。日本の大学は、明治期に欧米の文明を輸入して翻訳し、それを国内に行き渡らせる「文明の配電盤」としてつくられました。その中で官僚組織の養成機関として東大なども出てきたのですが、これが今のグローバルな人材リソース競争の中で全く機能していないんです。

例えば、日本で一流といわれている大学に入った人でも、「自分の選んだトピックについて英語で自由にしゃべる」という経験を、大学に入った時点で100分もしていないと思います。これは日本の英語教育の構造的な問題です。それを示す典型的な例があります。英語が苦手だったある中学生が、ロックバンドを好きになって、A4何枚にもわたって思いのたけを英語で綴ったそうです。そのとき、彼の英語学習においては画期的なことが起こったわけですが、評点は0点だったというのです。なぜかというと、文法ミス、スペルミスがたくさんあったから。

僕も英語でブログを書きますけれど、「お前の英語は文法的におかしい」とかゴチャゴチャ言ってくるのは日本人だけです。ネイティブはそんなこと気にしません。正しいか正しくないかなんて関係ないんです、おもしろいことを言うか言わないかですよ。

いくらTOEICができても、海外じゃあ全然通用しません。英語のおもしろい本っていっぱいあるでしょう? それを読めばいいんです。大学1年の段階で英語の本を10冊ぐらい読んで、4年間で英語の専門書を100冊ぐらい読むようになれば、日本の英語の風景はきっと変わります。

それから、偏差値も日本の教育上の構造問題です。ハーバードやイエールに偏差値システムなんてありません。アメリカの大学は、偏差値で予想できるような入試はしていないからです。確かにSATで高得点を取っている学生は多いですが、その一方で、何か1つの分野でポテンシャルを示した人も入学しています。入試が多様なんです。

日本の人材が陳腐化しているのは構造的な問題で、一人ひとりの努力の問題ではありません。ということは、我々ができることは2つです。1つは、日本の教育を構造的に変えるか、もう1つは、一人ひとりが自衛して文科省がつくっている日本の教育から外れるかです。僕は最近、後者を勧めています。だから「私塾」なんです。

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茂木健一郎 (脳科学者)
波頭亮 (経営コンサルタント)

茂木 健一郎(脳科学者)
波頭 亮(経営コンサルタント)
いま求められるコモディティ化しない人材を育成するためには、これまでの標準的な人材を生んできた教育システムでは限界があります。本セミナーでは、「今までのやり方と古い常識にとらわれずに自分で考え、自分で行動することができる」人材を育てる一つの試みとして、私塾の可能性に注目します。新しい時代に即した私塾とは?茂木氏と波頭氏が議論します。


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