記事・レポート
無料で学べる「オープンエデュケーション」がもたらす人材革命
~ウェブで教育の機会が世界に開かれる意味:飯吉透×石倉洋子~
キャリア・人ビジネススキル政治・経済・国際
更新日 : 2012年08月03日
(金)
第2章 オープンエデュケーションを構成する3つの要素
飯吉透: オープンエデュケーションには、「オープン・テクノロジー」と「オープン・コンテンツ」と「オープン・ナレッジ」の3つの構成要素があると僕は考えています。
【オープン・テクノロジー】
オープン・テクノロジーというのは、簡単に言うと、教育ツールです。例えば、MITが中心になってつくった「Sakai」というLearning Management System(ラーニング・マネジメント・システム)。これはオンラインで授業を行うためのプラットフォームや、学生のポートフォリオなどを総合的に管理できるツールで、オープンソースでつくられています。学生が質問すると答えてくれるサポートなどは有料ですが、ツール自体は無料で利用できます。
【オープン・コンテンツ】
オープン・コンテンツは教材で、オープンエデュケーションのおそらく8、9割を占める巨大な領域です。一番有名なのは、MITが2001年に構想を立ち上げた「オープンコースウェア」で、2,000以上の講義の教材や動画が無料で公開されています。これが1つのモデルになり、世界中に普及して、いまや100以上の大学が同様の取り組みをしています。http://ocw.mit.edu/index.htm
これに対してカーネギーメロン大学は、「MITのオープンコースウェアは素晴らしい。でも一方的に配信しているだけで、あとはユーザーが勝手に使ってください、というモデルだけでは教育は変わらない。もっと効率的に、深く、確実に学ばせる方法があるはずだ」と考え、「オープン・ラーニング・イニシアティブ(OLI)」というプロジェクトを後発で始めました。
MITが多数の講義の教材やビデオを公開しているのに対し、カーネギーメロン大学は現在でも12講義と、非常に数を限定しています。ただしその12講義は、学習システムに人工知能的な仕組みを導入するなどし、誰でも最後まで自習で学べるようになっています。MITの場合は途中でドロップアウトしようが、最初のページだけ見て帰ろうがお構いなしでしたので、これは大きな違いです。しかも学習の進み具合や理解度が“見える化”されるようになっていて、自分の学びの達成度や弱点がわかるようになっています。
実は当初、カーネギーメロン大学の先生たちは「うちの学生はレベルが高いから、こんな一般向けの学習コンテンツは役立たない」と考えていました。でも、改良を重ねるうちに教材の質がどんどん良くなってくると、先生たちは、授業前に学生にオープン・ラーニング・イニシアティブのシステムを使わせて、その結果を見て「8割の生徒が理解できていない部分を授業で教えよう。みんなが理解している部分は授業ではやらない」というように、それまで以上に高いレベルの授業ができるようになったのです。
オープン・コンテンツの分野では、オープン・テキストブックという、教科書の無料配布も進んでいます。中でも一番大きなプロジェクトは「コネクションズ」です http://cnx.org/。これはライス大学のリチャード・バラニック教授が、他の大学の先生たちと物理の教科書をつくっているうちに「ワードでやり取りするのは面倒くさい。今書いているものをそのまま見られるプラットフォームにしよう」と考えてつくったものだそうです。それがどんどん広まり、いまや世界中の先生が協力しています。
先生たちは自分が得意なところを章や節のモジュール単位で書き、使う側は自分が必要とするモジュールを自由にリミックスできます。これを無料でダウンロードすることもできれば、有料ですが安価でオンデマンド印刷サービスを使って製本することもできます。
このようなプラットフォームはオープンなものだけでなく、セミオープンやコマーシャルなものもあります。例えば、アップルのiTunes UやYouTubeのエデュケーションチャンネル、世界のイノベーターたちがプレゼンをするTEDなどが挙げられます。TEDのプレゼンは全てネットで見られるし、ボランティアが翻訳してくれているので、日本語の字幕がつているものもあります。 http://www.ted.com/
【オープン・ナレッジ】
オープン・ナレッジは一番難しい部分です。でもあまのじゃくな自分は、そういうところをやろうと思い、カーネギー財団にいた頃に取り組んで、溺れました(笑)。
【オープン・テクノロジー】
オープン・テクノロジーというのは、簡単に言うと、教育ツールです。例えば、MITが中心になってつくった「Sakai」というLearning Management System(ラーニング・マネジメント・システム)。これはオンラインで授業を行うためのプラットフォームや、学生のポートフォリオなどを総合的に管理できるツールで、オープンソースでつくられています。学生が質問すると答えてくれるサポートなどは有料ですが、ツール自体は無料で利用できます。
【オープン・コンテンツ】
オープン・コンテンツは教材で、オープンエデュケーションのおそらく8、9割を占める巨大な領域です。一番有名なのは、MITが2001年に構想を立ち上げた「オープンコースウェア」で、2,000以上の講義の教材や動画が無料で公開されています。これが1つのモデルになり、世界中に普及して、いまや100以上の大学が同様の取り組みをしています。http://ocw.mit.edu/index.htm
これに対してカーネギーメロン大学は、「MITのオープンコースウェアは素晴らしい。でも一方的に配信しているだけで、あとはユーザーが勝手に使ってください、というモデルだけでは教育は変わらない。もっと効率的に、深く、確実に学ばせる方法があるはずだ」と考え、「オープン・ラーニング・イニシアティブ(OLI)」というプロジェクトを後発で始めました。
MITが多数の講義の教材やビデオを公開しているのに対し、カーネギーメロン大学は現在でも12講義と、非常に数を限定しています。ただしその12講義は、学習システムに人工知能的な仕組みを導入するなどし、誰でも最後まで自習で学べるようになっています。MITの場合は途中でドロップアウトしようが、最初のページだけ見て帰ろうがお構いなしでしたので、これは大きな違いです。しかも学習の進み具合や理解度が“見える化”されるようになっていて、自分の学びの達成度や弱点がわかるようになっています。
実は当初、カーネギーメロン大学の先生たちは「うちの学生はレベルが高いから、こんな一般向けの学習コンテンツは役立たない」と考えていました。でも、改良を重ねるうちに教材の質がどんどん良くなってくると、先生たちは、授業前に学生にオープン・ラーニング・イニシアティブのシステムを使わせて、その結果を見て「8割の生徒が理解できていない部分を授業で教えよう。みんなが理解している部分は授業ではやらない」というように、それまで以上に高いレベルの授業ができるようになったのです。
オープン・コンテンツの分野では、オープン・テキストブックという、教科書の無料配布も進んでいます。中でも一番大きなプロジェクトは「コネクションズ」です http://cnx.org/。これはライス大学のリチャード・バラニック教授が、他の大学の先生たちと物理の教科書をつくっているうちに「ワードでやり取りするのは面倒くさい。今書いているものをそのまま見られるプラットフォームにしよう」と考えてつくったものだそうです。それがどんどん広まり、いまや世界中の先生が協力しています。
先生たちは自分が得意なところを章や節のモジュール単位で書き、使う側は自分が必要とするモジュールを自由にリミックスできます。これを無料でダウンロードすることもできれば、有料ですが安価でオンデマンド印刷サービスを使って製本することもできます。
このようなプラットフォームはオープンなものだけでなく、セミオープンやコマーシャルなものもあります。例えば、アップルのiTunes UやYouTubeのエデュケーションチャンネル、世界のイノベーターたちがプレゼンをするTEDなどが挙げられます。TEDのプレゼンは全てネットで見られるし、ボランティアが翻訳してくれているので、日本語の字幕がつているものもあります。 http://www.ted.com/
【オープン・ナレッジ】
オープン・ナレッジは一番難しい部分です。でもあまのじゃくな自分は、そういうところをやろうと思い、カーネギー財団にいた頃に取り組んで、溺れました(笑)。
関連書籍
『ウェブで学ぶ~オープンエデュケーションと知の革命~』
梅田望夫,飯吉透筑摩書房
『グローバルキャリア~ユニークな自分のみつけ方~』
石倉洋子東洋経済新報社
『世界級キャリアのつくり方』
黒川清,石倉洋子東洋経済新報社
無料で学べる「オープンエデュケーション」がもたらす人材革命 インデックス
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第1章 一人の教育"バカ"の情熱が世界を変える
2012年08月02日 (木)
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第2章 オープンエデュケーションを構成する3つの要素
2012年08月03日 (金)
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第3章 ナレッジは暗黙知のままではオープンにできない
2012年08月06日 (月)
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第4章 高等教育もロングテール化が必要~日本の大学の崩壊は近い~
2012年08月07日 (火)
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第5章 カリキュラムも教材もないオンライン大学が登場
2012年08月09日 (木)
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第6章 ウェブで人生を切り開け! 昨日と同じ自分でいるなら明日はない
2012年08月10日 (金)
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第7章 やりたいことがあれば、英語の壁は越えられる
2012年08月20日 (月)
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第8章 「ちょっとやってみようかな」という軽い気持ちでOK
2012年08月21日 (火)
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第9章 21世紀をサバイバルするには「学び続ける力」が必要
2012年08月23日 (木)
該当講座
オープンエデュケーションがもたらす人材革命
~ウェブによって世界中の人々に教育の機会が開かれる意味~
飯吉 透(京都大学 高等教育研究開発推進センター 教授)
石倉 洋子(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)
全世界に広がるオープンエデュケーションを巡る動きを解説し、これからの教育、個人のキャリア構築がどのように影響を受けるのかを考察します。また、グローバル人材の育成が急務と言われる中、日本人はオープンエデュケーションを具体的にどのように活用していけばいいのか、議論します。
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