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今だからできる失われた20年からの大転換

~日本のGDPを3%上げる、企業と人を成長させる新しい発想~

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更新日 : 2012年01月30日 (月)

第4章 Amazonに学ぶ、情報プラットフォームのつくり方

石黒不二代氏

石黒不二代: ウェブを企業活動の中核に据え、情報プラットフォームをつくることが非常に大切です。これを私たちネットイヤーグループでは「webセントリックマーケティング」と呼んでいます。どういう意味かというと、ホームページやEC、ブログなどの自社メディアを徹底的につくり込み、ソーシャルメディアはもちろん、新聞やテレビ、展示会などの他社メディアとも融合させる。こうしてできたプラットフォームを店舗や営業などのアナログデータとも連結させて、総合的なデジタルプラットフォームをつくるということです。

なぜ中核にwebを置くかというと、webは測れるからです。これまで測れるメディアといえばテレビの視聴率と新聞の購買数ぐらい。しかも売上に直結するものではありませんでした。webではさまざまな解析ができるので、その中でKPI(key performance indicator)やKGI(key goal indicator)を設けながら活動していけば、企業の成長につながります。

具体的に、Amazonを例に「情報プラットフォームとは何か、どうすれば構築できるのか」をお話しします。Amazonは小売で、しかも扱っているのは本です。本が読まれなくなったと言われている中で、Amazonは本を扱っているんです。今は本だけでなく、電化製品から靴までいろいろなものを売っています。つまりAmazonは小売であり、百貨店なんです。百貨店も今、非常に苦しい産業ですよね。Amazonはこんなに足元の悪いところで闘って、何兆円と売り上げています。

「Amazonはリアル店舗ではなく、インターネットの本屋さんだから調子がいいんだ。我々とは業態が違う」と、みなさんおっしゃいます。そうです、その通りです。ネットなら1日24時間売れるし、町内だけでなく世界中の人に売れるし、棚や店舗の物理的な面積にも制限されないし、すぐに決済ができますから。じゃあみんながインターネットの本屋さんになればいいかというと、なったところでAmazonには勝てませんよね。Amazonは数あるインターネットの本屋さんの中でも、ずば抜けていい成績を残しています。それはなぜか、という点が重要です。

Amazonの本当のウリは、小売ではなく、自社メディアとしての情報プラットフォームを徹底的につくっていることです。その上でソーシャルを利用しているのです。皆さんがブログにAmazonのパーツを置いておき、そこから誰かがAmazonのサイトにいけばキックバックがもらえますよね。こうして一般の人のサイトも販売店にしているわけです。サイトではレビューも見られるし、おすすめ商品も分かります。プラットフォームが充実しているからこそ、みんなが販売店になってくれて、販路が増えるのです。お客さんが本を見つけるのではなく、本がお客さんを見つけてくれる。それがAmazonです。

Amazonは最初「どこよりも安く本を買えます」という戦略で登場しましたが、途中で戦略を変えました。「どこよりも安くではなく、安く売っているところがあれば、自分のプラットフォームに加えてしまおう」と。パートナーとして参加してもらえば、価格競争をする必要はないし、マージンをとれるし、倉庫代は要らないし、発送もしなくていい。いいことずくめです。繰り返しますが、みんなが参加してくれるのは、Amazonが最初に自社メディアを徹底的につくり込んで、いいプラットフォームにしたからです。

「Amazonはいいよな。webだから身軽だし、コストが掛からない」と思いがちですが、そうではありません。Amazonにはカスタマーセンターもあれば、オペレーションセンターも倉庫もあります。朝注文すると、その日のうちに品物が届きますよね。Amazonはwebとリアルなシステムをつなげて、どこよりも早い物流システムを何千億円とかけてつくったのです。

自社メディアをつくり込み、ソーシャルメディアを活用・融合し、webにとどまらず配送センターやカスタマーセンターともつなぎ、サプライチェーン・マネジメントまできちんと行う——Amazonは単なるECサイトではなく、完璧な情報プラットフォームをつくったのです。

この情報プラットフォームの裏では、顧客情報や商品情報、そしてwebの解析が常に行われています。そのとき「意味あるデータ分析をすること」が非常に重要です。例えば「200万PVが増えた」というと、初心者のマーケッターは「増えたからよかった。たくさんの人が見てくれた」と思ってしまいがちです。しかし、もしかするとサイトの構造をめちゃめちゃにしてしまったから、ユーザーは迷子になって、関係ないところをいっぱい見たのかもしれません。だから「200万PVが増えた」という無機質な事実だけでは、いいか悪いかは分かりません。

データ分析する際は「どんなユーザーがどういう意図で流入して」「どういう行動をして」「自分たちが立てたシナリオとどのぐらいマッチしているか」「それがどのぐらいのスパンで行われているか」など、データという事実を知見に変えていくことが必要です。

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石黒不二代 (ネットイヤーグループ株式会社 代表取締役社長兼CEO)

石黒 不二代(ネットイヤーグループCEO)
インターネットの普及でグローバル化が進み、更にビジネス環境の変化が激しくなった時代に、日本企業と個人にとっていま求められる経営戦略と教育、そしてマインドセットとは何か?いま最も元気な女性起業家の一人といわれる石黒氏に伺います。


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