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若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方

~『告白』『悪人』『東のエデン』はこうして生まれた~

BIZセミナーキャリア・人文化
更新日 : 2011年12月01日 (木)

第3章 映画『告白』大ヒットの舞台裏

川村元気氏

川村元気: プロダクションについては、後で石井さんが語ってくれると思いますので飛ばします(笑)。ポストプロダクションでは編集、CG加工、音楽づくりなどで映画を仕上げていきます。それと平行してポスター、チラシ、予告編、テレビCMなどの制作や、タイアップやパフリシティを取ったり、書店回りをしたり、インターネットキャンペーンやイベントを宣伝部と組んで展開したりします。宣伝戦略は脚本づくりやキャスティングの段階で練り込んでおく必要があります。出来上がったものに後から対処療法的に宣伝を考えても、あまり上手くいきません。企画を組み上げながら宣伝を考えることはとても重要だと思います。

『告白』のポスターをつくるとき、デザイナーに「最近、映画館のポスターは顔写真ばっかりだから、文字しか載っていないのがあったら目立つよね」という話をしました。この映画の売りは “あのベストセラーを中島哲也監督と松たか子さんと37人の13歳が告白する”というところなので、文字要素が面白い。だったらそれをポスターにしようと。キーカラーはダークな映画の世界を表すブルーではなく、作品の衝撃性やセンセーショナリズムを表すショッキングピンクにしました。とはいえ、かましだけではダメなので、公開直前は松たか子さんだけに極端に寄ったストイックな顔のビジュアルにして、作品の世界に近づけたグラフィックで臨むというコントラストでいきました。

ポスター同様、劇場で流す予告編とテレビCMも重要です。映画館で映像を見るのと、テレビで流れる映像を見るのとでは観客の見方が全然違うため、それぞれの媒体特性に合った作り方をする必要があります。『告白』の場合、映画館で流す予告編はクラシック音楽とテロップで映画の持つストイックさを追求しました。一方、テレビCMは「ドカーン」とか「なんてね」という原作にはないポップなセリフを敢えて入れて、耳に引っかかるようにしました。

こうして企画段階から仕込んだ宣伝を大量に露出した結果、『告白』は興行収入38億超のヒットになりました。でも、その後もプロデューサーの仕事は続きます。DVDのパッケージデザインや特典を考えたり、グッズ販売、テレビオンエア、海外公開などもやります。『告白』はアカデミー賞の外国語映画部門のベスト9まで残ったこともあり、海外セールスは順調に進んでほぼ全世界で配給されることが決まりました。

いろいろお話ししましたが、こういうことを全部とりまとめていくのが映画プロデューサーの仕事です。
最後に、次に取り組んでいる作品のテーマの話をしたいと思います。

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該当講座

若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方

~『告白』『悪人』『東のエデン』はこうして生まれた~

若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方
川村元気 (小説家)
石井朋彦 (プロダクション・アイジー プロデューサー)
佐々木紀彦 (株式会社ニューズピックス 取締役)

川村元気 (東宝株式会社 映画企画部 プロデューサー)
石井朋彦 (プロダクション・アイジー プロデューサー)
各界で活躍するイノベーティブな人物をゲストにお招きする『東洋経済インタラクティブセミナーシリーズ』。今回は、『告白』『悪人』『東のエデン』など次々にヒットを生み出し、日本映画界を代表する若手プロデューサーとして注目のお二人にお話を伺います。


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