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料理を「花嫁修行」から「趣味」へと変えた ABC Cooking Studio

~創立者が見つけた「食を学ぶ」本当の楽しさとは~

BIZセミナーマーケティング・PR経営戦略キャリア・人
更新日 : 2011年04月11日 (月)

第8章 必要なものは、パズルが埋まるように出来上がる

田中洋氏(右)志村なるみ(左)

田中洋: それでは秘訣の3つ目について伺います。藤枝市で調理道具を販売されていたときに、料理教室という可能性に気付かれた。その「気付き」について、詳しく教えていただけますか。

志村なるみ: 私が最初に採用した女性は家庭料理の達人でした。彼女が料理教室で作るレシピはとてもおいしくて好評だったのです。そうこうしているうちに、販売よりも料理教室のほうが圧倒的に人気になってしまいました。そのとき「人が集まる」ということは、「力」なんだと思いました。サークル活動のような教室で料理が作れるという話に、あれよあれよと人が集まってきました。宣伝もしていないわけですから、口コミの威力に私たちが仰天したくらいです。

そしてたぶん、世の中が必要としてくれていた事業だったから、こうして拡大できたのでしょうね。当時の藤枝市では、平日は会社に行って家に帰り、週末には静岡市までお買い物に行くというのが平均的な生活パターンでした。まだ景気もよく、私たちの世代の“OL”はたくさんお金を持っていました。でも、カラオケボックスも携帯電話もなく、使う場所がなかったのです。

そんな時代背景をうけてか、当時の私たちの教室にはたくさんの人が集まりました。私たちの料理教室には、みんなが笑顔で、とても華やいで料理を作るという光景があったのです。本当に笑い声でいっぱいでした。1日に何百人も生徒さんが来るのですから、これを活かさない手はありません。その人数のふくらみ方に背中を押されたおかげで、止まらずにここまで来られたとも言えますね。

今、振り返って思うと、何か特別な能力を持ったメンバーが集まってスタートしたわけではありません。必要なものは後押しされて、パズルが埋まるようにできてきました。無理押ししてでも事業を成功させるような、そういう手法ではなかったのです。市場に受け入れられないものというのは、やはり「要らないから存在しなくてもよい」と消費者に決められています。ですから、自然の力や周りの企業の応援度といったものこそ大事なのだと思います。

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該当講座

料理を「花嫁修行」から「趣味」へと変えた ABC Cooking Studio

~創業者が見つけた「食を学ぶ」本当の楽しさとは~

料理を「花嫁修行」から「趣味」へと変えた ABC Cooking Studio
志村なるみ (株式会社ABC Holdings 取締役/株式会社ABC Cooking Studio 創立者)
田中洋 (中央大学大学院ビジネススクール 教授 )

志村 なるみ(㈱ABC Holdings 取締役)
田中 洋(中央大学大学院ビジネススクール教授)
成熟市場において新たな価値を提案することでブランディングの成功を果たした企業からゲスト講師をお迎えする2回シリーズ。第1回目の本講座では、ポップなカラーに全面ガラス張りのスタジオに象徴されるABC Cooking Stduio の創立者、志村なるみ氏をお招きします。既にある市場の中で新たな女性向けのビジネスを拡大してきたプロセスについて伺うことで、成熟した市場においてブランドを構築する思考法について学びます。


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