記事・レポート
マーケティング・クリエイティブ最前線「宝島社の女性誌マーケティング」
~出版の概念を覆すマーケティング戦略で部数はまだ伸びる~
更新日 : 2011年01月21日
(金)
第2章 「マーケティング会議」の導入で部数が伸びた
桜田圭子: 2007年春「マーケティング会議」がスタートしました。出版社には編集会議はあっても、マーケティング会議を開いているところはほとんどないと思います。会議のメンバーはマーケティングにかかわるすべてのセクションおよび社長で、書店営業、広告営業、宣伝、広報、WEBの編集部などが含まれます。各雑誌について月に1回、その雑誌についてのありとあらゆることが話し合われます。
この会議でトップから提案されたのが「一番誌戦略」でした。雑誌の売上は、広告の売上と販売の売上(雑誌の販売部数)で成り立っていますが、2007年のころ「広告の市況はこれから厳しくなる」とトップが予測しました。そこで、雑誌を各ジャンルで一番の部数に伸ばしていかないと広告が入ってこなくなるだろう、ということで「一番誌戦略」が発動されたのです。
「マーケティング会議」では、いわゆるマーケティングの4Pで雑誌を商品としてとらえ、いかに完成度を高めていくかについてみんなでアイデアを出し合っています。ここで重要なのは、「雑誌を読まない人」をターゲットに設定していることです。読者のことはよく見えていると思うのですが、雑誌を読まない方が一体どんな生活をして、どんな購買行動をしているのかということについて考えることは少ないと思うのです。雑誌を読まない方への認知を広げるために、普段雑誌を手に取らず、また雑誌名もご存知ないような方に、その雑誌を知ってもらうためにはどうすればいいのかということを考えます。
まず「Product」ですが、弊社は2004年から、ブランドとコラボレーションした付録、「ブランドアイテム」を毎号つけています。なぜ付録ではなくブランドアイテムと呼ぶかといいますと、弊社では、ブランドアイテムは雑誌の連載の1つ、コンテンツの一部と考えています。
そのため各編集部が独自に企画、デザイン、制作を行っています。例えば同じブランドでも、コンサバな読者が多い雑誌ならモノトーンで、派手好きな読者が多い雑誌ならピンクなど、各雑誌によってアイテムやデザイン、色などを変えています。各編集部がつくっているからこそ、読者ニーズを把握して商品を企画できているのです。
そして、ブランドさんのショップでも扱っていないオリジナルの商品であるということもポイントです。また、月刊誌なので1カ月間しか店頭にないという限定感も人気の秘訣だと分析しています。
次に「表紙の制作」です。弊社では表紙を「商品のパッケージ」ととらえ、マーケティング会議で議論しています。例えばコンビニエンスストアや書店の棚で売られたときに、表紙は上から12センチ程度までしか見えません。そのため、セールスポイントやブランドアイテムの写真を上から12センチ以内に収めるようにしています。これは日ごろ書店やコンビニエンスストアを回っている営業からのアイデアで実施に至ったものです。
次に「定価の見直し」です。『InRed』は2007年の8月まで880円で販売していました。高定価にもかかわらず12万部を発行していたのですが、「定価がちょっと高すぎるのでは?」という意見が会議で出ました。そこで、価格と需要は相関関係にあるという理論、価格弾力性という公式をもとに、「650円にすれば3倍売れる」という試算を弾き出して、次の号から650円にしました。すると見事に3倍の36万部に売り上げが伸びました。
しかし、ただ安ければいいというものではなく、コストパフォーマンスを意識して値づけしています。通常、雑誌の定価は毎月同じで、基本的には原価の積み上げと部数の掛け合わせで定価を決めている会社さんが多いと思います。かつては弊社もそうでした。しかしそれだと部数が少ない雑誌ほど高定価になってしまいます。それは読者の価格感覚を無視しているのではないかということで、最近は、雑誌とブランドアイテムのセットで一体いくらぐらいの価値があるか、毎号、読者の感じるお買い得感で価格設定を行っています。同じ雑誌であっても、毎号定価を変えていて、『sweet(スウィート)』の場合は大きい時で、150円ぐらいの幅があります。
この会議でトップから提案されたのが「一番誌戦略」でした。雑誌の売上は、広告の売上と販売の売上(雑誌の販売部数)で成り立っていますが、2007年のころ「広告の市況はこれから厳しくなる」とトップが予測しました。そこで、雑誌を各ジャンルで一番の部数に伸ばしていかないと広告が入ってこなくなるだろう、ということで「一番誌戦略」が発動されたのです。
「マーケティング会議」では、いわゆるマーケティングの4Pで雑誌を商品としてとらえ、いかに完成度を高めていくかについてみんなでアイデアを出し合っています。ここで重要なのは、「雑誌を読まない人」をターゲットに設定していることです。読者のことはよく見えていると思うのですが、雑誌を読まない方が一体どんな生活をして、どんな購買行動をしているのかということについて考えることは少ないと思うのです。雑誌を読まない方への認知を広げるために、普段雑誌を手に取らず、また雑誌名もご存知ないような方に、その雑誌を知ってもらうためにはどうすればいいのかということを考えます。
まず「Product」ですが、弊社は2004年から、ブランドとコラボレーションした付録、「ブランドアイテム」を毎号つけています。なぜ付録ではなくブランドアイテムと呼ぶかといいますと、弊社では、ブランドアイテムは雑誌の連載の1つ、コンテンツの一部と考えています。
そのため各編集部が独自に企画、デザイン、制作を行っています。例えば同じブランドでも、コンサバな読者が多い雑誌ならモノトーンで、派手好きな読者が多い雑誌ならピンクなど、各雑誌によってアイテムやデザイン、色などを変えています。各編集部がつくっているからこそ、読者ニーズを把握して商品を企画できているのです。
そして、ブランドさんのショップでも扱っていないオリジナルの商品であるということもポイントです。また、月刊誌なので1カ月間しか店頭にないという限定感も人気の秘訣だと分析しています。
次に「表紙の制作」です。弊社では表紙を「商品のパッケージ」ととらえ、マーケティング会議で議論しています。例えばコンビニエンスストアや書店の棚で売られたときに、表紙は上から12センチ程度までしか見えません。そのため、セールスポイントやブランドアイテムの写真を上から12センチ以内に収めるようにしています。これは日ごろ書店やコンビニエンスストアを回っている営業からのアイデアで実施に至ったものです。
次に「定価の見直し」です。『InRed』は2007年の8月まで880円で販売していました。高定価にもかかわらず12万部を発行していたのですが、「定価がちょっと高すぎるのでは?」という意見が会議で出ました。そこで、価格と需要は相関関係にあるという理論、価格弾力性という公式をもとに、「650円にすれば3倍売れる」という試算を弾き出して、次の号から650円にしました。すると見事に3倍の36万部に売り上げが伸びました。
しかし、ただ安ければいいというものではなく、コストパフォーマンスを意識して値づけしています。通常、雑誌の定価は毎月同じで、基本的には原価の積み上げと部数の掛け合わせで定価を決めている会社さんが多いと思います。かつては弊社もそうでした。しかしそれだと部数が少ない雑誌ほど高定価になってしまいます。それは読者の価格感覚を無視しているのではないかということで、最近は、雑誌とブランドアイテムのセットで一体いくらぐらいの価値があるか、毎号、読者の感じるお買い得感で価格設定を行っています。同じ雑誌であっても、毎号定価を変えていて、『sweet(スウィート)』の場合は大きい時で、150円ぐらいの幅があります。
マーケティング・クリエイティブ最前線「宝島社の女性誌マーケティング」 インデックス
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第1章 マーケティングの重要性に気づいた3つの出来事
2011年01月20日 (木)
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第2章 「マーケティング会議」の導入で部数が伸びた
2011年01月21日 (金)
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第3章 プロモーションのアイデアはこうして生み出す
2011年01月24日 (月)
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第4章 電子書籍より、約58,000店の出版流通を活かす
2011年01月25日 (火)
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第5章 企画のポイントは「期待以上&一言」
2011年01月26日 (水)
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第6章 マーケティングの3大ポイント
2011年01月27日 (木)
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第7章 会議は発言自由、即断即決、持ち越しナシ
2011年01月28日 (金)
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第8章 みんなが持っている物は“ブランド”か?
2011年01月31日 (月)
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第9章 「ぜひ、まねてください」
2011年02月01日 (火)
該当講座
宝島社の女性誌マーケティング
~出版の概念を覆すマーケティング戦略で部数はまだ伸びる~
桜田 圭子(㈱宝島社 マーケティング本部広報課長)
西川 英彦(法政大学教授)
今回のマーケティング・クリエイティブ最前線では、新しい発想で快進を続けて注目を集めている宝島社にクローズ・アップします。
付録付雑誌だけでなく、美顔器を書店で販売して大ヒットさせるなど、従来の常識を覆すマーケティング戦略で注目を集める同社の発想の源にあるものとは?進化を続ける宝島社の好調の秘密に迫ります。
"最前線"講座
マーケティング・PR 経営戦略
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