記事・レポート

内田和成の『論点思考』
~問題設定の技術~

東洋経済提携講座より

ビジネススキルキャリア・人
更新日 : 2010年10月27日 (水)

第7章 妻はなぜ機嫌が悪いのか

内田和成氏

内田和成: では、どうやって論点に近づくのか。一番目のやり方は、当たりを付けるということです。極めていい加減な、感覚的な言葉ですが、そういうのが上手な人っていますよね。きちんとした分析もしないのに、問題に気付いてしまうようなことです。もちろん、当たりを付けるためにはある程度経験が必要になります。ビジネスパーソン一年生がいきなりできるとは思いませんが、仕事をやっていく中で、そういう経験や勘はだんだん蓄積されていきます。それを少しブレークダウンしてみましょう。

実は、私生活においては、皆さんものすごく当たりを付けているのです。どういうことかというと、例えば私が家に帰って、妻の機嫌が悪かったとしましょう。そのときにビジネスでやるように、ではちょっとアンケート調査をしますということで、「あなたはどうして機嫌が悪いんですか。一番はこれ、二番はこれ、イエス・ノーで答えてください」と質問したところで、機嫌が直ると思いますか? これはもう火に油を注ぐということで、皆さんそんな馬鹿なことはしませんね。ところが、仕事になるとなぜかやってしまうのです。何か問題があるとなると、全部分析してしまう。だいたい妻の機嫌が悪いときは、大事な結婚記念日を忘れているとか、髪型を変えたのに気付かなかったとか。私なんか鈍い方なので、そういう失敗を何十年も繰り返して(笑)。でも、だんだん勘はできてくるので、そのうち「あ、今日はどうも髪型の問題じゃなさそうだ」ということで、「子どもの問題かもしれない」「近所づきあいの問題かもしれない」あるいは「嫁姑の問題かもしれない」と、当たりを付けられるようになるわけです。

仕事でも同じように経験や勘で当たりを付けていく方が、論点に早く到達できるのではないでしょうか。具体的なやり方はいろいろあるのですが、例えば、私が子どもの頃にやっていた番組で、20回質問できて、その質問によって答えに到達するというクイズ番組がありました。「それは物ですか、物じゃありませんか」「男ですか、女ですか」とイエス・ノーで答える質問をし、だんだん答えを狭めていって、最後に「それはイチゴのショートケーキですね」と答えるようなものです。そういう切り分けの仕方は結構有効です。
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該当講座

内田和成の『論点思考』

~BCG流 問題設定の技術~

内田和成の『論点思考』
内田和成 (早稲田大学 名誉教授)

内田 和成(早稲田大学ビジネススクール教授)
今回講師としてお越しいただく内田氏は、ボストンコンサルティンググループの前日本代表であり、「世界でもっとも有力なコンサルタントのトップ25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出されるなど、世界を舞台に活躍されています。
話題の近著『論点思考』を元に、内田氏から直接、実践的な「問題設定の技術」について学びます。


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