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旨い、美味しい !?

読みたい本が見つかる、「カフェブレイク・ブックトーク」

更新日 : 2010年09月13日 (月)

第2章 食生活の歴史

六本木ライブラリー カフェブレイクブックトーク 紹介書籍

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旨さを科学する

澁川雅俊: 『おいしさの科学事典』(山野善正総編集、相島鉄郎他編、03年朝倉書店)は、事典ですから、読み物ではありませんが、旨さを感ずる私たちの生理と心理の両側面から、食べ物の認知、味、臭いあるいは香り、歯触り・咀嚼・嚥下と食感、色彩などの観点から科学的に確認されていることを体系的に俯瞰しています。

そうした観点からは少しずれますが、『火の賜物-ヒトは料理で進化した』(R・ランガム著、依田卓巳訳、10年NTT出版)もまた旨さを科学する本の一つでしょう。私たちはいま普段に、焼く・蒸す・揚げるなどしてものを食べています。この本では、火を使うことによってものを旨く・美味しく食べる方法の発明が人の脳を大きくさせたことを生物人類学の観点から論じています。なお『食の文化史-生体-民族学的素描』(J・バロー著、山内昶訳、97年筑摩書房)は、基本的には後で食の歴史を書いていますが、これにも火の支配による調理法の発明が食生活の大革命であったと論じています。

旨さを地球規模でとらえる

旨い、そして滋味豊かなものを食べたいは、古来の人びとの欲望です。

原書名が“FOOD, the history of taste”(食べ物、味の歴史)である『世界食事の歴史-先史から現代まで』(P・フリードマン編、南直人・山辺規子監訳、09年東洋書林)は、その欲望を地球規模で追いかけています。すなわち、「『おいしい』の来し方と行方を求めて——生命を支えることから楽しみへ、あるいは採集から高度な流通へ……文明の発生・発達に応じて、人はどこで何を食べ、そしてどのように嗜好を変えていったのか? 食材、調理、流通、産業などの多角的な視点で、古今東西の食文化の変遷をたどる。」(帯解題)としています。なおこの本は、書名に「図説」と銘打ってもいいもので、全編にわたり食に関する図版を多数掲載しており、大部な本にしては、楽しくブラウズできるものに仕上がっています。また本書は古代からの美食に関する書物にも言及しており、同時に美食本研究書でもあります。

しかしこの本は中国の食文化にはまるまる1章割かれていますが、私たち日本人の食生活については、数行の記述と、<ヌーヴェル・キュイジーヌ>の紹介に、もろみで食べる小大根の写真しか載っていません。

この他にライブラリーには、先にも紹介した『食の文化史-生体-民族学的素描』(J・バロー著、山内昶訳、97年筑摩書房)や『ヨ−ロッパの食文化(M・モンタナ−リ著、山辺規子訳、99年平凡社)』があります。

旨さはもともと民族単位のもの

とは言え、最近の世界的な和食ブームを味方にして、食のナショナリズムを高揚させるのは筋違いで、以上の本の著者たちがそうしたように、私たちも日本独自の食文化を誇るべきでしょう。

それにはさしずめ『日本食生活史(復刊・縮刷)』(渡辺実著、07年吉川弘文館)がいいでしょう。有史以前から現代まで、日本列島に生まれ、去っていった人びとの食生活をつぶさに調べています。すなわち、食材の種類や生産法、調理法・調味料・食器などはもとより、各時代の食の移り変わりや、伝統を創りそれを支えてきた人たちにも焦点をあてるなど、食全般についての歴史です。古代以来のさまざまな文献を漁って、実に詳しく調査し、それに基づいて総合的に論述しています。それはまた「記紀」以来の日本の記述文化の深さをも物語っています。

なおこの本は1964年が初版で、最近日本の歴史文化のセレクションに選ばれて、復刊されたものですが、最近のものでは、『日本人はなにを食べてきたか』(原田信男著、10年角川ソフィア文庫)があります。これも縄文時代から現代の食生活の展開を辿っていますが、とりわけ米食とそれを中心とした料理や文化と家族・地域社会・国といった社会システムとの関連を探り、明治以降の洋食の導入から現代のハンバーグをはじめ、さまざまなファスト・フードによる食生活の変化を考察し、流れるように語っています。

また日本人の食べものと食べ方の詳細については、『たべもの起源事典』(岡田哲著、03年東京堂出版) や『日本料理語源集〔新版〕』(中村幸平著、04年旭屋出版)のような本もあります。

食文化とは、詮ずるところ一定の自然環境や社会環境の下で、何をどう料理して食べるかという欲求を満たす方法を基盤としてできあがった習慣、あるいは風習です。ですから基本的には、民族とか、地域とかの単位で形成されるものです。それがイタリア料理、フランス料理、スペイン料理、メキシコ料理、エジプト料理、インド料理などと称されるものになって存在しています。それらの一つひとつについてそれぞれの本が少なからずありますが、挙げていたら切りがありませんので、ここでは日本と文化的に最も近い関係にあった中国の食の歴史についての本を紹介することにします。

『図説 中国 食の文化誌』(王仁湘著、鈴木博訳、07年原書房)は、日本よりさらに千年も前から彼の国を彩ってきた食文化を食材・調理・食器・作法・食通を通じて解き明かしています。この種の本では図版は重要な役割を果たします。この本は「図説」と銘打ち、300点以上の図版が施されていますが、あまり成功していません。図版があまり鮮明ではないのです。

ただこの本では、食を味覚だけではなく、食事に対する心がけについても言及しています。それは、初ものを食べ、神仏に供えるなどして、自然を味わうこと。冬には温かいもの、夏には冷たいものを食べ、季節に順応すること。美食にこだわらず健康な心身を求めるように努めること。家族のさまざまな行事には、肉親の情を楽しめるよう家族揃って食事すること。またそれを隣近所の人たちとも楽しめるように心がけること。重要な歳時の食事を大切にする。等などですが、私たちもかつては、そういうことを大切にしていました。

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