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「水が足りない」~ビジネス戦略と地球環境~

朝日新聞GLOBE創刊1周年記念パネルディスカッション

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更新日 : 2010年07月15日 (木)

第6章 水ビジネスで国際競争力に勝つかぎは「システム」

~パネルディスカッション【水ビジネスと国家戦略、環境とのかかわりは?】~

桑原洋氏

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桑原洋: 今年(2009年)の1月、民間企業が集まって「海外水循環システム協議会」を発足しました。狙いは政府と協力した国際貢献と、日本企業の海外への進出機会の拡大です。

協議会には現在、商社をはじめ、日本の優れた技術、膜や特殊なポンプなどのコンポーネンツを提供する会社、システム構築を行う会社など40社が参加しています。それから、金融機関も参加しています。当面大きい事業になりそうなのが海水の淡水化、そして水循環再利用などです。

最も強く“水”を要求している国は、最も低開発の国々で、ODAなどを活用して支援しようと考えています。一方、“水循環”の需要があるのは主にお金のある国で、水の再利用によって効率化し、水不足を解消しようという背景があります。

では、日本はどういう事業を展開するのか。1つは技術が優れているといわれる部品、コンポーネンツの事業で、これは大いに世界に売ったらいいと我々も国も大いに支援しています。

ただ、国際競争力の根本はシステムです。この点でいかに勝つか、いい技術開発ができるかが大きな問題です。大学はこうしたことに全く力がないし、かつて海外でプラント輸出をしていたメーカーも、最近は衰退しているので、再構築が必要です。

今後は、いかに日本がシステムで幅を利かせていけるかが中心になりますが、問題がいくつかあります。1つは市場の調査です。まずは外務省、経産省の力を借りながら、その国、あるいは地域の水に対する基本的な中長期計画を探り、事業の展開をしていこうというのが1つです。

また、システムは単に納めるだけではなく、資金をどうやって調達するか、長期にわたっていかにエネルギーコストを減らすか、いかに運転コストを減らすかなど、全体的な価格競争を高める努力をしなければいけません。

資金面では、20年、30年寝せる資金を投入することにあまり慣れておらず、短期回収を図りたい方々ばかりです。ですから資金を寝せることに対して、我々がどういうリターンを提供できるかというのが非常に重要になります。

これは、システムの競争力を高めない限り解決しないことで、楽観論と悲観論が交差しているのが昨今の状況です。

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該当講座

朝日新聞GLOBE創刊1周年記念
「水が足りない」 - ビジネス戦略と地球環境 -
前原誠司 (国土交通相)
加藤千洋 (朝日新聞編集委員)
望月晴文 (経済産業事務次官)
桑原洋 (日立製作所特別顧問/海外水循環システム協議会理事長)
竹村真一 (京都造形芸術大学教授 / Earth Literacy Program代表)
梶原みずほ (朝日新聞GLOBE記者)

世界的に不足している「水」について、ビジネスと環境の視点から議論します。


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