記事・レポート
勝間和代はなぜ国際貢献に尽力するのか?
身の回り1.5メートルで感じるグローバル・アジェンダ
注目のオピニオン
更新日 : 2010年06月01日
(火)
第7章 支援にオーバーコミットしてはいけない
勝間和代: 「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」というのは、平和や貧困、環境、人権といったものについて「2015年までにこういう目標を達成しましょう」と、2000年に国連が宣言したもので、8つのゴールを掲げました。一番大きなゴールは、10億人もいる極度の貧困の撲滅。ほかには初等教育の完全普及、ジェンダーの平等、乳幼児の死亡率の削減、妊産婦の健康、エイズその他の削減、環境の持続可能性確保、そしてグローバル・パートナーシップの推進です。
ゴールは数字のターゲットが決まっていて、それに向かってそれぞれの国ができることを協力していくことをコミットしているはずなのですが、これが進んでいません。国連の協議というのは「総論賛成で、各論は実行されない」ということになりがちで、なかなか実行が難しいのです。
先ほど、国民・市民の考え方が政治に鏡として反映されるとお話ししましたが、「私たちが貧困を撲滅するんだ。そのためにはODAをある程度あげるべきだ」と考えない限り、こうした目標は達成できないことになります。
一方、「ミレニアム・ビレッジ」というプロジェクトがあります。どういうものか説明すると、『貧困の終焉』を著したジェフリー・サックスという有名な経済学者が、アフリカに経済学の研究をしに行ったところ、貧困がそのまま放置されていることに驚いたそうです。例えばマラリアは予防策がちゃんとあり、防虫剤を施した蚊帳を使えば防げるのですが、その蚊帳が買えなくて、蚊に刺されてマラリアで多くの人が亡くなっている。
サックス教授はこれを改善するためにアメリカの政府にかけあいましたが、断られたので自分で実験を始めたのです。それが「ミレニアム・ビレッジ」というイニシアティブです。ジョージ・ソロスやビル・ゲイツ財団、教授が勤めていたコロンビア大学などが5億円、10億円の単位でお金を出して、数万人ぐらいの小規模で始めたそうです。
そうして実際に蚊帳を使えるようになったところ、マラリアは90%削減され、農業においては、器具を使って肥料を施したら、農作物の生産性が約2割から3割上がった。場合によっては5倍ぐらいになったということでした。
この「ミレニアム・ビレッジ」はケニアにもあります。ケニアは2008年の総選挙の後、内紛状態になったのですが、「ミレニアム・ビレッジ」の人たちはもう幸せなので、わざわざ内紛に参加するモチベーションがなく、「ミレニアム・ビレッジ」では平和が保たれたということです。
支援というのは、非常に難しいものです。与える側も受け入れる側も、十分な準備と心構え、そして相手に対する十分な配慮がないと、うまくいきません。支援関係は公平でなければなりません。私たちがあまりオーバーコミットしてはいけないんです。
例えばJENさん(国際協力NGO)は、国際スタッフはコーディネーションとマネジメントに徹し、現地の人が現地の人の支援を行うような構造にすることを心掛けています。それが現地のリーダー育成にもなりますし、地元民の雇用にもつながるのです。
記事をシェアする
ブログに書く
この記事のURLはこちら。
http://www.academyhills.com/note/opinion/10040707GasKatsuma.html
関連リンク
勝間和代はなぜ国際貢献に尽力するのか? インデックス
-
第1章 グローバル・アジェンダは、他人事なんかじゃない
2010年04月07日 (水)
-
第2章 上から目線”は勘違い。国際貢献や寄付は施しではない
2010年04月15日 (木)
-
第3章 国際貢献を長く続けるためには“仕組み”が必要
2010年04月23日 (金)
-
第4章 スーダン支援は、日本の経済成長のカギ
2010年05月06日 (木)
-
第5章 民間支援でできることと課題:「Chabo!」の例
2010年05月14日 (金)
-
第6章 なぜお金持ちは犯罪をしないのか:テロとの戦いへの答え
2010年05月24日 (月)
-
第7章 支援にオーバーコミットしてはいけない
2010年06月01日 (火)
-
第8章 あなたも私も、誰でもできる国際貢献:勝間和代の提案
2010年06月10日 (木)
該当講座
勝間和代 (経済評論家、公認会計士)
勝間 和代(経済評論家、公認会計士)
経済評論家として、またビジネス書のベストセラー著者としてご活躍されている勝間氏。最近の活動として注目されているアフリカやスリランカへの国際支援の取組みについてお伺いします。
勝間氏にとって今一番ホットな国際貢献について直接お話いただく貴重なセミナーとなります。是非この機会をご利用下さい。
グローバル・アジェンダ
政治・経済・国際
注目の記事
-
03月26日 (火) 更新
動的書房 ~生物学者・福岡伸一の書棚
目利きの読み手でもある生物学者の福岡伸一による、六本木ヒルズライブラリーのための選書書棚「動的書房」。2024年3月に新たに21冊が並びまし....
-
03月26日 (火) 更新
本には、人生を変え、時代を創るパワーがある!
2023年4月から2024年2月まで全6回で開催したシリーズ「編集者の視点〜時代を共に創る〜」。モデレーターの干場弓子さんと何度も企画会....
シリーズ編集者の視点〜時代を共に創る〜 <編集後記>
-
03月26日 (火) 更新
【重要】「アカデミーヒルズ」閉館のお知らせ
「アカデミーヒルズ」は、2024年6月30日をもって閉館させていただくこととなりました。これまでのご利用ありがとうございました。閉館までの間....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 05月08日 (水) 19:00~20:30
多様な個性が育むナラティブパワー
「⾃分の物語(ナラティブ)」を語り、社会との関係性や「私たち」の目指す世界につなげていくことで、何か問題があっても、人々の共感を得て社会を変....
-
開催日 : 05月21日 (火) 12:00~12:45 / 05月21日 (火) 19:00~19:45
ゆる~くつながろう!メンバー雑談
テーマなし!年齢制限なし!ライブラリーメンバーなら誰でも参加できる雑談イベントです。肩の力を抜いて楽しく、そしてリラックスした45分を過ごし....
-
開催日 : 04月23日 (火) 19:00~20:30
「欲望」以外が資本主義のエンジンとなり得るのか?
ミクロとマクロの視点、日本と世界の視点を行き来しながら、持続可能な社会のために私たちがいまできることを考えます。スピーカーは、ファッション産....