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【ライブラリーイベント】開催レポート
カーティス教授の政治シリーズ2017 第2回『緊張高まる東アジア情勢』

ライブラリーイベント

日時:2017年6月22日(木)19:15~20:45@スカイスタジオ

カーティス教授の政治シリーズ、今年度2回目となる今回のお話は、北朝鮮のミサイル発射や、中国の対北朝鮮政策、そして韓国の新大統領に就任したばかりの文在寅氏の動向などを踏まえて「緊張高まる東アジア情勢」というテーマでお話しいただきました。この日のセミナーの直前まで韓国に滞在し、文在寅(ムン・ジェイン)政権のキーパーソンとの会談もあったとのことで、最新の韓国の動向をはじめ、北朝鮮や先進国の政治情勢などについてお話しいただきました。

揺れている先進国政治の実態


カーティス教授によると現在の先進各国の政治は、「揺れている」状態だと言います。

たとえば、イギリス。EU離脱を前に交渉を優位に進めることを期待して、基盤を盤石にしたいとの狙いから前倒しして総選挙を行ったところ、目論見が外れ、メイ首相が率いる与党保守党は、過半数を失う結果となりました。今回、辛うじて第一党を維持した保守党に対して、左派の労働党が大躍進したことで、今後、年内に再度総選挙があれば政権がひっくり返り、労働党政権の誕生の可能性もあるのではないかと専門家は見ているそうです。

そしてフランスでは、5月に歴代最年少の39歳でエマニュエル・マクロン氏が大統領に就任しました。その後の6月のフランス総選挙では、フランスのエリート中のエリートであるマクロン大統領率いる新党「共和国前進」が、「改革」を訴えて、60%以上という圧倒的過半数を占めました。
 
また米国では、ご存じの通りトランプ氏が、まるで共和党をハイジャックするような形で大統領に就任し、その後の下院選挙でも民主党が多額な選挙費用を投じてもなお惨敗するなど、今までとは違う、おかしな状況になっていると言います。
 
さらに、アジアを見てみると、韓国では、朴槿恵前大統領が逮捕され、軍人出身の文在寅政権が誕生しましたが、左派的な政策を取ろうとしている中でも、支持率は85%と異常に高い状態となっています。イギリスも右派から左派へ、そして改革の声が高いフランスなど、こうした各国の事情は個別に見ていけば異なるものの、実はそれぞれ共通点がある「同じ現象」だと指摘します。

先進国の政治に共通する怒りと副作用


イギリス、フランス、米国、韓国そして、日本にも共通するものとは一体何でしょうか?「エスタブリッシュメントの政治、社会問題、経済格差への怒りとグローバリゼーションの副作用という点で各国共通しています。グローバル化は経済にとっては良くても大きな負担や被害を受ける人もいます。パワーストラクチャーへの不満、社会情勢への不安感などの表出の仕方は違っても、同じ現象が起きており、これまでの構造が崩れて新しい時代に入ろうとしていると考えています。」とカーティス教授。
 
例えば、今回のイギリスの総選挙では保守党も労働党もBrexitを前提にした政策を打ち出していました。その状況の中で特徴的だったのが、18~24歳の若年層の投票率です。前回の3年前は40%だった投票率が、今回は72%。つまり、若年層の4人に3人が選挙に行くという革命的な事態が起きています。その理由は一体何でしょうか?経済格差に対する不満、良い仕事に就けず将来を不安視する気持が、今回の若者の投票行動につながっているとカーティス教授は分析します。
 
 戦後からリーマンショックまでの間、誰もが「将来は、今より経済成長して国が豊かになる」と思っていましたが、現在そのように考える人は非常に少なくなっています。日本の若者も「将来はより厳しくなる」という見通しを持っていますし、その傾向は韓国でも同様で、最近、No job, No marriage, No childrenという3つのNOを韓国の大学卒のいわゆるエリート層が非常に心配していると言います。現在先進国では、大学への進学が半数を超え、全体的に底上げされたため、「大学を卒業しても良い職に就くことができない」という不満や不安が、高等教育を受けている人に共通している現象だと言います。そして、このような支配層への不満のはけ口として、トランプ大統領が誕生したのではないかとカーティス教授は考えています。


先進国において日本は例外的、しかし・・・


その上で、カーティス教授は日本の状況について、「移民の問題がないために例外的で、他の先進国の悩みとは状況が違うようにみえます。特にテロの恐怖は、日本ではそこまで差し迫ったものではなく、人種や宗教の対立の問題もほとんどありません。しかしながら、確かに日本は世界から見れば例外的ではあるものの、支配層への不満や将来への不安など他の先進国と同じ方向に進むことは間違いない。」と断言します。

東京都議選での小池都知事率いる都民ファーストの会の躍進は、既存のパワーストラクチャーへの反発とみています。安倍政権の加計学園問題に関しても、問題そのものよりも、安倍政権の問題への取り組み姿勢に不満が噴出しているという状況だと推測しており、菅官房長官の今回の加計学園問題に対する対処については大失敗だとカーティス教授は指摘します。
 
さらに、安倍政権の内閣支持率急落は深刻な問題につながる可能性があると見ていて、菅官房長官は、官僚への影響力も強く、安倍首相と菅官房長官が二人でなんでも決めてしまう強すぎる官邸、権限の集中に対する不満が大きくなりつつあるそうです。今、日本にもトランプのような候補者が現れたら、再度、自民党が議席を大きく失う可能性も十分にあるといいます。
 
このように先進民主主義が新しい時代に入り始めている今、高齢化、少子化、経済格差の拡大、グローバリゼーションによる問題解決は、従前の方法ではうまくいかかないという認識を持ち、マスコミや学者、評論家ももっと論じるべきであるとカーティス教授は言います。

朝鮮半島の動向


カーティス教授は、2週間の韓国滞在で、85%に支持される文在寅(ムン・ジェイン)政権への国民の期待の大きさを強く感じたと言います。ただ、期待が大きいだけに失望する危険性も多いにあると言います。現在は、具体的な政策が見えていないこともあり、公共部門での雇用拡大を掲げていますが、人を雇えば雇うほど財政情勢が厳しくなり、簡単にはうまくいかないと見ています。それでも大統領任期の憲法改正によりこの革新系の大統領の政権が向こう8年続く可能性も少なくないようです。
 
続いて韓国と日本の関係について話が移り、文在寅政権の対日政策はなかなか良いとカーティス教授は評価します。むしろ気になるのは、客観性を失っている日本のメディアだと言います。6月の自民党二階俊博幹事長の訪韓は評価ができる点もあったのに、メディアは慰安婦問題に論点を集中しすぎだと指摘します。文新政権のキーパーソンも「日韓の慰安婦問題を解決するのには時間がかかる。解決にフォーカスするのではなく、お互いに気をつけていけば、歴史問題を横に置いて、前向きに関係を構築できる」という意見をもっており、日本のメディアにも同様のスタンスを期待すると語りました。
 
文政権には、日本と上手くやっていこうという想いがあるものの、韓国国民が朴元大統領に対する強い不満をいまだに持ち続けており、朴元大統領の功績は認めたくないという想いから、朴政権時代に安倍首相と結んだ日韓合意も拒否をしているという背景があるそうです。日本の政府やメディアは、そのことを念頭に置き、少女像のニュースに一喜一憂せず、もっと未来志向で日韓関係の話をしたほうが良いと言います。
 
また、文政権の首相は韓国大手紙の東京特派員として駐日経験がある李洛淵(イ・ナギョン)氏で、政治家に転身後も日韓議員連盟の幹事長を長く務めるなど親日派で知られています。韓国はだれでも反日と思わず、未来志向で考えて行けばもっと日韓関係は良くなるとカーティス教授は考えています。

足並みのそろわない対北朝鮮政策


対北朝鮮政策については、韓国の政権内でも、米韓で足並みをそろえて制裁を加えることで対抗していく派と、韓国がイニシアチブをとって交渉しながら対応していく派に大きく2分されていて、なかなか米国ともスタンスが揃わないのだそう。現在の金正恩に、もはや対話は通用しないとの見方が多く、中国の協力も得てもっと制裁を強化しなければ、北朝鮮の核放棄もしくは核開発の凍結はあり得ないと見ています。
 
しかしながら、中国側からみてみると、各国からのさまざまな制裁で北朝鮮が崩壊でもしたら、北朝鮮と国境が接している中国に大量の北朝鮮難民が流れてくることが予想され、さらに、アメリカと同盟国である韓国が北朝鮮を統一と言う事になれば、中国のすぐ隣までアメリカ軍が迫ることになります。これも中国にとっては絶対に避けたい事態なため、北朝鮮に対する制裁の強化については、今後も中国の積極的な協力は得られないだろうとカーティス教授は考えおり、各国の思惑がまちまちで、なかなか難しい問題だといいます。
 
最後に「皆さんに考えていただきたいのは、日本は治安が良く、犯罪がなく社会として機能している素晴らしい点を多々持っているということです。世界のモデルになり得る要素はあるものの、自信のなさから発信しないところが大変残念な点です。世界の先進国の問題は、遅かれ早かれ日本の問題になります。そうならないために、どうするのか?これからの日本にとって重要な政策が何かを議論できないというのは悲劇です。2020年代、東京オリンピック後にどうしたら良いのか?を考える時が来ています。」と第2回を総括してくださいました。


【スピーカー】ジェラルド・カーティス(コロンビア大学政治学名誉教授 ) 


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