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『持続可能な資本主義』~信頼と共感で成り立つ経済のしくみ~

ライブラリーイベント

日時:2017年6月2日(金)19:15~20:45@スカイスタジオ

経済性と社会性を両立させる「いい会社」を訪ねて投資をし、成果を出し続けている鎌倉投信のファンドマネジャーで『持続可能な資本主義』の著者、新井和宏さんをお迎えして、これまでの効率至上主義に代わる新しい資本主義とその可能性についてお話しいただきました。

鎌倉投信は、2008年11月に新井さんと元同僚が4人で起業した金融ベンチャーで、鎌倉の築90年の古民家が本社です。

『日本で一番大切にしたい会社』に投資したい


前職の外資系投資会社でストレス性の難病を患い、退職された新井さんは、ご自身の体のことを考えて仕事を引退されるつもりだったそうです。しかし、法政大学の坂本光司先生の書籍『日本で一番大切にしたい会社』を読んで強く心が動かされ、「こういう会社に投資したい」という想いがこみ上げてきて、元同僚の強い誘いもあり、起業を決意したのだそうです。

とは言え、起業した2008年はリーマンショックの真っただ中。その上、金融庁の認可が下りるまでにも1年半もかかったので、その時間を使ってみんなで古民家再生をしたのが現在の本社。金融のイメージからかけ離れたのんびりな金融ベンチャーで、『いい会社を増やしましょう』といのが会社の理念。

もともと金融は本当に嫌われる仕事だと言います。なぜなら投資した会社の経営がちょっと危なくなると、すぐに資金を引き揚げる。企業が一番金融を必要としているときに梯子を外し、相手に資することをしていないと新井さんは訴えます。これでは投資ではなく、まるで投機だとも。外資系投資会社に勤務している人の多くの収入は高く、1千万、2千万、5千万、1億とどんどん稼げるそうですが、家族がどんどん崩壊して誰も幸せになっていかないのだそう。

お金じゃ解決しないと新井さんはきっぱり言い切ります。競ってフェラーリだカスタマイズドカーだ、と高額な車を買っても、お金やモノを目標にしてもそこに幸せはないと。
新井さんはもっと人々に愛される、そして自分も幸せになれる金融をやりたかったのだそう。

新井さんの書籍『持続可能な資本主義』のサブタイトル「誰かの犠牲で成り立つ経済を終わらせよう」のとおり、持続可能な資本主義にするためには、リターンそのものの定義を変えていかなきゃいけないと言います。

普通の金融商品・投資信託は、お金を預かって、それより沢山のお金で返すのが常識ですが、鎌倉投信は、お金を預かって、幸せをリターンすると定義を変えてお客様に説明をしたのだそう。もし、鎌倉投信がイノベータだと言うのであれば、この幸せをリターンするということにチャレンジしたことではないかと新井さんは言います。確かにそんな事を謳う金融機関はありませんね。

そして『投資は綺麗ごとで成功する』と言う本を出版し、大ブレイク。2015年5月に、NHKのプロフェッショナル 仕事の流儀に出演したところ、この放送後1カ月でこれまでの1年半分くらいのお客さんが一度に来て、危うく鎌倉投信がブラック企業になるところで、社員にもう二度とテレビに出ません、本は書きませんと誓ったのだそう。

お客様の心の形成が大事



お客様の満足度を上げるには、自分が社会の役に立っているという実感をもってもらうことが大事だと言います。そのためには何かができるかを考え、最終的に新井さんたちは、鎌倉投信がお客様と投資先の企業と一緒に、ともに社会を変えていくことに取り組んでいくことにしたそう。
 
例えば、マイバンクという耕作放棄地をレンタルする会社と漢方薬などを扱うツムラが一緒に活動をするという発表があった。ツムラの漢方の原材料は、現在中国に依存していて、それを国内に生産拠点を移して国産にシフトしていかなきゃいけない時期にきており、マイバンクと協力することになった。この2社はどちらも鎌倉投信の投資先で、引き合わせたのは新井さん。このケースのようにお互いに有益な新たなつながりできることが楽しみだと言います。そして、こういうつながりをつくっていけることは投資家冥利につきるとも。

そんな小さいつながりをどんどんつくって行くうちに社会が動いていく。それが出来るのも、お客様が新井さんや新井さんの会社を信じてお金を託しているから。自分が託したお金が社会を良くすることに役立っているということをお客様に実感してもらい、お客様の心が豊かになっていけば、お金を預かった対価として幸せを返せる。もちろん、当然ながらファイナンシャルリターンも出さなくてはいけない。それはプロなので、技術をもって粛々とやっていくわけが、金銭的なリターンに加え、お客様に自分のお金が社会の役に立っていると感じていただく、ある種のエンターテイメントを鎌倉投信は提供していると言います。

見える資産から見えざる資産へ


昔は、見えざる資産を大事にしていたと新井さんは振り返ります。なぜ日本にベンチャー投資が上手く根付かないかというと、見えざる資産の評価ができないから、見えざる資産の評価を銀行員ができなくなったからではないかと言います。今、ベンチャーキャピタルは、企業を上場させることしか頭になく、短期的に物事を見ることしかできなくなってしまったそうです。

見えざる資産は価値が見えるまで時間がかかるし、単純ではありません。人やモノやお金ではなく、例えば経営者や従業員の想いなどの見えざる資産に価値を見出してもらい投資を募るのは、今の日本ではなかなか難しいことです。しかし、これからは見えざる資産を評価していかないといけないと新井さん訴えます。

この方向性は日本にのみ宛てられたことではなく、世界最大クラスの資産運用会社で、新井さんの前職のブラックロックは、日本の400社に短期的な利益だけでなく、ガバナンスをしっかりして、長期的な利益を考えられるように経営していきなさいと言う書簡をだしているそうです。今まで機関投資家は短期志向だと思われてきましたが、見えざる資産が長期的なパフォーマンスに影響を及ぼすということはよく言われていることで、これからは、投資の志向が短期から長期投資へと変化していかなくてはいけないと見通しを語ります。

日本の会社は効率を求めるあまり、色々なものを棄て過ぎてしまった。旧日本的経営には、良いところが沢山あったと口惜しそうに想い返します。しかし、捨ててしまったけれど、かつてあった良いところをこれから取り戻せばいいし、すでにそういう会社が日本の色々なところに存在していると言います。鎌倉投信はそういう会社に投資をすると同時に、世の中にその存在を周知させたいという想いで、これからも活動をしていきたいとお話を締めくくっていただきました。

投資先一社一社への思い入れが強く、投資を通じて鎌倉投信とお客様と投資先企業が一緒に成長しているのだと実感できるお話しでした。


【スピーカー】新井 和宏(鎌倉投信株式会社 取締役 資産運用部長)



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