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【ライブラリーイベント】開催レポート
トランプ現象の深層と日本のゆくえ
~翻訳・編集者と読み解く『最後の資本主義(ロバート・ライシュ著)』~

ライブラリーイベント

日時:2017年3月6日(月)19:15~20:45@スカイスタジオ



昨年12月の日本語版発刊以来、各紙の書評で取り上げられ、多くの読者が話題にしたロバート・ライシュ『最後の資本主義』の翻訳者と編集者に日本社会と比較しながら改めて「最後の資本主義」を読み解きつつ、書籍化されるまでの裏話などもお話いただきました。

『最後の資本主義』—再分配より健全な経済ルール


前半は、24章から構成される『最後の資本主義』より、各章のエッセンスを雨宮さんからご紹介いただきました。

第二次世界大戦からの30年ほどの米国は、経済規模の拡大とともに平均的労働者の所得も倍増しました。きつい労働は報われ、教育は上昇志向の手段であり、功績の大きいものにはそれにふさわしい報奨が与えられ、経済成長はより多くの良い仕事を生み出すという循環がなされていました。

しかし、その頃の大企業のCEOの所得は平均的労働者の20倍程度であったのが、現在は200倍を超え、経済格差が広がりました。半世紀前には上手く分配できていた繁栄が、現代の仕組みでは広く共有できなくなっており、このままでは資本主義システムは壊れてしまうとロイシュは訴えます。

これを是正するには、大企業や金融業界、富裕層がその影響力を使ってここ数十年で作ってきた富める者に都合の良い経済ルールを変えることが重要であり、そのためにもかつて中心的な拮抗勢力であった労働組合や中小企業、小口投資家に代わる連帯して交渉する力を改めて集結させるべきだと言います。

富裕層の税金で裕福でない人に再分配するのではなく、事後に再分配を行わなくとも公平な分配であると大多数が認める経済を生み出す市場のルールを、どのようにして設計するかが問題であり、そのルールを変える力を米国国民は持っていると結んでいます。

書籍化にあたり




後半は、『最後の資本主義』の担当編集者茅根さんも加わり、本書の書籍化までの秘話やこれまでのライシュの書籍についても振り返るトークセッションとなりました。この日の3人の登壇者は、2008年発刊の『暴走する資本主義』からのトリオで、翻訳と編集を一緒に担当されてきただけに、ロバート・ライシュについては、日本でいちばん詳しいと言っても過言ではないかもしれません。

雨宮さんはライシュの書籍を翻訳することについて、とても楽しいと言います。もちろん、翻訳の作業は大変苦しいものではあるけれど、ライシュの本は経済書と言うよりは、人間ドラマを見ているようで、どんどん引き込まれていくと言います。メリハリも効いていて、とても訳し甲斐があるのだそうです。

本書の日本語のタイトルは『最後の資本主義』ですが、書籍の帯には、「米国の良心 絶望と希望を語る「トランプ誕生!」の深層」とキャッチコピーが書かれています。茅根さん曰く、実は書籍の発刊は2016年の12月で、まだトランプ大統領が誕生する前だったそうです。これまでの実績で、アメリカの政治を取り上げた書籍は売れないという経験があったそうですが、今回はトランプ氏が勝利するとは思っていなかったので、このキャッチコピーで大丈夫だろうかとかなり悩んだけれど、結果トランプ氏が勝利して、これまでの実績に反し、とても話題になり、売り上げも大変好調だったそうです。

中間層へのまなざし




これまでライシュは常に中間層にまなざしを寄せていました。
2008年にどうやら資本主義がおかしなことになっていると気がつき、『暴走する資本主義』を発刊します。Basic bargainが成立していない、政治と経済を分離せよ、でないと民主主義が危機に瀕するなどということについて書かれています。

しばらくすると、貧困に追いやられていく中間層に危機感を感じ、『余震』(アフターショック)を発刊しました。このころまでは、今と違い、富の再分配という発想だったようです。

ところがだんだんと中間層が怒っていると訴え、『格差と民主主義』を発刊します。ここでは、怒っているだけじゃ何にも解決にならない、みんなで力を合わせて乗り越えようということを一冊かけて非常に真剣に説いていました。
この本は『みんなのための資本主義』という億万長者と貧困労働者がクラスメートという設定の映画にもなり、NHKでも放映されたそうです。

そして、今回の『最後の資本主義』となり、どうやら原因は再分配ではなく、ゲームのルールが悪いということになりました。悪いのは「あなた」ではない、富める者のためのルールをみんなで力を合わせて変えて行こうというと言う主張につながります。

ライシュ節


日本でライシュの書籍が受けてるのはなぜですかという問いに茅根さんは、日本には、アメリカを見ていると日本の状況も見えてくるという事情がありますが、編集者的には、ライシュの主張はちょっと早すぎると言います。10年、20年経ってやっとライシュの問題意識が現実になることが多いそうです。それゆえに日本でものを書いている人に読者が多いのだそうです。今回の書籍に関しては、事態が急激に展開して書籍に追いついてきたという感じなので、とても良いタイミングでの発刊となったそうです。

そして、トランプ大統領が誕生してからのライシュは、さらにライシュ節を炸裂させているそうです。ライシュのブログで、とても速いペースで更新しているそうですので、是非一度、ブログを訪れてみてください。



【スピーカー】
雨宮 寛(コーポレートシチズンシップ代表取締役)
今井 章子(昭和女子大学ビジネスデザイン学科教授)
茅根 恭子(東洋経済新報社出版局編集第3部 編集者) 


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