六本木ライブラリー
イベント情報

編集力とは、既にあるモノを使って、無いモノを作りだすこと。それは正にイノベーションである!

フランス文学者鹿島茂氏が、竹中平蔵理事長と“編集力”について対談

ライフスタイルサロン

ゲスト:
鹿島 茂(明治大学教授 / フランス文学者)
モデレーター:
安藤 礼二(評論家/多摩美術大学准教授)
パネリスト:
竹中 平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶応義塾大学教授)

日時:2009年6月1日(月)

鹿島茂氏
竹中平蔵氏(左)鹿島茂氏(中央)安藤礼二氏(左)
ゲストの鹿島茂氏は、19世紀のフランス文学が専門。そして、19世紀に形を整えた社会の仕組み(例えばデパート、鉄道、新聞、メディア、株式会社等)が、現代社会を深いところから規定しているのではないか、という意見をお持ちです。
またその時代のフランスは、バルザック、デュマ、ユーゴーなどの文豪が活躍した時代でもあり、近代社会の成立と文学の関係を、意外な視点から紐解いた鹿島氏の講演に、竹中理事長の第一声は、「目から鱗の話にびっくりした。山崎正和氏の繊細さとち密さ、三浦雅士氏の大胆さと柔軟さの両方を感じさせてくれる。」と、驚きの感想でした。

さて、“目から鱗”の鹿島氏のご講演のポイントは・・・

竹中平蔵氏
竹中平蔵氏 鹿島茂氏 安藤礼二氏
【世紀の15年間ずれ込み説】
1914年の第一次世界大戦、1815年のナポレオンの没落、1715年のルイ14世の崩御、1610年アンリー4世の暗殺、1515年のフランソワ1世の即位など、新しい世紀に入って、大きな動きが起きるまで、10年~15年のずれ込みがある。2010年~2015年に世界が大きく変わる変動が起きるのではないか。

【人口動態学】
社会が大きく変わる要因として、人口と家族構成の変化が大きく影響している。エマニュエル・トッドによる「人口動態学」のアプローチ。18世紀のフランスでは、幼児の生存率が高くなった結果、人口が増加し、農家の次男、三男が職を求めて都市に流れてきた。そして知的キャリアにアクセスした彼らは、新たな欲望を抱いたが、貴族社会ではポストが不足してした。フランス革命は、その不満が原因ではないか。

【近代社会と文学の関係】
膨らんだ欲望を満たす道として文学が選ばれた。前述の文豪(バルザック、デュマ、ユーゴー)も欲望の後押しがあり、半端ではない量の作品を書いている。そして文学者及び文学作品は、社会の最も雄弁な表現形態の1つであり、文学を読むとその時代の社会がわかる。視点を変えて読むと、バルザック全集(全22巻)には商売のノウハウが転がっている。

【ビジネスモデル】
エミール・ジラルダンは、自己表現として文学ではなく、編集者の道を選んだ。そして新聞に広告のビジネスモデルも導入した。広告のビジネスモデルは、インターネットの現代に脈々と引継がれている。

【サン・シモン主義】
サン・シモン主義は、空想社会主義と誤解されているが、外部注入方の高度資本主義と捉えた方が良い。ヒト・モノ・カネが動くことによってしか富は生まれないとし、動くような仕組みを考えた。まずは銀行。一人一人が持っている金額は少ないが、銀行に集まれば、産業の育成や、株式会社への出資などに投資され、大きく動く原動力になる。

文学の話だと思っていた参加者も、竹中理事長と同様に、近代社会の成り立ちというスケールの大きな話、そしてその切り口の斬新さに驚いていました。

そして、鼎談の最後に、テーマである編集力について、鹿島氏は、「究極の編集力とは、既にあるモノを使って、無いモノを作り出すこと。既に存在するモノを組み合わせて、アイディアを使って無いモノを生み出す、それが編集の技術。編集には大天才は必要ない。成されたモノを組み合わせれば、成されていないモノが創れる。」と定義付けた。
竹中理事長も、呼応して「ジョゼフ・シュムペーターのイノベーションである。革新こそが世の中を動かす原動力であり、革新は新結合、新しい結びつきである。編集こそがイノベーションであり、イノベーションこそが編集と言えるのではないか。」と、鼎談を締めくくりました。

また、シリーズを通してモデレーターを務めていただいている安藤礼二氏は、2008年11月に出版された『光の曼荼羅』(講談社)で第3回大江健三郎賞、第20回伊藤整文学賞をW受賞されました。サロン終了後に、竹中理事長より安藤礼二氏へお祝いの花束が贈呈されました。そして会場からも盛大な拍手が贈られていました。

関連書籍

文学全集を立ちあげる丸谷 才一 鹿島 茂 三浦 雅士
文藝春秋
光の曼荼羅 日本近代文学論安藤礼二
講談社