メンバーズトーク

Vol.001 林信行 インタビュー / 3月6日(木)

「六本木ライブラリーで、最先端のヒトやモノから刺激を受けています」

林 信行 Nobuyuki Hayashi

プロフィール
日本を代表する著名ITジャーナリストであり、コンサルタント。
『スティーブ・ジョブズ 偉大なるクリエイティブ・ディレクターの軌跡』や『iPhoneショック』等の近著は大きな話題になっています。
アップル社やグーグル社の企業動向の分析をはじめ、ブロードバンド化やブログ、SNSといった新トレンドにも早くから目をつけ多くの記事を手掛け、最近ではグローバル化への対応を迫られる日本企業に、アップルやグーグル、シリコンバレーの起業家の考え方やノウハウを伝えることをミッションのひとつに。

「ライブラリーメンバーには、エッジの立った著名人も多いですね」

小林麻実(以下 小林):今日はITジャーナリストで、最近『アップルとグーグル(インプレスR&D社)』や『アップルの法則 驚きのアイデアと戦略の秘密(青春出版社)』を執筆された林信行さんにお話を伺います。

さて、林さんが六本木ライブラリーにいらっしゃると、偶然、お知り合いの方に会われることも多いと伺いました。ここに来ると、いつも誰かに会うという感じですか? 

林信行(以下 林):頻度は高いですね。8割とは言いませんが、6〜7割は誰かに会います。
それも必ず同じ人というのではなく、毎回違う人です。「君もメンバーだったんだ」と驚かされることも多いですね。
こういった場所を求めている人は、自分のまわりには結構いると思いますよ。打ち合わせも、喫茶店では落ち着けないし、無線LANの環境や電源も取れたほうがゆっくりと話ができる。そのような点に真剣にこだわって探し続けると、結局、ここしかない。最後まで妥協せずに、探しつづけた人が行き着いた果てで、心のどこかで「ああ、君もここを発見したんだ」といいながら再会の言葉を交わしている。そんなイメージです。
だから、ここのメンバーの人は共通の価値観みたいなものがありますね。

林:そもそもこのライブラリーは、ある価値観を持つ方々のための「場」ということを考えて始めました。ただそれがどういう価値観かを伝えることは難しくて。「組織を離れた個人、個としての志向がある人」と表現してきたのですが、まだ、イメージしにくいですよね。
だから逆にユーザーとしての林さんに教えて頂きたいのが、「ここで出会うお知り合いの方ってどんな人でしょうか。皆さんに、共通点はありますか」、ということなのですが、いかがでしょう。

林:そうですね、まず多いのはフリーランスの人や自分の会社を持っている人ですね。ニラジ・ジャンジという、日本で起業して成功しているインド人の友人も、49階でバッタリ再開してから親しくなった1人です。アーティストであると同時に、起業家という友人にも、ここでバッタリ再開しました。何か一癖ある会社をいくつか経営する資産家ながら、ライターとしても活躍している友人にもよくあいます。いつも、同じあたりのテーブルを狙っていることが多いようなので。
大企業に勤めている知人も何人か発見しましたが、会社の中でもちょっと違った存在ということが多いですね。もう会社でも、それなりの役職についている有名人であるにも関わらず、ある資格を獲得しようとこっそりここへきて勉強を始めた人もいます。
ネクタイとスーツが当たり前の大企業に、革ジャンとジーンズ姿でバイクで通っていた人もいます。
ソニーに勤めている親友も最近、メンバーになったのだけれど、彼は一か所どこかの部署に属すタイプではなく、品川の本社と青山や乃木坂の関連会社のオフィスを行ったり来たりしている人。どちらのオフィスにいるても、人につかまって自分の仕事の時間が確保できないので、ちょっとしたメールのチェックや書類作りをこの六本木ライブラリーでやって、ミーティングのときだけ会社へ行くようにしていると言っています。
マイクロソフトの鈴木協一郎さん(執行役 日本・アジア担当 最高情報責任者)も親しくしてもらっているのですが、何かを集中してしあげたいときや会社にい、静かに考えごとをしたいときはよくここへ来ているようです。
彼らはいずれも、一応、会社には属してはいるけれど、その中でもかなりキャラクターが立っていて、独立心も強い人達、「個がある」感じの人たちですね。

林:「個がある」ということは、大企業に属しているか一人でやっているかに関係ないんですね。
六本木ライブラリーには実は、今、名前をあげて頂いたような錚々たる有名人のメンバーも多いのですが、そういう方であってもなくても、ここに集まる人は皆、「個がある」ということで共通している。六本木ライブラリーは、そんなエッジの立った方々が集まる場になってきていますね。
林さんも含めてそのような先端的な方がここを選ぶ理由としては、先ほどの電源以外にも何かありますか?

「ライブラリーのセレンディピティは、とても大切なものになっています」

林: ランダムな人との出会い、セレンディピティも重要ですよね。会社の中にいると同じ会社の同じ様な事を考えているような人としか会わないので、どうしても視界が狭くなっちゃう。
僕は会社に属さずフリーランスでずっとやっていますが、パソコン雑誌の業界にいると、パソコン雑誌を読んでいる人しか頭に浮かばない。そういうところで発想してしまうので、新しい市場開拓や新しい続者層にアピールしようと思っても、なかなか自由な発想が出てこない。
それがここに来ると、例えば本棚に並んだ最近の本の背を眺めているだけで、自分が興味のない分野も含めて最近、こんなことが話題になっているんだ、とわかって世界が広がっていく。

それと僕が一番好きなのは、海外の雑誌が置いておりますよね。これが結構重要です。僕には東京在住の外国人の友人も多いのですが、ここに来ればこんなのが読めるのかということで、連れてくると、皆、喜んでいますよ。

林:海外雑誌は日本では読めるところは少ないですよね。自分で購入しようとしても高いですし。

林:日本の媒体だけでは偏りがあるじゃないですか。海外の雑誌を読む事により、違った見せ方、違った視点、違ったニューズを読めるので、その点でも刺激を受けることができます。

そういえば、先ほど同じ価値観を共有している人がメンバーになっていると言いましたが、それぞれの人の分野は違うんですよね。
ニラジという人は企業向けの製品を作っている。マイクロソフト役員の鈴木さんは、現在は情報システム部の最高責任者ですが、以前はマイクロソフトの中でベンチャーを育成するために色々やっていた方です。ベンチャー系に詳しい人、アーティストの人など、自分とは違ったことをやっている人達に会うことは、雑誌の表紙を見ることと似た効果があります。自分の枠が拡がる感じがする。

林:それに気づかれるということは、林さんご自身が、ご自分の世界を広げようと努力なさっているのでしょうね。自分をバージョンアップする、常に止まらないでいつも新しい自分を作っていくというようなことを心がけてらっしゃるのでしょうか。

林:心がけているというところもありますし、好きなところを広げているとも言えます。
違った分野の人たちの話を聞くと、この世界も面白そうだと、自分の興味も広がります。それにつれて、自分の視界も広がっていく。
面白いのがどの分野の人達と会っても、皆同じような問題を抱えていることがあって、例えばアーティストの人達も、がんばって日本で活躍しているアーティストの人も全然日本では評価されなくて、海外で作品を出すと評価される、そして海外で評価されて初めて日本で評価される。
(ライブラリーメンバーのメディアアーティスト)遠藤拓己さんたちも、日本で展覧会を開催する前に、パリのマイヨー宮やプラハで展示して、海外で有名な遠藤さんになって、日本で注目されたりとか。
ベンチャーも、特にIT系のベンチャーは、皆日本でがんばっていてもダメで、海外でちょっと名を上げようという機運が高まっています。違う分野でも似たようなことがちょっとずつある。みんな、日本では最初に認められるのが大変というところがある。それを一つのところで考えて堂々巡りしているよりも、むしろ他の異分野の人達と話をしてみると、「あなた方もそういったことで悩んでいるのか」と、解決の糸口を見つけた人をみつけてヒントになることが多い。

「トップクラスの仕事だからこそ、成長させるためには、異分野からの刺激が必要」

林:違う視点で見ることが出来るわけですね。ここで出会った方から刺激を受けられて、お仕事の新しい方向性が見えてくるということもあるのでしょうか。

林:直接なんかやろうと言って仕事になることもたまにあります。前にここであった友人に、新しくメディアを立ち上げた友人を紹介されて、そこでしばらく連載をしたことがあります。

それから、常に受け続ける「ゆるい影響」というものもありますね。私はアートも好きで森美術館もメンバーなのですが、IT系の仕事が忙しくなってくると、その世界だけにこもりがちになってしまう。そんな時に、ライブラリーで、久々に再会したアーティストの友人に、「今から美術展のレセプションに行くから一緒に行かないか」と誘われて一緒に行ってみたら、それがいい刺激になって、次の仕事のインスピレーションになったり、なんていうこともありました。

このインタビューの直前にも、アーティストの遠藤拓己さんとドミニク・チェンさんの2人と話しをしていたんですが、たまたま、ドミニクさんのパソコンにアメリカの「メイク」という雑誌のシールが貼ってあったのがきっかけで、その話しになり、最近、アメリカで人気が上昇中の科学雑誌を教えてもらいました。
これは彼の見立てなら間違いないだろうと信頼できるドミニクさんが発する情報だからこそ価値がある情報なわけであって、こういう情報はインターネットで検索しようとしてもなかなかわからない。
普段、仕事であっている人とだと打ち合わせが終わったらそこで話しが終わってしまうからこういう話しに発展しない。毎日、会社で顔を合わせている相手だと、何だかもう新しい発見を期待していないところがあるけれど、ここであう人は、皆、偶然性にまかせてたまに遭遇しているだけなので、気兼ねなく楽しい話しができて、そこから新しい発見につながることも多いんですよね。
私の方も、私の方でドミニクさんが科学雑誌が好きだということがわかったので、今度、何か科学雑誌系の話題があれば彼にも話そうという気になりますし、そこからまた新しいアクションが広がっていくかもしれない。

そういったちょっとずつ、自分の興味があることでも、広く興味を持つことが出来る。常に全方向にアンテナを張ることは無理ですが、ライブラリーでいろんなジャンルの人と交流すると、いろんな情報を貰えて、刺激になるんです。

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