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■顧客のために進化するアスクルビジネス 〜インターネットビジネスの実態3 大西 基文(おおにしもとふみ) アスクル株式会社執行役員 e-ソリューション&オークション 統括チーフセキュリティオフィサー(当時) |
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オフィス用品のデリバリーサービス業界最大手のアスクル株式会社。“明日来る”に由来する社名の通り、発注の翌日には品物が届くというスピーディーなサービスを展開し、毎年、売上げ倍増の成長を続けている。2000年11月21日には株式の店頭公開も果たした。成長を支えるビジネスモデルと企業理念とは?IT技術はどのように活用されているのか。これからのビジネス戦略は何か。同社執行役員の大西氏の講義から、e-ビジネスに限らないすべてのビジネスの本質が見えてきた。
■真空市場に切り込む アスクルの基本的なサービスは、オフィスサプライをFAXやインターネットで24時間受注し、注文の翌日に届けるというものだ。さらに、東京23区、阪神地区、仙台市内、福岡市内は午前11時までに注文すれば、当日に届く。利用登録料やカタログ代は一切無料。配送料も2,500円以上の注文なら無料である。単に早く届けるだけでなく、全商品10%〜83%オフの低価格で提供しているので、中小事業所やSOHOのみならず、大企業にもコスト的な魅力が感じてもらえるようになっている。 日本の事業所数は620万あるといわれているが、そのうち従業員数30人以上の事業所は全体のわずか5%しかない。従来の外商などのサービスはほんの一握りの大企業相手にしか提供されていない。すなわち、30人未満の事業所ではオフィス用品を近所の店から自分たちで買ってくるというのが普通で、ここに文具の巨大な真空マーケットがある。アスクルの市場ターゲットはこのような中小規模事業所であり、現在の顧客累計登録数は120万を突破している。 アスクルはもともと、文具メーカー・プラスの一事業部門としてスタートした。そのため当初は取扱い商品のほとんどがプラス製品だ。だが、マーケットのニーズに応えて1996年からはメーカーを問わず、お客様の欲しいものは何でも売るという体制を取っている。 97年5月にはアスクル株式会社として独立。現在は流通業から情報サービス産業へ、オフィスのためのワン・ストップ・ショッピングからワン・ストップ・ソリューション・プロバイダーへの変革を目標に掲げ、“困った時は何でもアスクルに相談すれば解決できる”という存在を目指している。 ■エージェント制モデル 90年から92年にかけて、プラスは業界1位のコクヨに勝つために、社内にブルースカイ委員会という組織を設置し、“お客様は誰か”という根本的な議論を行った。文具業界は体質の古い業界で、当時は卸業者や小売店など、メーカーの製品を売ってくれる人がお客様であるという意識があった。しかし、この委員会で初めて“お客様は製品を使ってくれるエンドユーザーである”ということに皆が気がついたのである。 エンドユーザーに製品を売るにはエンドユーザーとダイレクトに結ばれることが一番の近道ではあるが、社会的に最適な仕組みは何かということで考慮したのが、顧客開拓と回収の効率化を図るためのエージェント制だ。 顧客はFAXやインターネットを使ってダイレクトにアスクルに注文を出し、アスクルは顧客にダイレクトにカタログや商品の発送を行う。エージェントは顧客とアスクルの間で新規顧客の開拓と代金回収の機能を受け持つというのがそのビジネスモデルである。 当初はエージェントのほぼ100%が地元の文具店だった。地元文具店とwin-winの関係ができたことで、様々な軋轢を和らげる結果にもなった。 ■ロスを省く社会最適モデル 社会的に最適な仕組みとして、アスクルはメーカーからお客様までの流通段階のロスを省いて、メーカーとお客様をつなぐ社会的合理システムも追求している。すなわち、情報のロス、物流のロス、在庫のロス、営業のロス、機能重複のロスを徹底的に排除するのが、エージェント制に並ぶアスクル・モデルである。 このモデルを支えるのが、物流センターのデジタルピッキングシステムに連動したFAX-OCR、ウェブによる受注やお客様のためのコールセンターの充実、そのバックエンドにある顧客対話支援システムやオペレーター・マネジメントシステム、さらにデータベースやデータマイニングシステム、キャンペーンマネジメントシステムなどの最新のテクノロジーである。 また、1日5,000件以上も寄せられるお客様の声をメーカーや商社、協力会社にフィードバックして、一緒にマーケティングを行ったり、商品開発を行うというマーケティングパートナーシップの仕組みもつくり上げている。 ■結果としてのインターネット アスクルがe-ビジネスに参入した理由は、e-ビジネスを始めようという気持ちが先にあったのではなく、お客様満足追求の効果的かつ効率的な仕組みがe-ビジネスだったからだ。 自社アンケートによれば、95年にはインターネットでの注文を希望する顧客は全体のわずか2%だったが、96年には44%にまで増加。97年についにインターネットによる受注をスタートし、2000年5月現在のインターネット登録数は約13万事業所にのぼっている。 インターネット受注の特徴は、他の受注に比べてオーダー単価が高いことである。インターネット受注では最大5%の還元を行っているが、それでもインターネット受注の方が会社にとってメリットのある仕組みである。 インターネットの流通経路としてのメリットは、双方向性、便利さと時間の削減、ボーダレスと24時間営業、販売コストの削減の4点である。すなわち、インターネットでは情報が双方向で即座に何度でもやりとりができ、豊富な品揃えと比較検討が簡単で、購入も短時間で容易にできる。 また、世界中を相手に24時間営業ができ、人件費やミスからくる機会喪失ロスも低減される。 ■e-コマースの先駆者 アスクルはBtoBの企業間ECを日本で最初に本格的に実現した企業の一つで、IBMのコマースサーバー「Net.Commerce」の日本導入第1号企業である。 Javaなどの最新技術によるインターネットサーバー連携のクライアントソフト「アスクル・マイカタログ」を開発し、電子モール上で顧客が個別に、自身の購買履歴をカスタマイズして見ることができる仕組みを提供している。いつも買っている商品を登録しておけば、ボタン一つでオーダーできる「クイックオーダー」や、定期的に購入している商品の「定期配送サービス」のほか、iモードからの簡単発注システムもある。 また、事業所の購買プロセスに沿ったサポートサービスとして、顧客の購入履歴をいつでも確認・ダウンロードできる仕組みや、月額予算を設定しておけば、それに沿って販売額確認が行われる予算管理サポートもある。 また、Net Perceptions社のリコメンデーションエンジンを導入し、顧客の購買傾向を分析して、リコメンドするシステムも持っている。 1999年12月にはIBMとの共同開発により「ASKUL B2B MART」サービスがスタート。その中で、ビジネスマシンの新製品を登録事業所が希望購入金額で入札、購入できるシステム「e-AUCTION」、お買得なビジネスマシンをWeb上で即座に購入できる「e-SELECTION」、マシン購入やシステム構築などの相談に出品メーカーの専門知識をもった担当者が答え、バーチャルな商談を行える「e-SOLUTION」の3つのサービスを行っている。 また、ソフトバンク社との合弁によるSOHO・中小企業向けe-ビジネス支援サービス会社「スマートファーム株式会社」を4月に設立し、7月に運営を開始したほか、この8月には日経BP社などとの提携によるオンライン書籍販売サービス「Askul Book Cafe」をスタートさせる。 ■e-ビジネスでも顧客第一 インターネットは革命である。まずそこに参加することが重要だが、それには信頼できるパートナーを選ぶことが必要である。 パートナーを選ぶ観点はいろいろあるが、システム的な観点では、新しいサービスを自分たちと一緒に同じペースでつくってもらえるかがポイントになる。ほとんどのシステムプロバイダーは組織が大きすぎて方向転換が遅い。しかし、e-ビジネスでは事前にすべての行程を洗い出して見積もることは難しく、2人3脚でやっていけることが重要な要素になる。 また、e-ビジネスでは環境の変化が早く、未来永劫一人勝ちというのはありえない。だから、面白そうな分野ではどんどんパートナーシップを組んで、ビジネスを拡げていく必要がある。自分たちが足りない部分の能力を持ち、補ってくれる、あるいは進出しようと思っている部分で一緒に組めば相乗効果を生んでくれるかどうかという点がパートナーシップを組むポイントになる。 e-ビジネスは、既存のビジネスモデルの単なる置き換えではうまくいかない。既存のビジネスがすでに付加価値を十分に生み出すモデルとして構築されていて、それにインターネットがフレーバーをつけていくという発想が大切である。そして、リアルとバーチャルが最適にバランスされた時にe-ビジネスはパワーを持つ。 最後に忘れてはならないのは、e-ビジネスといえども、技術ありきではなく、あくまでもお客様が第一であるということだ。アスクルの理念は“お客様のために進化する”ことだが、顧客のためにその瞬間は最高のサービスを提供したと思っていても、あっという間に顧客は貪欲になり、世の中はどんどん変化していく。顧客に対する最大の貢献は、顧客にとって何が便利かということを考え、外的環境に合わせて進化していくことである。そして、ビジネスに勝ち残れる唯一の条件は、顧客の信頼を得ることなのだ。 e-ビジネス研究コース
テーマ/「インターネットビジネスの実態3 |
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